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未だ袖をつまむ有夏チャンに「はい」と紐を渡した様子。
そのままこっち側に戻ってきたので、アタシは慌ててドアを閉める。
見つかったわけじゃないとホッとしたのは、もう一度ソロリと隙間を開けた時、2人がキッチンスペースと廊下の際でしゃがみ込んで何かを探しているようだったから。
正確に言うと探しているのは幾ヶ瀬だけで、有夏チャンは奴の袖をつまんだままちょこんと座っているだけなのだが。
「ゴミ袋、もう少しあった方がいいよね。こないだ買ったばっかなのに勿体ないな」
クイクイと袖を引っ張られ、幾ヶ瀬は振り向く。
「どしたの、有夏?」
「明日、休めないんだ?」
でた。甘え声、出た!
「む、無理だよ。明日日曜だし。ランチの人手足りないくらいだし。俺、厨房とホールの両方しなきゃなんないだろうし」
一瞬揺らいだ様子は見せたが、さすがの幾ヶ瀬も有夏のワガママより仕事を優先させるようだ。
何だろ。他人事ながらホッとしたよ、アタシは。
「幾ヶ瀬ぇ……」
「ご、ごめんって。有夏」
有夏チャン、そのまま幾ヶ瀬の胸に顔を押し付けた。
「姉ちゃん、奇行種だから。有夏、幾ヶ瀬が一緒じゃなきゃこわいよ……」
「なるべく早く帰るから。ね! 頑張ってね、有夏」
ゴミ袋を握り締めたまま、ヘンタイメガネも有夏チャンの背に手を回す。
2人して廊下で抱き合ってる。
どうでもいいけどオマエら、アタシの存在忘れてんだろ。
お隣りさんってだけで、全然関係ないアタシに掃除させといて、自分らはイチャつくってどういう神経してんだろうな!
ゴミ袋をぶん投げそうになったが、辛うじて踏み止まる。
チュッチュと潤った柔らかな肉同士が触れ合う音がしたからだ。
ウッヒョー、これはこれは……。
合わせた唇の内で舌が口腔を這い回る音だ。
互いの背中に手を回して堅く抱き合ったまま、随分長いことキスしてやがる。
ヘンタイメガネがゴミ袋握り締めたままってのが笑えるところだが。
時折、顔を離したと思ったら互いに視線を交わして笑いあったり。
またキスしたり。
「いくせぇ……」
有夏チャンの目がトロンと潤んでいる。
無理ないか。
ヘンタイメガネの奴、感度が良いと評判の(?)有夏チャンの乳首を服の上からクネクネと触りまくっていたからだ。
「駄目だよ、有夏。掃除に戻らなくちゃ」
「でも。幾ヶ瀬、ちょっとだけ……」
切羽詰まった様子で自分の胸にしがみつく有夏チャンを、ヘンタイメガネはねちっこい目で見下ろしている。
何か企んでいるイヤらしい目つきだ。
「しょうがいなぁ。分かったよ。収まりそうにないなら、ちょっとだけ抜いてあげる」
そう言うと左手を有夏チャンの股間に押し当てる。
「うんん?」
服の上から撫でられ、余計にもどかしそうに有夏は身じろぎした。
「脱がせろよ」
だめ、と幾ヶ瀬がニヤリと笑う。
「掃除中で手が汚れてるもん。こんな手で有夏に直接触れないよ」
「いいって!」
「駄目だって」
「でもっ……んっ……」
ゆっくり動く手に合わせて、有夏も腰を揺らす。
頬を上気させ、幾ヶ瀬の胸にしがみついたまま腰を振る様ったら!
幾ヶ瀬は理性を保とうというつもりか、有夏チャンから顔を背けたまま手だけを動かしている。
「幾ヶ瀬、したい……」
「駄目。掃除しなきゃ。有夏の部屋でしょ」
「……幾ヶ瀬だってしたいくせに」
股間に伸びて来た有夏の手を、幾ヶ瀬はつかんで引き離した。
「駄目だって。明日まで我慢、ね。今日はこれだけしてあげるから」
「ふぁ……っん、いく、せっ、こんなの、ヤだっ」
幾ヶ瀬の手の動きが激しくなる。
服の上からとはいえ有夏もこれはたまらないらしく、すぐに達してしまった様子。
力を失った身体を幾ヶ瀬の腕に預けて有夏は乱れた呼吸の下、幾ヶ瀬をなじった。
「こんなのヤだ。昨日からなんで挿れてくんないんだよ」
「挿れてもらわなきゃ満足できないんだ、有夏」
「う……」
「だって、掃除の途中だよ?」
「すぐ済むって!」
「すぐ済むって、そんな……」
その言い草に幾ヶ瀬は苦笑する。
「明日、ちゃんとしよ。ね?」
「ホントにぃ?」
「有夏がヨくなるように、俺ちゃんと考えてるんだ」
「……何?」
一瞬、表情を曇らせた有夏だったが、すぐに気を取り直したようで隙をみては幾ヶ瀬の耳を舐めたり噛んだりして攻めている。
馬鹿だなぁ、有夏チャン──アタシはそう思うわけだな。
ヘンタイメガネのこの言い草。この笑い方。
アタシは浮き浮き……いやいや、嫌な予感しかしないものだ。
いやはや、明日が楽しみで……おっと、メガネが立ち上がったぞ?
「パンツ履き替えてからおいで。何だったらシャワー浴びて、少し休んでからでも構わないから」
なんて優し気なことを言いながら。
アタシは物音を立てないよう慌てて有夏邸へ戻る。
さもゴミ袋の口をくくり終わったところですという体を装っていると、メガネが何食わぬ顔して入ってきた。
ジロリと部屋を見渡し、それからアタシを睨んだ。
さっきまで有夏チャンをイカせてた顔とは随分違うな。
何だろうか、これは。
アタシ、蔑まれてるなって何故だかヒシヒシ感じるよ。
「何も片付いてないじゃない。使えない女」
「す、すいませんね」
何だろ、コレ。なんかすごく理不尽だ。
あと、有夏チャンのヤツ、ちっとも帰ってこないし。
メガネの監視の隙をついてこっそり見に行ったら、ヤツはベッドに寝っ転がって「磯野磯兵衛物語」の7巻読んで笑ってやがった。
すっごい理不尽だ。
世の中ってヤツは案外こんなもんなんだなぁ。
「有夏邸 脱・GM屋敷!」完
※次回は「焦らしたあげく禁断のラブロマンス、なんてプレイを」というお話です※
【予告】「焦らしたあげく禁断のラブロマンス、なんてプレイを」
「じゃん! 今回は教師と生徒のラブロマンスなんて考えてみました。
どうだろうか」
「どうだろうかって、お前がどうだろうかだよ。
なんでそんなにテンション高ぇの?」
幾ヶ瀬の胸に顔を埋めたまま、有夏。精一杯の悪態をつく。
でもさっきまで指3本挿れられていたお尻はじんじん疼いていて。
だってこの数日擦ったり触ったりだけで、
ちっともナカに挿れてくれなかったから。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
こんな感じでお送りします。
エロければエロいほどイイ!
そんなスタンスでお送りいたします。