この作品はいかがでしたか?
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昼食に”お願い”をし、放課後。私のロッカーの前に私とチャールズは待ち合わせた。
私はチャールズに一学年の教科書を受け取る。
「ありがとうございます」
「まあ、これは俺が使っていたものだ」
「あ! それだとーー」
「名前は書いてない。それと、マリアンヌの言う通りにしてある」
チャールズから受け取ったものを私はロッカーに入れる。
ロッカーの中に図書館で入れた教科書はなく、ゴミが入っていたが、それらはもう取り除いている。
ロッカーを新しくしても、何らかの手でリリアンはこじ開けてくる。
「明日、上手く行くといいね」
チャールズは私に激励の言葉を送ると、この場から立ち去った。
私は手を振り、チャールズの背を見送る。
チャールズの姿が見えなくなったところで、私は自身の両腕をじっとみつめる。何も付いていない。
「……あいつ、帰ったか?」
「わっ! グレン、あなたそこにいたの!?」
「俺、あいつ苦手なんだよな。あいつも俺のこと嫌いだろうし……」
グレンはリチャードが立ち去るタイミングを待っていたらしい。
教室の中から突然現れた。すっと現れるから驚いてしまった。
リチャードは好意的な相手には優しく接し、敵意のある相手には冷たく接する。
グレンもリリアンのように罵倒されたのだろうか。
「チャールズにはちゃんと”お願い”できたんだろうな?」
「できたと……、思うんだけど」
私は手をグレンに見せる。
「ああ。あいつはお前の言う通りにしたようだな」
「えっ、グレンにはなにか見えているの!?」
「ああ、お前には見えないんだったな」
私はグレンに小さな香水瓶を貰った。その中には透明な液体が入っている。
「寮に帰ったら、それ服に吹きかけてみな」
「今じゃだめなの?」
「……じゃあ、俺はこれで」
グレンはすぐに去っていった。
私は試しにシュッと服に吹きかける。
「んっ!」
グレンが逃げるように帰っていった理由が分かった。
そして、これを使ってリリアンたちの悪事を暴けとも。
「……終わったら覚えてなさいよ」
私はグレンに恨み節を呟く。
だけど、すべての準備は終わった。
あとはこれらを使ってリリアンたちを効果的に懲らしめるシナリオを考えなきゃ。
☆
翌日、遅めに教室へ来た私はロッカーを開けた。
案の定、教科書は無くなっている。
(これでいい)
ロッカーに何も入っていないことを確認し、私は教室に入った。
自分の席に着くと、後ろでクスクスとリリアンたちが笑っている。
授業が始まったら、私に何が起こるか分かっているようだ。やはり、ロッカーのものが無くなるのはリリアンたちが関係している。
始業の鐘が鳴った。
少し経って、先生が教室に入ってきた。
「……マリアンヌ、教科書が無いな」
「ごめんなさい」
私のことは”教科書を持って来ない不良生徒”として扱われている。
先生がすぐに私のことを指摘するのが何よりの証拠だ。
こんなことを続けていれば素行が悪い生徒になり、進級しづらくなってしまう。
授業中に教科書が無くとも、当日の朝に記憶しておけば問題ないのに。一か月前までそれでこと足りていたのに。
でも、不満は今日で解決する。
「また、ロッカーから物が無くなったのか?」
「……はい」
「また、そんな言い訳をーー」
「言い訳ではありません。事実ですわ」
「事実だと? 何か言いたいことがあるようだな」
「はい。授業の前ですが、お時間よろしいでしょうか」
「分かった。手短に済ませろよ」
私は教壇の前に立つ。
クラスメイトの視線が私に集まる。
ここから、反撃するんだ。
私はスウと深く息を吸ったあと、クラスメイトに話し始めた。
「ロッカーの中身が無くなるのは、この中の誰かが勝手に取り出しているからです」
「まあ! このクラスに泥棒がいるというの?」
私がこの中に犯人がいると告げると、リリアンが突っかかってきた。
リリアンには絶対的な自信がある。
私がムキになって、無謀な策に出ていると思っているのだろうか。
だけど、今回は手がかりがある。
「ええ。そうとしか考えらえませんわ」
私はグレンから貰った小瓶を取り出した。
「皆さま、お手を出してくださいまし」
私は皆の腕に小瓶に入っている液体を吹きかけた。
本当はリリアンと取り巻きの二人だけでいいのだが、彼女たちだけに吹きかけると企みがあると分かられてしまう。だから、まずはクラスメイトの一人に吹きかける。反応なし。
他の人にも吹きかけてゆき、残り三人。リリアンたちだけになった。
「ただの水でしょ? 誰かを犯人にすれば済むと思った?」
「そう言ってられるのも今のうちですわよ」
私は三人に香水を吹きかけた。
「なっ!?」
リリアンの取り巻きの女生徒の一人の両腕が桃色になっている。
「ロッカーの中のものを盗んでいたのは……、あなたですね」
「こ、これがなんだっていうの!?」
「これはーー」
反撃のときだ。
私はグレンから教えられた”準備”の工程を彼女に語り始めた。
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