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高校3年生、初夏。勇斗のデビューが正式に決まった。
事務所から発表された新グループの結成。メンバーの顔合わせ。レッスンの強化。デビューに向けた準備。
すべてが、急速に進み始めていた。
そして、勇斗はその日、仁人に一番に伝えたかった。
放課後の教室。
仁人が一人で帰る準備をしていると、勢いよく教室の扉が開いた。
🩷「仁人!!」
💛「うわっ、びっくりした!」
俺は息を切らしながら、仁人の前に立った。
🩷「決まった!」
💛「……え?」
🩷「デビュー!正式に決まった!」
仁人は一瞬、固まった。
それから、ゆっくりと笑顔になった。
💛「……本当に?」
🩷「本当!」
💛「……おめでとう、勇斗!」
仁人を抱きしめた。
🩷「ありがと!」
💛「すごいね……本当にすごい」
仁人も俺の背中に腕を回した。
その瞬間だけは、寂しさも不安も忘れて、ただ嬉しかった。
大好きな人の夢が、現実になろうとしている。
それが、何よりも嬉しかった。
その日の帰り道。
俺はいつもより饒舌だった。
🩷「これからさ、もっと忙しくなると思う」
💛「うん」
🩷「撮影とか、ライブとか、いろいろあるらしい」
💛「うん」
🩷「でもさ、仁人と行きたい場所もいっぱいあるんだよね」
仁人は顔を上げた。
💛「……どこ?」
🩷「海とか、旅行とか。あと、遊園地も行きたい」
💛「遊園地?」
🩷「うん。ジェットコースター乗ろう、」
💛「俺、絶叫系苦手なんだけど(笑)」
🩷「知ってる(笑)」
笑いながら、仁人の手を握った。
🩷「だから、今度行こうな」
💛「……うん」
仁人はその言葉を、心の中で何度も繰り返した。
今度。
また今度。
その約束が、どれほど守られるのかはわからない。
それでも、信じたかった。
数日後。
俺のもとに、事務所から一つの話が持ち上がった。
デビュー後の活動に向けて、恋愛やプライベートについて、改めて注意事項が伝えられたのだ。
「これからは、ファンの方に夢を届ける立場になる。自分の行動が、グループ全体にも影響することを忘れないでほしい」
黙って頷いた。
「特に、交際関係については慎重に考えてほしい。今の関係をどうするかも、君自身が決めなければいけない」
その言葉が、頭から離れなかった。
今の関係。
仁人との関係。
帰り道で何度もスマホを開いた。
仁人に会いたい。
声が聞きたい。
いつものように笑ってほしい。
けれど、今までのような恋人関係を続けられるのか。
自分には、まだ答えが出せなかった。
一方、仁人もまた、変化を感じていた。
ある日の昼休み。
クラスメイトが、スマホを見ながら話していた。
「佐野って、もうデビューするんだって?」
「すごくない? 絶対人気出るよね」
「彼女とかいるのかな?」
その言葉に、手が止まった。
「いや、あんなにかっこいいんだから、いるでしょ」
「でもアイドルになるなら、恋愛とか難しそうじゃない?」
何も言わずに弁当の蓋を閉じた。
自分は、勇斗の恋人だ。
その事実を、誰にも言えない。
勇斗がアイドルになれば、なおさら。
自分の存在を隠さなければいけないのかもしれない。
そう考えると、胸が苦しくなった。
その週末。
勇斗は久しぶりに仁人をデートに誘った。
行き先は、二人が初めて一緒に訪れた場所。
電車を降りて、少し歩く。
潮風が吹き、遠くで波が白く砕けていた。
💛「……懐かしいね」
🩷「だな」
💛「ここで勇斗、砂浜で転んだよね(笑)」
🩷「ちょっと待って、それいつの話?」
💛「忘れたの?」
🩷「いや、忘れたいんだけど(笑)」
仁人が笑う。
勇斗も笑う。
二人は砂浜に座り、しばらく海を眺めていた。
やがて、勇斗が口を開く。
🩷「……仁人」
💛「ん?」
🩷「俺、絶対有名になるから」
💛「うん」
🩷「いつか、でっかい会場でライブする」
💛「うん」
🩷「そのとき、仁人にも見に来てほしい」
仁人は少しだけ笑った。
💛「……行けるかな」
🩷「来てよ」
💛「……うん」
勇斗は、仁人の肩に頭を預けた。
🩷「俺さ、仁人と出会えてよかった」
仁人の胸が、きゅっと締め付けられる。
💛「……何それ」
🩷「本当に思ってる」
💛「……俺も」
少しだけ、風が強くなった。
仁人は勇斗の手を握り直す。
💛「ねえ、勇斗」
🩷「ん?」
💛「もし、俺たちが一緒にいられなくなったら、どうする?」
勇斗は顔を上げた。
🩷「……何それ」
💛「もしもの話」
勇斗は笑おうとした。
けれど、仁人の表情を見て、笑えなくなった。
🩷「……そんなこと、考えなくていいよ」
💛「……うん」
🩷「俺たち、ずっと一緒にいよう」
仁人は、返事をしなかった。
ただ、勇斗の肩にそっと頭を預けた。
その日、二人は夕暮れまで海辺にいた。
帰りの電車では、仁人が勇斗の肩にもたれて眠ってしまった。
勇斗は、起こさないようにそっと髪を撫でた。
🩷「……大好き」
小さく呟いたその声は、電車の走る音に消えていった。
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コメント
1件
おお、第6話…ついにデビューが正式に決まったね!勇斗が真っ先に仁人に伝えに来るシーン、もう胸が熱くなったよ。「今度、遊園地行こうな」っていう約束の甘さと、その後の事務所の注意事項で一気に現実を突きつけられる流れが切ない…。「一緒にいられなくなったらどうする?」っていう仁人の問いかけには、こっちまで息が詰まった。まだ答えを出せずにいる二人の距離感、すごくリアルで引き込まれる。次が気になる…!