テラーノベル
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もし二人が生きていればの世界線です
― IF:それでも、生きてしまった ―
目が覚めた時、真っ白な天井が見えた。
薬の苦味がまだ喉の奥に残っている。
舌が痺れていて、体は重くて、でも、意識だけがやけに冴えていた。
――ここは、病院か。
腕には点滴。
心電図の音が、生きていることを告げてくる。
……うるせぇな、って思った。
だって、俺は死んだはずだったから。
「……ないこ」
隣から声がした。
目をやると、ベッドに腰掛けていたのは――りうら。
包帯だらけで、顔色も悪い。
でも、生きてた。
「……りうら……」
「ああ、生きてんだってさ。俺たち。
間一髪で見つかったらしい。
……ふざけてるよな。あんだけ覚悟したのに」
「……助かりたくなかったな」
ぽろっとこぼれたその一言に、
りうらが、かすかに笑った。
「お前、ほんとバカだな。
でも……俺も同じ気持ちだったよ」
どこか、冷めてた。
生き返ったのに、何ひとつ“嬉しい”と思えなかった。
罪は山ほどある。
これから俺たちは、裁かれる。
檻の中に入れられて、隔離されて、分かたれて、
たぶん、二度と会えないようにされる。
「なぁ、りうら。もしさ、全部終わったら――」
「うん」
「また会いに来てくれる?」
「……俺もそれ、言おうとしてた」
顔を見合わせて、小さく笑った。
虚無と焦土みたいなこの現実の中で、
唯一あったかい、ほんの一粒の火種。
「また、一緒に地獄、作ろうな」
「……ああ。
今度こそ、完璧に、最後まで、ふたりで」
ベッドの上で、手を伸ばして、指先だけ触れる。
それだけで、まだ俺たちは“ふたり”だった。
◆
――数か月後。
俺は精神科施設にいた。
りうらとは別の施設。名前も顔も出せない。
でも、毎週、必ず“手紙”が届く。
内容は、くだらない。
今日の天気、病院食、看護師の顔の好み。
けどその末尾に、必ず一文だけ添えられていた。
「本当の地獄、またふたりで作ろうな。
今度こそ、誰にも邪魔させないように」
りうら
笑えた。泣けた。
どうしようもなく、嬉しかった。
俺も、返事を書く。
薄汚れた便箋に、狂った文字で、こう綴る。
「地獄の扉、また開けよう。
待ってる。ずっと」
◆
“その日”は、必ず来る。
ふたりとも、大人になって、外に出られるようになったら。
社会が忘れた頃、ふたりはまた出会うだろう。
そして――
今度こそ、
世界の全部を巻き込んで、
「本当の地獄を、見せてあげる♡」
――終わらない、ふたりのIF
コメント
6件
狂ってるねえ。こういうの本当好き🩷❤️初コメ失礼しました。
いやぁ......狂ってんねぇ......
狂っててくるくるるん♪((????