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電話が鳴った。

「もしもし」

「…………」

 いたずら電話をするようなやつではない、と言い切れないのが何とも歯痒いが、少なくとも無言電話を寄こすようなやつではないことは確実だ。

 だからこの無言は、意味がある。

「…………ゴンが、」

「……」

「ゴンが、……あいつまた、一人で突っ走ったんだ」

「ああ」

 電話越しでも伝わる悲壮感。いつも飄々としたキルアが、取り繕えないほど弱っている。

 なにがあったのかは知らない。お互いの知らない間に死んでいても何ら違和感がない、そんな人生を私たちは歩んでいる。

「いくよって、……でも、でもあいつは一人で、オレは、……オレは間に合わなくって」

「ああ」

「でも、でもそんなことより、なにより、一緒に戦おうって、一緒にって、言ってくれなかった!」

「ああ」

 キルアは情に薄いわけじゃない。仲間、対等、キルアはそういった言葉に執着があるような言動が度々見受けられる。ヨークシンで私が旅団から手を引けと言ったときも、キルアはそれらの言葉を使って怒った。

「……、さびし、かった……」

「ああ、……そうだよな」

 だからこの少年が抱く孤独を、誰も笑ってはならない。子供のようだと、微笑ましいと、そんな消費のされ方は許されない。

 一人の少年が押し殺した悲痛な叫び。それが虚空に消えることなく、私に届いたことが、不謹慎かもしれないが嬉しかった。

 きっと一人で消化し立ち直ることもできたのだろう。誰に溢すこともなく日常を送ることもできるのだろう。齢十二でそんな強さを既に持つ彼が、こうして自発的に連絡をくれたことを喜ばない訳にはいかない。

「オレ、絶対にゴンに謝らせる。絶対に。だから、だから、……」

 不器用な泣き方に、喉がキュッと閉まる。かける言葉が、見つからない。

 静寂に、時折キルアの押し殺したようなしゃっくりが紛れる。

「……はあ、ごめんな、クラピカ」

「そこはありがとうだろ」

「だな。サンキュ、クラピカ」

「ああ、また何かあったら連絡しろ」

「それはこっちのセリフ!」

 電話が切れる。

 完全かどうかは分からないが、立ち直ったようでなによりだ。

 伸ばしていた背筋から力を抜き、背もたれにもたれかかる。

「なんとも、歯痒いものだ……」

 できれば私も傍に居たかった。そう思うぐらいは許してほしい。

 仲間の眼を見遣る。

 ゴンがキルアを置いて一人で行動したように、キルアがそんなゴンを許さず謝らせると言うように、レオリオが資格を得るために国に帰ったように、私には、私の為すべきことがある。

 だから、遠いこの地で彼らの安寧を祈ることぐらいしかできない私を、どうか。


 弱くなったのかな、オレ

 宿の窓際、屍のように動かないキルアは考える。前なら、イルミの針を抜き出す前なら、ここまで悲しみに明け暮れただろうか。

 ゴンとの出会いは必然だったのだと思う。出会ったのが同じ時期のハンター試験というだっただけで、きっと二人ともハンターを目指し、なった過程のどこかで惹かれ合っただろう。

 だから、クラピカとレオリオに関しては巡り合わせだと、キルアは考えていた。ゴンを介さずに出会った二人と仲良くする姿は想像できない。

「ゴン……」

 決意は固まっている。やるべきことも定まっている。

 ただ、流れる涙を止めるすべをキルアは知らない。悲しみだとか喪失感だとか後悔だとか、そういった感情の処理が理性に追い付いていなかった。

 キルアは泣いたことがない。幼少期から拷問や尋問、毒や電撃に慣らされたキルアに涙は許されなかった。常軌を逸した家庭環境の呪縛から一つ解放されその結果、感情が一つ宙ぶらりんになってしまったのだ。

「ゴン……」

 様々な情景が脳裏を廻る。

 ふと、いや、無意識だったのかもしれない。おもむろに携帯に手を伸ばしたキルアは、その画面を見ることもせず電話を掛けた。

ハンターを詰め込む

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