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──深夜1時すぎ。静まり返った住宅街を、並んで歩く二つの影。
理央の頬は、まだほんのり熱を帯びていて、
ぎゅっと握られた手を見ながら、上目づかいにぼそりとつぶやいた。
「……なんで僕まで行かないといけないんですか」
「ひとりじゃつまんないから。
それに、理央……まだふらふらしてるでしょ。ひとりで部屋いたら絶対また転ぶよ?」
「……それは、あなたのせいでしょう。……昨日のせいで……足が……」
「え? なに? 昨日のせい? 俺、なにかしたっけ?」
ぴし、と理央の眉が上がる。
そのツンとした顔が可愛すぎて、蓮は笑いをこらえた。
「……うるさいです。歩くのも……まともにできないくらいにしたくせに」
そう言いながら、理央はそっぽを向く。
その横顔は、しっかり耳まで赤かった。
⸻
コンビニの自動ドアが開いた瞬間、
冷たい空気と、ほんのり漂うフライドチキンの香り。
深夜のコンビニは人も少なく、
ふたりは飲み物と、アイス、それから――蓮が目当てのモノを手に取った。
「あ、これも買っておこう。昨日ので最後だったし」
「……はぁ? なんの話ですか……?」
「え、理央がしてくれるって言ったら……全然するけど?」
「?」
理央が返事をする前に、レジに向かう。
深夜シフトの若い女性店員が、ちら、と蓮を見て、そして理央に視線を移した瞬間――
ピクリ、と肩が跳ねた。
「……いらっしゃいませ……」
その声は明らかにぎこちなく、
蓮が楽しそうに「アイスふたつねー」なんて言ってる間も、
女の店員は理央の顔を見ようとしない。
(……どうしたんでしょう。……そんなに、僕、変な格好……)
理央は不審に思いながらも視線を落とし、
ふと――視界に入ったレジの液晶。
【XLサイズコンドーム(3P)】
(……っ!)
目が見開かれ、首を触ったその指先に、ざらりと感触が残る。
あわててレジ脇の反射板に映った自分の首元を見て――
「……っ、……なにこれ……」
そこには、紫に近い赤――吸血痕とキスマが、何箇所も。
「あなた……っ、これ……!」
「え? 今さら気づいたの?
俺、ちゃんとキレイに並べたんだけどな~……」
「っ……最悪です……もう……っ…店員さんにも見られて……」
「大丈夫。あの人、見ないように頑張ってくれてたよ?
……まあ、俺としても見せたくないけどね。他の人に、理央の色っぽいとこ」
そう言って理央の肩を引き寄せ、そっと耳元にキス。
「ねぇ理央。帰ったら、……まだ、余ってるよ。ゴム」
「や、……やめてください、そういうの……っ」
耳まで真っ赤になりながら、
でも手は、ちゃんと蓮の手を離さずにいた。