テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
わんく
◇◇◇
とある大きな戦いが終わって半年が経った。
基地は変わらない笑い声で包まれていた。
怪我人は出たものの、姿を消す者はいなかった。
後遺症を負う者もいた。
けれども、皆それに目を背けようとはしなかった。
ciもその1人であった。
あの戦いで、補給輸送科として走り回っていたことを皆が知っている。
そして、彼が銃弾で撃ち抜かれた瞬間も、皆が見ていたのであろう。
彼は胸や肺に大きな傷が残り、毎日決まった薬を飲まなければ体を保てなくなっていた。
いつものように朝がくる。
小鳥が鳴くのを聞いて、tnが早歩きで廊下を通る。
向かうはciの部屋である。
まだ誰もいない廊下に、スリッパの音が響く。
「ci」
「…んぉは、よ」
ベットに座るciが目を擦る。
メガネを渡せば、目を閉じたまま静かにかけた。
「…んもぅ、あさ、なん」
「せや。今日の朝ご飯はオートミールや言うてutがせこせこしとったで」
「おーと、み、る」
「そ。オートミール。」
「おれ、とーすとがええ」
「ばあか、わがまま言わんよ。」
そんなやり取りをしながら起きる。
ciの手を引いて、一通りのことを済ませる。
そんな頃にはもうciのも目が覚めていた。
そうして、彼に薬を手渡す。
ciの喉が揺れる。
「今日はおっきいことなんもないから安静にしときな。暇ならemのとこに行くとええ。」
「安静に、て。俺はもう平気やねんけど」
「今日はhtも帰ってきとるし、shoもおるから、多分emのとこでおしゃべりしとる」
「無視せんといてよお」
最初は薬が苦手だったciも、もう慣れたのかなにも言わない。
tnはそんな彼の背中をタンッと叩いて、部屋を出た。
◇◇◇
「ciくん…お薬の量、増えても大丈夫かな」
そう言われたのは梅雨のある日のことだった。
snが診断書を片手に、マウスを片手にそう告げた。
「………ぁ、はい!」
「ごめんね。梅雨ってのもあるけど少し不安定な時期になるかなと思って」
ciは視線を落として、膝の上に置かれた手を握りしめた。
ガサガサとビニール袋に薬が入れられていく。
2、3個増えたくらいでどうってことない。
自分に言い聞かせるしかなかった。
「tnにも、grにも。それからshpくんにも伝えてあるからね」
「…shpに?」
「うん。隣のお部屋やろう?shpくんがあれからずっとciくんの体調気にしてるの知っとる?」
「ぇ、まあ。よく聞かれます。訓練中とか」
「頼ったりねshpくんも。あの子気にしいやでな案外」
くすくすと笑ってビニール袋を受け取る。小さくお辞儀をして医務室を出た。
がさりと少し分厚いビニール袋が音を立てる。
ばれないようにため息を零して廊下を歩く。
なんとなくしんどい気がして、壁にもたれかかる。
ビニール袋が手から滑り落ちて、そのまま自分もしゃがみこんだ。
顔に手を当てる。
これから先にいるであろう自分を考えて。
いなかったとしたら自分は最後どうなるかを考えて。
「…ッci!」
数分経ったくらいの時だった。
慌てた足音と同時に、shpの声が上から降りかかる。
手首を掴まれ、目が合う。
shpは少し息を切らしていた。
目が合うと、彼は手を離し自身の顎に垂れる汗を乱暴に拭った。
「…っは、おま。…こんなとこでなにして、ん」
「ちょっと頭痛かっただけ。多分低気圧のあれやし大丈夫」
「…おくる。腕かせ」
「は?い、いやいや…そこまで重症ちゃうわ」
「……そう。じゃあこっちは俺が持つ」
shpはビニール袋を取って、ciの背中をぽんと叩いた。
「いこ」
「…忙しいんちゃうの今訓練時間や」
「せやぞばかやろう。忘れもん取りに来たらお前がぶっ倒れてんねんや。そらお前んとこいくわぼけ」
shpはもう一度汗を拭って、歩いた。
階段で静かにciの腕を掴み支える。
ciは振り払うか考えたが、snに言われたことを思い出してそっと頼ることにした。
「…ci」
「なん」
「きついならおれ、まだおる、けど」
こちらをみる目があまりにも不安そうだったから。
ciは小さく頷いた。
正直、雨の中一人でいるのは寂しい。
いつもはtnのとこに行くけれど、今日は遠出でいない。
「…毛布、とあと…水、」
shpはパタパタと忙しなく動き回る。
ciもなにかやらねばと立ち上がろうとするが、ベットに押し付けられてしまった。
それから、夜ご飯の時間まで二人で小さく談話を続けた。
◇◇◇
「なにかあったら連絡して」
shpとは食後utらと会議があるらしく小さく手を振って別れた。
満たされた腹を撫でながら自室に戻る。
今日のシチューは特別美味しかった。
それから、tnも無事に明日帰ってくると言っていた。
早く明日にならないかと胸を踊らせながら扉を開ける。
「…ぁ」
机には分厚いビニール袋が置いてあった。
薬である。
完全に忘れていた。
いや、言うてもただの薬である。
3つの粉薬と5つの錠剤。
1つずつゆっくり出して、机に並べる。
shpが出してくれたペットボトルを掴んで、キャップを投げ捨てた。
いつも苦ではなかった。
だから平気なはずなんだ。
そう思い、粉薬を流し込んだ。
いつもならすぐに通っていくそれが、喉にへばりつくような気がして咳き込んだ。
仕方なくもうひとつの粉薬を流し込んでみた。
それもまた喉にへばりつく。
慌てて水を飲んだが、それですら喉を通らない。
「…ッ、は。ぁ”、は」
粉薬はやめて、先に錠剤を飲もうと思った。
そちらも喉を通るわけがなくて、口の中で溶けて苦くなる。
吐き出して、飲んで、吐き出して。
ペットボトルが手から滑り落ちてその場にへたり込む。
「…っ、”…」
どうしよう。
いくら数が増えたとはいえ、ひとつでも飲まなかったらその代償はでかいだろう。
カーペットに水が染み込み、足が濡れる。
それよりも喉が激しく震えた。
息が上がって、目の前がぼやける。
どうしよう、どうしようどうすれば。
いまからsnのところにいけるだろうか。
軍医の彼はciにつきっきりなんて暇はない。
特に夜は忙しいだろう、食堂にも滅多に顔を出さない。
パニックになった頭を制御できるものはなにもなくて。
いるはずのないtnを求めて体が動いた。
ドアノブを2回ほど滑らせて乱暴に捻る。
真っ暗な廊下を手探りで歩いた。
目の前にいるはずのない赤色を求めて歩いた。
◇◇◇
「ふんふんふ〜んっ」
タバコをふかしながら、knは夜の廊下を歩いていた。
厳しいtnがいなかったらなんでもできる気がした。
ぷかぷかと煙を上げながら足取り軽く歩く。
暗い中で、たばこの光と真っ赤なストライプが輝く。
「…んっん〜???」
遠くに誰かがいた。
こんな夜中に誰だと睨むように見つめる。
不安定な動きで、左右に揺れながら歩いている誰かを。
「…おいおいおぉ”い。まじかよッ…!」
水色のふわふわが見えて、knは慌てて駆け出した。
彼の怪我のことは知っているし、彼が最近不安定だと言うのも風の噂で聞いた。
なにがあったのかはしらんが、tnがいないのだからパニックにでもなってるのだろう。
knはたばこの火を親指で消し止めて、彼に駆け寄る。
そっと座らせてやると、そこでようやく彼の息が荒いことに気がついた。
ポケットからスマホを取り出し、ライトをつける。
「どうしたci。夜やで寒そーな格好やね」
「…ッ、っ。k、nさん」
「意識はあるな。よしゃ、乗れ!」
knは背中を向けた。
けれど、ciはその背中を弱々しく拒否した。
「ちが、ちがぅ…ちがう、ねん」
「ん?なあによどしたん」
んなパニックになってまって、と肩を撫でる。
ぼたぼた垂れる涙を拭いながら彼は必死に言葉を繋げた。
「くすり、薬が…のめんく、なって、ぐッ…」
「薬ぃ?ほおかほおか…飲めへんねや」
「なんか、のど…喉、とおらへ、んの…ッ」
「通らへんねや」
「…う、ッん」
knは頭をフル回転させながら返事をする。
どうしよう。
さっぱり分からない!
薬なんてものはなーんにも知るはずがないし、喉通らないとかそういうのもよく分からない。
乾燥か?湿度?などととにかく、フル回転させていた。
「…一旦医務室いってみよか?」
「…ッ、sn、さん。いそがし、ぃ…」
「優先順位っちゅうもんがあるやろう。それか…うーん。tnが来るまで俺とおる?」
「……、そ、うする」
その返事を聞いて、knは息をついた。
ぐしゃりとciの髪の毛を撫でる。
「ん。おぶったろう」
「…、で、も」
「このkn様の偉大な背中に乗れるんやぞ。光栄に思えや?」
「………、」
こういう時に頼るのが苦手だった。
いつもなら何言ってんねんと笑っていられるのに。
喉に薬が引っかかった感覚も、息が吸えない感覚も、全部が怖かった。
だから。
「なーんちゃっ「…ッ」
knの服の裾を、小さく掴んだ。
真っ赤なストライプを掴んだ。
その細い指先が震えていることなんて、気がつけやしなかった。
knはそれを見て一瞬だけ目を丸くした。
珍しいな、と驚きながら、その手を上から覆う。
「離すなよ」
◇◇◇
「…うん、そー。やからどうにかしたって」
『そうやねー…やっぱり薬の量増やすのはメンタル時にしんどいよなあ、うーん…』
「あれはあれ。ゼリーに混ぜるやつ」
『そやなあ。とりあえずそれにしてみようかな』
「うん。あとこの事tnにちゃんと言っといてな」
『は?knから言えばいいじゃん』
「…俺よォわからへん」
『はあ?』
「焦りすぎて、そん時の記憶が全部トんでんねん」
『いやいやいや…今全部細かく教えてくれたよね』
「もー忘れた。ねる。ciとねる」
『はあ!?』
ブツンと通信機を切って、ベットに寝転がる。
布団を全部奪い取って気持ちよさそうに寝てるciを見て、息をつく。
一旦、できることはやったよな。
あの後一目散に自室に走った。
おんぶしたらすぐ意識を飛ばすものだから、緊急事態かと思ったものである。
薬は飲んでいないから、まだ安心できるわけじゃない。
枕元に緊急時に使えと言われたよう分からないものを並べて、目を擦る。
「………」
「………………うん」
「つかれたァ!!!!!!!!!」
◇◇◇
ぐおんやら、がおんやらとknのイビキが聞こえる。
shpは階段を駆け上がっていた。
snが慌ただしく外でtnに電話をかけているのを見かけた。
tnに電話をするというのは、大体ciが関係している。
そう思って問い詰めたら、ciが倒れたことを教えてくれた。
そして、今はknが保護していると。
knの部屋のドアノブを掴む。
ガチャッと音を立てて、たばこの匂いが充満する部屋が開く。
中は、小さなランプの明かりの他なにもない。
「knさん…knさ、くそ先輩」
「…んお”…ん、なん、なに」
「なにがあったんすか」
「……shpか、ぁ”んん…ちょお、まて」
ciの布団をかけ直して、部屋の外に出る。
しばらくして上着を着たknもでてきた。
「…ん”ーッ。はあ、夜遅くまで訓練たァ、ようやるな」
「はい。で、ciはどうしたんすか」
「はいはい…」
薬が飲めなくなったこと。
パニックになっていたこと。
とにかく、めちゃくちゃ細かいわけではないが、おおよその話を聞いた。
knの表情を見るに、この人も思いのほか焦っていたらしい。
「tnさん、朝には戻るって言ってました」
「そーか。ならええわ」
「…ほんまは、なんとかしてやりたいんすけどね」
俺が。
shpはぽつぽつと光るランプを見下ろしながら呟いた。
knも頷く。
「なんか…おもってたんとちゃうかった」
「なにがすか」
「いや。…もっとこう、スーパーヒーローみたいな。めちゃくちゃ頼りになる存在だとおもってた」
「誰が」
「俺が。」
「阿呆ちゃいますかアンタ」
shpはクスクスと笑いながらランプを持ち上げた。
それから、knを置いたままknの部屋に入る。
「俺、ciと寝るんで」
「は?」
「knさんは俺の部屋で寝てくださいね」
そう言って静かに扉を閉めた。
おひさです
wr熱がまたでてきて気がついたら指が動いてた
じゃあねんばいばーー
#wrwrd!
星螺💫
30,420
Ringoaisu。
3,233
#ご本人様には関係ありません
コメント
13件
ここちゃんのお話読めてめっちゃうれしいよ😭これで明日からも頑張れるよ😭😭ほんとにだいすき

久しぶりで嬉しい✨️^._.^