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「……もう、ほんとやだ……からかわれるの、慣れてないってば……」
入野はタオルで顔を隠したまま、小さな声で呟いた。さっきまでの賑やかだった楽屋に、少しだけ静かな空気が流れる。
「自由、ごめんね?」
宮野が、思いのほか優しい声でそう言った。
「え……?」
「つい、可愛くてさ。無理させたかもって、ちょっと思ってた。」
タオルの隙間からそっと顔を覗かせると、宮野は今までと違ってどこか申し訳なさそうな顔で微笑んでいた。
「……そんな顔すんなよ。余計に恥ずかしくなるし……」
ぽつりと返すと、宮野がくすっと笑う。
「そういうとこも、可愛いんだけどね。」
「……もう、やだってば」
「はいはい、やだやだ。でもさ、俺は——自由が笑ってると安心するんだよ?」
意外な言葉に、入野の目が大きくなる。横から、神谷もゆっくりと口を開いた。
「からかったのは悪かった。けどな、お前が頑張ってるの、ずっと見てたから。今日のライブも、本当に良かったよ。」
その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなっていく。普段、なかなかストレートに褒めたりしない神谷の言葉だったからこそ、入野の心にすっと入ってきた。
「……ありがと」
「よしよし、えらかったな」
神谷がそっと頭を撫でる。
「……なにそれ、子ども扱い……」
「いいじゃん。自由は甘やかされるの、似合ってるよ」
宮野が微笑みながら、横にちょこんと座る。
「そうそう、頑張ったご褒美。たまには、甘えてもいいんだよ?」
「……じゃあ、ちょっとだけ……」
小さく呟いて、入野は宮野の肩にもたれる。そのまま静かに目を閉じた。神谷も隣で軽く笑いながら、自分のジャケットを入野の肩に掛ける。
ほんの数分前まで、あんなに騒がしかったのが嘘のように、静かで穏やかな時間が流れる。
——たまには、こんな甘さも悪くない。
そんなふうに思いながら、入野自由は少しだけ微笑んだ。