哲汰side
放課後の教室。
荷物をまとめていると、スマホが震えた。
画面に映った名前は、直弥の兄・拓弥くん。嫌な予感がして、すぐに出た。
哲「もしもし、拓弥くん……?」
拓『哲汰……なおの容態が急変した。すぐに病院に来て』
その瞬間、頭の中が真っ白になった。
言葉も出ないまま、
教科書も何もかも置きっぱなしで、
学校を飛び出していた。
病院に着くと、廊下が異様に静かに感じた。
病室のドアを開ける。
そこは、いつものように白く、
そしてやけに広く見えた。
ベッドのそばに立つ拓弥くんが、
俺に振り向いた。
拓「……なお、もう……」
その言葉が胸に突き刺さる。息が止まる。
拓弥くんが、直弥にそっと声をかける。
拓「なお、哲汰来たよ」
ゆっくりと、直弥が俺の方を見た。
酸素マスクの奥の瞳が、かすかに揺れる。
直「……哲汰……」
その声を聞いた瞬間、
膝が崩れそうになった。
でも、必死にこらえて、
ベッドのそばにしゃがみこみ、
直弥の手を握った。
哲「直弥……」
握り返された手は、
信じられないくらい弱々しかった。
それでも、その温もりが確かに
そこにあった。
哲「直弥、俺と出会ってくれてありがとう」
言葉が勝手にこぼれた。
哲「生まれ変わっても……また直弥を見つけ出すから…絶対また会いに行くから…」
胸の奥から溢れてくるものを抑えられず、
涙が頬を伝う。
哲「直弥……大好きだよ」
そのとき、直弥が小さく、
ほんの少しだけ微笑んだ。
その微笑みは、
「俺も大好きだよ」
と言っているように見えた。
次の瞬間、ピピピッ……という音が
病室に響き、その後に長い、
途切れない音が鳴り響いた。
直弥の手の力が、ゆっくりと抜けていく。
俺はその手を離さなかった。
涙で滲んだ視界の中で、
直弥の顔がどんどん穏やかになっていく。
さようならは言わない。
俺たちは、また会うから。
哲「愛してるよ……直弥」
そう呟いた声は、
泣き笑いのように震えていた。
コメント
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切なすぎるт т これって続きありますか??😭