突然の事で驚いたが、相当辛そうに見えたのだろう
いかにも暖かそうな家に俺を招き入れてくれた
入った瞬間氷が解けるような暖かさに安心したのか、今まで無視していた痛みと疲れがどっと押し寄せてきた
辛うじて意識を保ち、ふらふらの足で何とか着いていこうとする
すると足音で気づいたのか
「…おいっ…大丈夫か…?」
とこちらを心配するように言い、小さい身体で支えてくれた
「あっ…ありがとう…大丈夫だ」
その声に応えるように小さく言った
「…無理はするなよ」
少しだけ見えた顔は、いつもより赤いような気がした
ギリギリの体力で連れて行ってくれた部屋は、ベッドルームだった
「おらっ、ここで休んでろ」
ベッドの上に乱暴に投げ捨てられた為、身体が痛かったがあまり気にせず休むことにした
ガチャリと音を立ててドアが閉まる
周りは綺麗に整頓され、塵一つない綺麗な部屋だった
強いて言うなら、ベッドのサイズが明らかに2人用なのと、ナチの服らしきものがクローゼットの隙間から顔を覗かせていたのが気になった
そんなことを考えているうちに、ドアをノックする音が聞こえた
ガチャリとドアが開くと共に甘い香りが入ってきた
「… これ、飲んでいいぞ」
差し出されたナチの手はマグカップを持っていて、中には作りたてであろうココアが入っていた
「…ありがとう。ナチ」
「どういたしまして…」
差し出されたマグカップを手に取り、口を付ける
優しく包み込むような甘さに、内側から温められ身も心も暖かくなった
じっとナチがこちらを見ていることに気付き
「どうした?」
と問いを投げかけた
「…別になんでもない」
そう応えると同時にナチは目を逸らした
なら良いかと気にせずに残ったココアを胃に流し込んだ
「それ、洗うから渡せ」
飲み終わると同時にナチがそう言ってきたため、溶けきってないココアの粉が残ったマグカップを渡した
「…ありがとな、ここまで色々やってくれて」
俺の口からは自然と感謝の言葉が漏れていた
「…怪我人にはこれくらいするだろ」
「あぁ、それと」
「ベッド1つしかないから、私と一緒に寝るぞ」
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