テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
皆が寝静まったであろう丑三つ時、ふと、何かの気配を感じたエリスは暗闇の中で薄ら瞳を開ける。
すると、部屋の中に人が侵入して来ているような気配を感じた彼女は勢い良く身体を起こした。
「だ、誰!?」
恐怖から大声を上げると、すぐ側に居るはずの気配が動きを止める。
月が雲に翳っていたせいで部屋の中が暗かったものの、その翳りが徐々に晴れて薄らと月の光が窓から差し込んで来た次の瞬間、何かが弧を描くようにエリスの視界に映りこんで来ると同時に、
「きゃあ!?」
鋭い痛みが身体中を駆け巡った。
「な、んなの……?」
そして、完全に月の光が部屋の中を照らしたことで、全身黒づくめの怪しい男が剣を手にして自分のすぐ目の前に立っていることと今の痛みが右腕に剣の刃先が掠って切られたことだと知った。
「……だれ、なの……?」
「クソ! 薬で眠らせてるからその間に殺れって言ってたくせに、これじゃあ話と違うじゃねぇか! まあいい、悪く思うなよ? 恨むなら自分の運の悪さを恨みな、姫さんよ」
「……い、いや……」
黒づくめの男は一瞬焦りを見せたものの、すぐに態度を変えると刃先をエリスに向けながら一歩ずつ近づいて行く。
腕の痛みはあるものの、それよりも今この場をどう切り抜ければいいのか、傷口から血が流れ出ている右腕を押さえながらエリスは必死に考える。
(……私、殺されるの? 嫌よ……そんなの……っ)
二人の距離が縮まり男が剣を振り上げた、その時、側の棚に飾ってあった花瓶を手に取るとエリスは男目掛けて勢い良く投げ付けた。
「うわっ!?」
すると運良く花瓶が男の腕に当たり、その弾みで持っていた剣が床に落ちる。
「このアマ! 何しやがる!」
男が痛がりながら剣を拾いあげようとする隙をついてエリスは部屋から逃げ出した。
「はぁ……、はぁ……っ」
暫く男が追ってくる気配を感じていたものの、相手はこの辺りの地理をよく知らないのかエリスを見失ってしまう。
そんなエリスは見つからないよう上手く身を隠しながら森の中へと入り込んで行く。
気付けば陽は昇り、空は雲ひとつ無い程に澄んでいた。
エリスが逃げ込んだ森はセネルと友好な関係にあるサラビア国へと続く道でもあり、そこから船でどこか遠くへ行こうと考えたけれど、
(……そういえば私、お金なんて持ってない……しかも、こんな格好じゃ、人前にも出られないじゃない……)
森の中腹まで差し掛かり、男が追ってくる気配も無い事からようやく少し心の余裕を保てるようになったエリスは改めて自分が置かれている状況を知ると絶望的な気持ちになった。
寝起きを襲われて怪我を負いはしたものの、何とか逃げ出すことに成功したエリスは何も持っては来れず、服はレースとフリルの付いた白いネグリジェに近いワンピース姿で、その服も腕の傷口から流れ出た血で汚れているし、足元は靴すら履いていない状態。
とてもじゃないけれど、このような格好で人前に出ることなど出来るわけが無かった。
(でも、そんなことを言ってる場合じゃない……このまま森の中に居ても、助からない……)
どうすれば良いのかエリスが途方に暮れていると、草が生い茂る場所が風も無いのにガサガサと音を立てて動き出す。
「な、何?」
嫌な予感と共に音のしたほうへ顔を向けると凶暴そうな野犬が姿を現した。
「……や、やだ……誰か、助けて……」
こんな所で助けを求めても誰も現れないと分かっていても恐怖から思わずそう口にしてしまうエリス。
瞳に涙を溜めて野犬から目を離さぬよう、ゆっくりゆっくりと後退る。
(戻ったら男が仲間を連れて来るかもしれない……でも、前には進めない……)
ふと横に視線を移すと、獣道ではあるもののどこかへ続いていそうな小道を見つけたエリス。
(とにかく、逃げなきゃ……)
足元に落ちていた枝を拾い上げた彼女は野犬の少し横を目掛けて思い切り投げると反射的に野犬が飛んでいく枝に視線を向けたその瞬間をついて、エリスは一目散に小道へと走り出した。
#恋愛
桜咲かな
687
#ハッピーエンド
にゃみ3
30
にゃみ3
526
#政略結婚
常陸之介寛浩
330
コメント
1件
はわわわわっ!?!?第4話読んだよ〜!😭💦 エリスが寝込みを襲われるシーンからもうドキドキが止まらなかった…!花瓶投げて逃げる判断力、さすがヒロインだよ…!でもネグリジェで裸足、お金もないって絶望的すぎて胸が苦しくなった😢最後の野犬も怖すぎる…!次どうなっちゃうの!?早く続きが知りたいよ〜!!✨