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「ねぇ錬、このお菓子あげる。あーんして?」「え、佐久間くんいいの? あーん」
楽屋の日常風景。目黒蓮は、差し出されたグミを素直に口に運ぶ。
その光景を、他のメンバーたちが鋭い視線で射抜いていることにも気づかずに。
「……佐久間、お前ばっかりずるい。目黒、次はこっちのコーヒー飲んで?」
渡辺が強引に自分のカップを押し付ければ、向井が「めめは俺と写真撮るんや!」と反対側から抱きつく。
当の目黒は、「みんな優しいなぁ」と、モデルのような端正な顔をふにゃりと緩めて笑うだけ。
「めめ、本当にわかってないよね……」
深澤の溜息混じりの呟きも、目黒の耳には届かない。
彼にとって、メンバーからの過剰なスキンシップや甘い言葉は、すべて「グループの仲の良さ」の延長線上にあるものだった。
しかし、その「平和な鈍感さ」が崩れる事件が起きる。
雑誌の撮影で、一人だけ残って着替えをしていた目黒。
そこに、忘れ物を取りに戻ってきた阿部と岩照(ひかる)が鉢合わせた。
「目黒。……今日の撮影、他のメンバーと近すぎ。あんな顔、俺以外に見せないでよ」
岩本が、目黒の腰を抱き寄せて低く囁く。その腕の力強さは、明らかに「仲間」に向けたものではなかった。
「え、照くん……? 何、怒って……」
「怒ってるよ。……目黒が、誰にでも隙を見せるから」
岩本の顔が近づき、目黒が反射的に目を閉じたその時。
「——そこまでにしなよ、照」
冷ややかな声とともに、岩本の腕が引き剥がされた。
そこにいたのは、いつもの穏やかな微笑みを消し、射抜くような冷徹な瞳をした阿部だった。
「阿部ちゃん……?」
「めめは、自分がどれだけ周りを狂わせてるか、本当にわかってないんだね」
阿部は目黒の手首を強く掴み、岩本を牽制するように自分の背後に隠した。
「照も、他のやつらも。みんなめめを『手に入れたい』と思って動いてる。……仲良しごっこのつもりなのは、君だけだよ」
目黒の頭の中で、これまでのメンバーたちの不可解な言動がパズルのように組み合わさっていく。
あの執拗なボディタッチも、独占欲の滲む視線も。すべては「愛」だったのだと。
「……嘘、でしょ」
「嘘じゃないよ。……でも、もう限界かな。めめが気づかないふりをして逃げるなら、力ずくでわからせるしかないと思ってたところ」
阿部の指が、目黒の頬を熱く撫でる。
岩本が舌打ちをして部屋を出ていく。その去り際の視線には、明らかな敗北感と、それでも諦めきれない執着が混じっていた。
結局、最後に目黒の手を引いて部屋を連れ出したのは、一番「計算高い」男だった。
ホテルの一室。
逃げ場のない空間で、阿部は目黒をベッドに押し倒し、眼鏡を外して耳元で囁いた。
「……やっと、俺だけを見てくれたね。他のメンバーの顔、全部忘れさせてあげるから」
鈍感だった目黒が、初めて「愛される恐怖と悦び」を知った夜。
他のメンバーたちが悔しさに歯噛みする中、阿部だけが、狡猾に、そして情熱的に、彼を独り占めすることに成功したのだった。
コメント
2件
遅くなりましたm(_ _)m めっちゃ最高です!次回も楽しみにしてます( *´꒳`* )