テラーノベル
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彼らは二人とも愛しい俺の友達だった。
そんな彼らが友好関係を持つのを俺は祝福しなければならないんだろう。
そうすることがきっとヒーローとして正しいはずなのだ。
それでも、そうしたくないと思う心が純粋な答えの邪魔をする。
彼ら2人が大切な友人であるからこそ、2人の特別な関係を認めたくないと思った。
彼らの蜜月を見るたびに虫唾が走る。
そんな自分に嫌気が差した。
1923年12月13日。
その日は俺の家でワシントン会議が行われていた。
俺の発言はきっといつものように唐突だっただろう。
そして、俺に反対するのはいつもイギリスだった。
「お前!!自分が何言ってんのか分かってんのか?」
「日英同盟を解消なんて!そもそもお前の勝手な都合だろ?なんで俺らがそれに巻き込まれなきゃいけねぇんだよ!」
「さっき君も四カ国条約に賛成してくれたじゃないか」
「それとこれとは話が違うだろ!あれは俺と髭とお前日本で条約を結ぶ話であって、日英同盟を解消するなんて話じゃなかっただろ?」
「別に日本と君の関係がなくなるわけじゃないだろ?」
「それに、さっきから反対しているのは君だけだ、日本は反対していないんじゃないのかい?」
きっと、彼にとってはすごく答えづらい質問だっただろう。旧知の中の俺にはわかる、彼がこういう『誰かとの関係を明確にする言葉』に苦手意識を持つことが。
きっと、彼にとって悩ましいものだろう。イギリスと離れるか、国利を取るか。
だが、彼は俺の予想に反してすぐに返答を決めた。
「私は、アメリカさんと同じ意見です」
「は?」
イギリスは、想定外の答えにしばらく何も言わなかった。口からこぼれたようなその声は、彼の感情を物語るには不足はないほど十分だっただろう。
裏切られたような顔、彼のその表情は独立戦争の時に俺に見せた顔に似ているように見えて、何かが違っていた。
その表情に気づかなかったことにして俺は口を開いた。
「ほら!彼もそう言っていることだしいいだろう?」
「さぁ2人ともここに署名をしてくれ」
俺は嬉しかった。
彼ら2人が特別でなくなったことが嬉しくてたまらなかった。
これできっと、2人は俺に構ってくれる。
まるで子供の独占欲のような感情を拗らせていることに3人だけが気づいていない。
きっと、フランスもオランダも、中国もみんな気が付いているだろう。
正式な失効日など上機嫌な俺には別にどうでも良かった。
それならばと、半年も猶予をあげることにした。
ああ、なんて醜いんだろうか。時折そう思う。
俺は、少しのいたずら心で彼らの仲を邪魔したいだけなのだ。
1945年8月15日。
それは終戦直後だった。
日本がポツダム宣言を受け入れて降伏した。俺はイギリスよりも早く、彼の元へ向かった。なにより、彼にトドメを刺したのも俺だった。
「やぁ!日本!」
「調子はどうだい?」
「アメリカさん。お久しぶりです」
「そうですね。6日前に比べればだいぶいいですよ」
923
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#アーサー・カークランド
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「そうかい!それは良かった」
「でも、残念なことに、完治にはきっと50年はかかるよ」
「そうですか」
「50年もあれば現は大きく変わります」
「ついていけるでしょうかね」
「きっと君なら大丈夫さ!」
「なんと言ってもこの俺がついているんだからね!」
「もうすぐここにGHQの最高司令官がつくよ」
「ああ、あなた方の連合国軍最高司令官総司令部ですか」
「そうですね」
「それは良かったです」
彼の表情は読み取れない。俯く顔には明確なる影があり、その影から感情を読み取ることは俺にはできなかった。
「ところで、イギリスさんはどうしていますか?」
彼はまだイギリスのことを気にかけているのか。そう思うとなんだか気に食わない。
いつもいつも、2人で秘密ばかり作って。俺を蔑ろにする。
「近いうちに会えると思うぞ!」
「病身の身に申し訳ないけれど、君には裁判に出てもらいたいからね」
「裁判ですか」
「きっと私は裁かれるのでしょうね」
「閻魔大王に舌を抜かれてもおかしくないことしましたから」
「閻魔、確か君のところの・・・」
「死後の裁判官の1人です」
「前にイギリスさんに話したら興味深く聞いていただいたのですが、みんながみんな興味のあるものではないですよね」
「私としたことが失念していました」
「いや構わないさ」
彼がまた、イギリスと言った。
それが俺は嫌だった。
1945年8月17日。
なぜかが理解できなかった。イギリスがまだ日本への想いを捨てきれていないのは一目瞭然だったのに、彼は日本に一度も会いに行かない。
何を意固地になっているのか理解ができない。
俺に声をかける彼の顔は決して明るくはない。
「アメリカお前、また日本のところに行って来たのか?」
「戦後復興について話し合いがあったからね」
「そうか。どうだった?あいつの様子は」
「気になるのなら自分で見にいけばいいじゃないか」
「今はあいつはお前と仲良くしたいんだろ?」
「なら無理に俺が関わりに行く必要はない」
「別に俺たちの関係が変わったわけじゃない」
「俺はあいつの意思を尊重したいんだよ」
本当は、分かっているはずなのにそう主張し続ける彼は何を思っているのだろうか。
俺にはさっぱり理解ができない。
ただ、日本と一緒にいる時の明るい顔を久しく見ていないことばかりが気にかかっていた。
「何を言ってるんだい?君たちはあのころとは大きく変わってるじゃないか」
「もう二人の蜜月は終わったんだ。もう戻れないんだよ。本当は君も気づいてるんだろ?」
博識な彼のことだ、きっとこんなこと俺に言われなくても分かってるんだろう。
その証拠に、彼はこんなことを言われても逆上して殴りかかってくることはない。
「ああ、そうだな」
「なんでもいいけど。面倒なことになる前に決しておくことを推奨するよ」
「その想いが今後の妨げになったら困るんだ」
彼がその後何を思ったのか俺にはわからない。
1946年1月19日。
極東国際軍事裁判所条例を制定した。
裁く対象は日本の国民たち。
イギリスは最後までいい顔をしなかった。
「即決処刑をするべきだ」
「公開法廷なんか開いて戦犯たちに宣伝させてどうするんだよ」
「また軍国主義の国が出てきたらどうしてくれんだ?」
「そもそも罪状の『平和に対する罪』と『人道に対する罪』ってなんだよ」
「伝統的な法解釈から考えて好ましいとは思えないな。そもそもどうやって区別するんだ?」
最後までそう言い続けた彼は、何を目指していたのだろうか。
その理由は本当に言葉の通りなのか、それとも彼への愛がそれを反対したのだろうか。
俺にはわからない。最近、日本のことも、イギリスのことも。わからないことばかりだ。
身近にいた彼らがだんだんと遠ざかっていく気がする。
なぜだろうか。
俺は、きっといつからかあの日の日本と同じようようになっていた。
「この裁判は歴史上最悪の偽善でした」「日本が置かれたような状況では、日本がしたようにアメリカも戦争をしていたでしょう」
「法手続きの基盤になるような法律はどこにもない。戦時中に捕虜や非戦闘員に対する虐待を禁止する人道的な法はある」「しかし、公僕といして個人が国家のためにする仕事について国際的な犯罪はない。国家自身はその政策に責任がある。戦争の勝ち負けが国家の裁判である。日本の場合、敗戦の結果として加えられた災害を通じてその裁判はなされた」「戦勝国が敗戦国を制裁する権利がないと言うわけではないが、そういう制裁は戦争行為の一部としてなされるべきであり、正義と関係がない。またそう言う制裁をイカサマは法手続きで装飾するべきではない」
「原料の供給を断ち切られたら一千万から一千二百万の失業者が発生するであろうことを彼らは恐れていました。したがって戦争にむかった目的は、主として治安のためだったのです」
誰かがそういった。君たちは味方だと思っていたよ。
2026年8月17日。
日本は驚くべき成長を遂げた。
そして今、世界会議出席国として俺やイギリスと同じこの場にいる。
日本はいつも会議室に一番につく。話をしたい時はそれに倣って早くくるのが恒例になっていた。
「Hello日本!これ返すんだぞ!」
俺はカバンから一冊の本を取り出し日本に手渡した。
「アメリカさん。こんにちは。ああ、先日お貸しした漫画ですね。どうでしたか?」
「ああ!とっても面白かったんだぞ!」
「矢張り、アメリカさんは気にいると思っていたんです」
微笑む彼の顔にはもうあの時の暗さはない。
それはイギリスも同じだった。でも、時折イギリスの瞳に日本の絹のように美しい黒髪に黒曜石のように美しい漆黒の瞳が過ぎる。
日本の瞳にイギリスの陽の光をいっぱいに吸い込んだ美しい黄金の髪とペリドットのような美くしい翠の瞳が過ぎる。
まだ2人ともお互いを忘れることができていない。
3人で話していても俺と視線が交わることは少ない。
会議が始まった。
司会はいつも通り俺が務める。
初めの挨拶も、俺が前に立っても静かにならないのも。いつもと全く同じだ。
「よし。これから世界会議を始めるぞ!」
「世界中の問題を皆で解決していこうじゃないか!」
「難しい問題も俺たちが力を合わせればきっといい方向に行く!」
「君達の率直な意見をぜひここで聞かせてくれ!」
「じゃあ、まず俺から行くぞ!今話題の地球温暖化だけどでっかいヒーロ一を皆で作って、地球をガードして貰えばOKだと思うんだよ!」
「ちなみに反対意見は認めないぞ!」
「私はアメリカさんと同じでいいです」
「またか日本!自分の意見を言え!」
「俺は反対だ!そんな現実味のない案賛成できるか!」
「じゃあ、お兄さんはアメリカとイギリスに反対ってことで」
話はいつまで経っても決まらない。
もう、折角HEROである俺が名案を出したって言うのに、みんな俺を否定するのが好きなんだから。
いつだって、こんなんばっかりで会議に終わりは来ない。いい加減にして欲しいものだ。
2人の視界には、ずっとお互いばかりが映っていることに気がついたのは俺だけだったのだろうか。
会議終わり、廊下のソファーにはフランスとイギリスが座っていた。
「イギリス、お前まだ拗ねてんの?」
「なんのことだよクソ髭」
「日本のことだよ」
「ちょうど今日でしょ?お前が日本のことビンタしたの」
「一言余計なんだよ」
「行って来なよ」
「日本はお前のこと迎えに来てくれたんだろ?」
フランスはどこでその話を聞いたんだろうか。色恋の情報にはつくづく鋭いなと感心する。
フランスがニマニマとした顔でイギリスを見送った。
イギリスが戻って来ないと確信したタイミングで、俺は偶然を装ってフランスの前へと歩いて行った。
「イギリスは急いでたみたいだけどどこへ行ったんだい?」
「ん〜日本のところ。お前も見てたから知ってたろ?」
「なんだ。気がついてたのかい」
「そりゃね。お兄さんを侮ってもらっちゃぁこまるよ〜」
「それにしてもなんで急に日本のとこへ?俺も日本に用があったんだけど」
「やめとけば?」
「兄と友人の恋愛に固執するのもさ。子供じみた独占欲なんて身を滅ぼすだけだとお兄さんは思うけど?」
「なんの話だい?」
「分かってる癖に」
そうだ。分かっている。俺が嫌だったのは2人がお互いを特別とすることだった。俺と話さなくなるのは、俺を見てくれなくなるのが嫌だった。
きっと、あの時のイギリスも同じ気持ちだったんだろう。
やっと理解できた気がする。
「大丈夫。きっとあの2人はお前のことをほっといたりなんてできないって」
フランスのその一言が俺の心を酷く安心させた。
やっと俺は、2人を祝福できると思えた。2人は俺の愛しい友人だから。
菊の英語の花言葉「You’re a wonderful friend」意味は「あなたは素晴らしい友達」です。
「この裁判は歴史上最悪の偽善でした」「日本が置かれたような状況では、日本がしたようにアメリカも戦争をしていたでしょう」byチャールズ・ウィロビー
「法手続きの基盤になるような法律はどこにもない。戦時中に捕虜や非戦闘員に対する虐待を禁止する人道的な法はある」「しかし、公僕といして個人が国家のためにする仕事について国際的な犯罪はない。国家自身はその政策に責任がある。戦争の勝ち負けが国家の裁判である。日本の場合、敗戦の結果として加えられた災害を通じてその裁判はなされた」「戦勝国が敗戦国を制裁する権利がないと言うわけではないが、そういう制裁は戦争行為の一部としてなされるべきであり、正義と関係がない。またそう言う制裁をイカサマは法手続きで装飾するべきではない」byジョージ・ケナン
「原料の供給を断ち切られたら一千万から一千二百万の失業者が発生するであろうことを彼らは恐れていました。したがって戦争にむかった目的は、主として治安のためだったのです」byダグラス・マッカーサー
いずれもアメリカ政府・GHQ要人の発言だそうです。
コメント
5件
史実ネタ大好きです〜!! なんか泣けてきた😭
わあああ第4話読み終えたよ〜!!😭💕✨ アメリカの「2人が特別でなくなったのが嬉しい」ってとこ、子供みたいな独占欲むき出しで切なすぎる……!でも最後にフランスに「大丈夫」って言われて祝福できるようになったの、成長って感じでじーんときた🥺💞 史実の重みを借りた三角関係の描写、エモさと苦しさが混ざっててめっちゃ刺さった……菊の花言葉も効いてるよ!続きすごく気になる…!!🌸