こんにちは!るなです!
お待たせ致しましたっ。続きです!
꒰ 注意 ꒱
BL(太中)
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「…失せろ変食野郎」
「私今お腹空いてるのだよね」
太宰は中也の言葉を無視して、黒い影にぐるぐる巻きにされ地面に転がっている中也の元に近付いた。しゃがみ込み、顔を中也の首筋に近付ける。太宰の吐息がかかる。ゾワリと肌が震える感覚がした。
「っ、止めろ!!」
中也は影に捕まっているとは思えない程俊敏な動きで体を反らせた。その勢いのまま足で地面を蹴り立ち上がる。
「ちぇ、逃げるの」
太宰はしゃがみ込んだまま、面倒くさそうな瞳を中也に向けた。
「ったりめーだ!誰が好き好んで手前のご飯になるか!」
「…ふーん」
威勢よく言い返し、中也は足を器用に使って太宰から離れようとする。黒い影は太陽の光に弱い。態々太宰に解いてもらわなくとも朝になれば自然と解ける。それ迄太宰に捕まりさえしなければ、その後の悪夢は避けられる。
緩慢な動きで立ち上がる太宰を後ろ目で見ながら、中也は太宰から距離を取った。拘束されているせいで跳ねてしか移動出来ないが、ほぼほぼ普段通りの速さで走れていると思う。太宰の姿が先程の半分程の大きさになった時、小さな声を捉えた。
「つまらないな」
太宰が小さくそう呟いた瞬間、空気がザワリと揺れた。中也の行く先にある影が伸び中也の体を勢い良く拘束する。胴体に巻き付き、その勢いのまま引っ張られ背中を木に強く打ち付ける。
「ッは、!」
衝撃が直に体に流れ、力無く中也の手が落ちた。視界の隅で太宰が近づいて来る音がする。太宰は中也の前で足を止め、木に寄りかかる中也を見下ろした。
「余計な体力使わせないでよね。日光浴に失敗したせいで血が足りないのだよ」
太宰は何処か不機嫌さをにじませた声を発した。その不機嫌の理由が自殺に失敗した事ならば飛んだとばっちりだ。最悪のタイミングでへまをやらかした自分に腹が立つ。
「は、ッ!死にたがりが良く言うぜ…さっさとくたばりやがれ」
先程、木に身体を強く打ち付けたせいでもう指一本動かせない。中也は太宰から逃げる事の出来ない諦めが半分、本気で日々思っている事が半分の言葉を投げ返した。自分が言った言葉に対して鼓動が不規則に動いたのには気が付かなかった振りをする。
「そうしたいのは山々なのだけれど、何故か死ねないのだよねぇ。自分の生命力の高さが嫌になるよ。それに……」
─────「中也、私が死んだら嫌でしょ?」
「は、?」
中也は続けられた言葉に目を丸くした。思わず太宰の方に顔を上げる。
太宰が死んだら嫌?
そんな訳が無い。太宰は気に食わなくて大嫌いな奴に違いはないはずだ。そんな奴が死んだって嫌だという気持ちが湧き上がってくる筈もないし、そうであってはいけない。
だが中也の心はその思いとは反対にこの言葉に揺さぶられた。
─────太宰が死ぬ。
その言葉を今まで深く考えたことは無かった。目の前にいる此奴は死にたがりで、死ぬために生きているような奴だったから。
「死にたい」
この言葉は挨拶のような気軽さで用いられる言葉だったから。
それに加えて太宰は毎日の習慣のように自殺を試みていたけれど、謎の生命力の高さで結局生きていたから。
だから、此奴の傍に本当の死を感じた事は無かった。
だが、今の、月光に照らされた太宰の顔は青白く、確実に死に近付いていると感じさせる。
想像、してしまった。今まで考えないようにしていた事を。此奴がもし俺の前から居なくなってしまったらということを。
死というものがもたらす喪失感を。俺の心に空くだろう穴を。
中也の目から1粒の雫が零れた。
「ね、嫌でしょ?」
太宰の手が優しく自分の頬に触れる。
もう全てを受け入れるしか選択は残っていなかった。
──────────ツプ……
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終了です。楽しんで貰えていたら幸いです!
見て下さってありがとうございました!
では、ばいるな!
コメント
2件
アハ⤴︎笑笑素晴らしいね、うん、もう凄すぎて、、、(語彙力喪失)