コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「この子、なんか浮いてない? 」
「正直いてもいなくても、変わらない 」
「他の3人が凄すぎて、可哀想」
「ミセスに”要らない”って感じ」
暗闇に包み込まれる。
「やめて、ごめんなさい」
カーテンの隙間から光が差し込み目が覚める。
またこの夢。ミセスとコラボし始めてから毎日のように見る。
あの頃。
なんもかもが夢のようだった。
メンバーの一員として、誰かと一緒にステージに立てることに。
ファンが名前を呼んでくれること。
音楽が、誰かの心を救っていると感じられる瞬間。
たけど――
気づいた時には、
SNSやネットニュースの片隅で
何万という目が、自分を測っていた。
要らない。
という一言。
その一言が
何百、何万という、「いいね」によって重なっていく。胸に刺さっていく。
それはただの意見だとわかっていた。
皆が言うほど、自分は悪くない。
メンバーも、そんな事は絶対に言わない。
でも、心は折れていた。
「私って何?」
3人が輝くほど、自分が霞んでいるように思った。
笑っているのに、
歌っているのに、
”ここにいない”みたい。
「私は誰のために、ここにいるのにだろう」
そこから先は怖かった。
ステージ、ファンが、音楽さえも全部が、
そんな状態でステージに立ち続けるが、
音楽にも
メンバーにも
世間にも
失礼だと思った。
だからやめた。
「辞める」とその一言を放って消えた。
逃げるように。
連絡先も削除して孤立した。
それでも歌いたかった。
本当の意味で”自分の声”を。
だから私は「白鬼」になった。
顔を名前を消して、
評価も数字も気にせず
ただ”歌”だけを残すように。
思ったより良かったのかもしれない。
今じゃ、ミセスと肩を並べられるように。
でも――
こうしてまた、彼らの音と交わってしまった今
心の奥に隠して”奏”が少しずつ息を吹き返してしまう。
準備をして最後に鬼のお面を被る。
「私は白鬼。」自分に言い聞かせる。
鏡を見てフードを被る。
少し足が震えながら家を出てマネージャーの車に乗る。
「大丈夫?顔色悪いよ… 」
「大丈夫…」
「大丈夫、私たちが全力で守るから!」
全てを知っている私のスタッフが励ましてくれる。
これは仕事、
ミセスにとっても仕事、
気づいた時にはミセスの事務所だった。
手の震えを抑え、
私は白鬼。
と口に出し。中へ入った。
ロビーには見覚えのある3人の姿があった。