コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「僕も出て行くね」
翔太がポテトチップスを食べながら言った。
コーラを飲んで、言葉を続ける。
「お父さんと住むんだ。日曜日に迎えに来るって」
美奈には意味が解らない。
「え? な、何を言ってるの?」
「昨日、お父さんと会って決めた」
「そんな勝手なこと」
「僕は自由にしていいんでしょ? いつもお母さん言ってるよ。
何でも好きなように、やりたいようにやればいい、って」
美奈の元夫は、不景気な時代の流れで会社を倒産させた。
だが、そこで終わらなかった。
友人に助けられ、努力して事業を再開した。
今は、友人と共同で新たな会社を経営している。
「あの人、また社長してるの?」
美奈の目が輝いた。
よりを戻せば[社長夫人]に返り咲ける。
愛人と結婚できないが、優雅な[W不倫]を継続できる。
「副社長だって」
美奈は『副』でもいいと思った。
「社長は、新しいお母さん」
「新しい? お母さん?」
元夫を助けた友人は、女性だった。
昨日、翔太が父親と会ったのは、
その女性と結婚したから「翔太を引き取りたい」という話だった。
「いい感じの人なんだ。仲良くできると思う」
美奈は顔を押さえて座り込んだ。
しばらく動けないだろう。
友也が翔太に言った。
「オマエなぁ。あんな我儘な態度や、意地汚い食い方したら、
新しいお母さんに、一瞬で嫌われるぞ」
「大丈夫だって。『良いこと』と『悪いこと』くらい解ってるし。
お母さんが[何をしても怒らない]から、面白かっただけ」
翔太はニコッと笑った。
「僕、本当は紳士だから。女子にもモテるし」
(そうだったのか……)
沙耶は納得した。
こんなに成績が良くて賢い子がどうして? と思っていたが、
「自由に好きなことをしていい」という母親への[反抗]だったのだ。
翔太は立ち上がって、ペコリと頭を下げた。
「友也おじさん、沙耶おばさん、おばあちゃん。今までありがとうございました」