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「緋の眼の所有者が判明した」
「本当か?!」
「ああ、教えることはできないが」
「そりゃそうだろうよ。でも、そっか、それで最後だって言ってたよな。そうか、よかった」
ミザイストムからゴンの話を聞いて、久方ぶりに電話を掛けた。
大丈夫か、ゴンはどうなった、言いたいことはいろいろ湧き出たが、それを聞くには時がたち過ぎた。
変わりに出たのは近況報告。
本来なら伝えるべきではない情報だったが、その元気そうな声が聞こえた途端、口が緩くなる。この間キルアが漏らした本音がどこか引っかかっていたのだろう。
寂しかった……
共に闘えずとも、キルアには知っていて欲しいと、そう思った。
「アルカは元気か」
「え? ああ、すっごい元気。今まで閉じこめられてた反動なのか、生来のかは分かんねえけど、いろんなところに興味がいって大変だよ」
みんなの元気な声が聞こえるというのは幸せなことだ。
「そうか、二人とも元気そうで何よりだ。しばらくは連絡できそうにないが、帰ってきたらアルカとも相まみえたい。もちろん、お土産も持ってな」
「ふーん。あらかじめ連絡取れないなんて言うの、珍しいじゃん。次の仕事そんなに大変なわけ?」
「まあ、そうだな。それもあるが、これまでの自分が報われるのかもしれないと思うと、どうしても気が緩まってな」
それだけではない。
すべての同胞の眼を取り返して、その後は? 全てが終わり、新たな始まりを迎えるとき、自分には何が残されているというのだろうか。
緋の眼の所有者が判明してから頭をついて回る、終わりのその後。
一種の虚無から束の間でも抜け出したくてキルアに電話したところが、無いわけではなかった。
「ま、全部終わったらみんなでクジラ島遊びに行こうぜ。ミトさんの料理めっちゃうまいんだ」
いとも簡単に提案された未来に、一瞬言葉が詰まる。
そんな幸せな未来が、あってもいいのだろうか。
「そう、だな。それはとても楽しみだ」
……いいのだろう。きっと、それは私だけの幸せではないのだから。
生きて帰ろうと、心に決める。自分のため、そして私を待ってくれるみんなのため、緋の眼を取り返し、ハンター協会の指令もこなし、絶対に生きてやる。
「なあキルア」
「ん、なんだよ」
「私たちは幸せ者だな」
「ハアア? なに恥ずかしいこと言ってんだよ!」
「ハハ、じゃあまた、全てが終わったら連絡する」
「はいはい、お仕事頑張れよ」
さあ、気合を入れなおそう。