テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ち ょ こ 。
22,688
かんな
690
鷹槻れん

2,537
#シークレットベビー
夏目萌*優しい彼~コミカライズ
1,640
「でも水族館で先輩を見ると、人魚に見えるせいか神々しくてきれいで、心臓が何度が止まっちゃったよ」
「そりゃあ学校一美人って言われてるもんね。去年、お見合いした相手が最後まで粘ったらしいよ」
「知ってる。家柄もよかったし性格も孔一さんに比べたら最高だし、どうしてお見合いを断ったのか不思議だったのよねえ」
もちろん、お見合いの断る理由は聞けない。
それに亜里沙先輩とお見合いして駄目だった人は、今年すでに結婚していると噂だ。
「お見合いを断った理由は、当時お付き合いしている人がいたって噂だよ」
「……一河?」
「聞いたら、教えてくれた。でも結局、破局してるから今回のお見合いには関係ないよって」
あれぐらい綺麗な人なら、恋人ぐらいいるのかもしれない。
16歳になったら、国が決めたお見合いはあるものの恋人がいる人はその人とのお見合い申請もできるとか。
まあ要は、さっさと結婚すればいいんだろうけど。
人口が3000万人をきったせいで、専門的な技術を自分たちで勉強しないといけないことも増えていて、国民一人一人の負担が大きくなってるってテレビで言ってたしね。
どこが負担なのかは、既に負担だらけの中で生まれ育ってきた私らには分からない。
「恋人に1人や二人、いいんじゃないの。私のお見合い相手は、子どもができるなら浮気もどうぞってよ」
「孔一くんが!?」
「そう。私のお腹から生まれるなら、自分の子として育てるしって。だから、誰と浮気しようが恋愛しようが構わないけど、お見合いは進めようねって。おじいさまに呼ばれた宴会場で宣言されちゃった」
「……ゆるせない。いやだ。絶対に嫌だ。そんな人なら結婚しないでよ!」
水咲を何だと思ってるの。パソコンに見えてるって時点で失礼なのに。
なに? なにがしたいの?
ちょっとイケメンで家柄もよくて成績もよくて紳士で、人柄もよさそうなのに。
「女の子ひとり、自分で幸せにできない男の遺伝子なんて止めてしまえるのはいいんじゃない?」
「ひえ。あの一河が! あの温厚な一河がそんな言葉をっ」
「いや、俺だって水咲ちゃんは友達でしょ。普通に怒るよ」
「これが、一河がモテる所以だよね」
「そうそう。ああ、私、孔一くんじゃなくて一河がお見合い相手だったら好きになれたのに」
水咲がきゅんきゅんした胸を押さえ、その後悲し気に笑う。
「最初からお見合いに夢なんて見てないから、私だけ恋愛結婚憧憬症候群にならず、相手はこんな政略結婚の中、夢なんて見ちゃって……お見合いなんて廃止すればいいのに」
「水咲……っ」
水咲の祖父が首相の時に決まった法令で、まだ100年も経っていない。
人口が再び一億以上に達すれば、この法令もなくなるのかもしれない。
政治の勉強は、漫画を読むのに忙しい私には難しい。
反対派だの野党だの、何もしないくせに人口激減について野次を飛ばすだけの大人だの。
その中での水咲と孔一くんの政略結婚は意味のあるものらしい。
水咲の気持ち以上に意味のあるものなんて、私はないと思うけど。
「水咲が犠牲になるぐらいなら、こんなお見合いの法律、潰れてしまえばいいのよ」
「おお、流伽ちゃん、良いこと言うじゃん。そうだよ、そうだよ」
一河も楽しそうに拳を振り回した。
「やっぱこの法律、ふざけすぎだろ」
おっとりしてて人の悪口なんて言わない一河から漏れた本音に、私も水咲も笑った。
六人兄弟で、この法律のおかげで裕福なのに、それでも不満を隠さず言ってくれる一河はすごい。
「この中で、法律の中、一番自由にのびのび好きな人にプロポーズできてお赤飯を仲人さんに用意させちゃうぐらい平和な人は、一慶さんだけだね」
「水咲、酷い。それに一慶さんは、ほんと素でそれなの。悪気もないし、素が熱血なの」
「フォローになってないよ」
二人は、私の話で癒されているらしい。
私だって一応、色々と悩んでいるのに。
「そういえば、特進科の森苺先輩って人と今週末に一慶さんの試合を見に行くんだけど、二人も来てくれない?」
「えええ、試合って殴り合ったりパイプ椅子で頭割ったりするんでしょ? 痛いの無理っ」
「先入観がすごいよ。最近のプロレスはパフォーマンスが面白かったりするんだよ。でも一慶さんの試合なら人気なんじゃないの?」
一河は少しだけ興味を持ってくれたらしい。
漫画とお弁当しか入っていなかったカバンから、私はチケットを取り出した。
「ふふふふふ。関係者席、四人分確保してもらっちゃった。仲人さんが入り口で待機してるんだって」
「俺、行きたいなー」
「私はパス。下調べしなくていきなり知らないスポーツを見るのは失礼だわ」
「えー……チケット余るなあ。亜里沙先輩、来るかな」
「聞いてみる」
水咲は頑固なので行きたくないと言えば、頑なに意見は変えないだろう。
一河は来てくれるとは思うけど、亜里沙先輩はどうだろう。
デートスポットとしては血で血を洗うようなプロレスは合わないかもしれない。
「だ、大丈夫かな。亜里沙先輩だし、ふわふわした可愛いスポットの方がいいかな」
「大丈夫だよ。意外とホラー映画とかスプラッタ映画も好きって言ってたし」
呑気に携帯でメールをしたためているけど、亜里沙先輩が断れない人だったら大ピンチじゃない。
なんてお赤飯を食べていた私に、もう一つ絶望的な連絡がきた。
『ごめーん。私、一番いい一番前の席だから。関係者席って叫べないからいいや』
森苺先輩にも断られてしまった。
「えー。じゃあ三人でいいかな。一枚返そう」
「亜里沙先輩、その日、ヴァイオリンの稽古だって」
「じゃあ一河と二人か。ストッパーが一河だけかあ」
「俺じゃあ不満なのか」
ぷんぷん怒る可愛い一河に謝りつつ、「昼休み終わるわよ」と水咲が言うのでお赤飯を掻き込んだ。
それ以外は、一慶さんの手作りで甘い卵焼きもチキン南蛮も細い玉ねぎが甘いミートスパゲッティも天才的なおいしさ。
一慶さんは良いお嫁さんになりそうだった。
お弁当を食べ終えてクラスに戻ると、婚約指輪をはめていたり結婚指輪をしていたり、それが当たり前の今の世界に少しだけ違和感を感じた。
少女漫画みたいに、このクラスの異性が全て恋愛対象ではない。
このクラスの異性が全て結婚対象。
恋愛と結婚、同じ漢字二文字なのにこれほどときめき要素がなくなってしまうのはいかがなものなのだろうか。
妊娠しても産休はもちろん、休学しなくても家庭教師がつけば留年もしなくてすむ。
この世界のシステムは、恋愛をするよりやはり人口増加促進システムだ。
少女漫画とは全くの異世界なんだ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!