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『は?』
第一声はそれだった。
意味が解らずに口をあんぐりと開けたために出た音のような声。
そんな阿呆みたいに口を開けたままの北見の様子に、呆れたといった風で魁星は話を続けた。
「処女が面倒や〜言われたから先に遊征で捨てさせぇ……って、さっきから言うとるやろがい!!」
『うん。……いや、やっぱり意味がわかんねぇよ!なんで!?』
「はぁー……。やからな?アイツに処女が面倒やって言うから…」
『そこは分かったって!そうじゃなくてさ……な、なんで、俺な訳…??』
友達、仲間。そんな間柄の二人に性行為という言葉は全くもって似合わない。
仮にそんなことがあったとしても真っ先に自分が選ばれるだなんて北見は思ってもいなかった。
「ん?別にこれっつう理由はないんやけど〜……。」
魁星はきょとっと目を丸くしたあと、小首を傾げた。 あんな発言の後だからか、北見には魁星が何故か可愛らしく見えてしまっていた。
ドキドキと無駄に高鳴る、緊張した気持ちの北見。反対にリラックスした、いつもの状態の魁星。
「なんかお前って当て馬キャラっぽいし、後腐れなさそうやん?」
『えっ、そ…!?そんな理由!!?』
「おん。」
思っていた数倍、あんまりな理由に北見は大げさに肩を落とした。
そんな北見の肩をポンポンと叩き、魁星は「今晩よろしゅうな?」とだけ言ってその場を後にした。
薄暗い橙色の照明と、畳敷きの小上がりに敷かれた大きめの布団。
その上に二人で寝転び、まず互いの身体を触り合った。
服を徐々に脱がせ、肌を露わにする。すると、魁星の蛇の全容が見えてしまった。
目もろくに合わせられない 北見の緊張した指先が、魁星の肌を撫でるたびに薄く声がが漏れる。
それから視線が合わさり、うっとりとするようなキスをした。
触れて、撫でて、またキスをして。 まるで普通の恋人のような行為だった。
『なぁ、魁。……そろそろいいか?』
「…えぇで。ゆうせ、なか、いれて」
焦がれるような目をした魁星に迎い入れられるままに北見は目の間の肢体に男を教えた。
事後は呆気なく、起きたら魁星はいなかった。
その後、顔を会わせてもいつも通りで北見は少し悶々とした気持ちを抱えていた。
しかし、後腐れないからと選んでくれた魁星を裏切れないと、この気持ちは隠そうと決めた。
そんな矢先。
[は?いやいやいやいや、北見遊征??なんつった?]
『え、いや、だから、魁が付き合ってる奴にしょ、しょ、…初めては面倒だって言われて俺が……』
[魁星にそんな相手いるなんて聞いたことねぇし。アイツ、お前と一晩いるにはどうたら一人でぶつぶつ言ってたかんな?ありえないって。]
『ちょっと待ってくれよ、ネス。つまり?』
[……きたみん、春じゃん]
『ま、マジかよ…』