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#極道
鷹槻れん

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#シングルマザー
水羽凛
183
月詠 涼
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鷹槻れん

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「――コト、俺にも何か手伝わせて?」
テレビを付けて、リビングに座っていてもらったけれど、やっぱり落ち着かなかったみたい。
ヒロがそう言ってキッチンにやってきたから、私は「じゃあ、これ運ぶの手伝ってもらおうかな?」って、出来たばかりのおつまみをトレイに乗せて差し出した。
「何これすげぇっ! 何かいいにおいするなって思ってたけど……お前、あんな短時間で3品も作ったの?」
ヒロが目をまん丸にして驚いてくれるから、何だか物凄く照れ臭くなって、「切ったり焼いたりしただけだからっ」とソワソワしてしまう。
「いや、けどさ、料理って基本そんなのの繰り返しだろ」
テーブルに出来立てのおつまみを置くなり、私の方を振り返ったヒロにククッと笑われて、確かにそうなんだけどって思った私は、でもこんなのを料理と呼ぶのはおこがましいよぅとも思ってしまって。
「あ、あのねっ。次にヒロが遊びに来るときは、もっと手の込んだものご馳走するからっ。だからっ」
――あまり褒めないでっ!
慌ててそう続けようとしたら、言い切る前にギュッと抱きしめられた。
「なぁ、どうしよう、コト。――こんなんされ慣れてねぇからかな。すっげぇ嬉しくて……俺、今、お前のこと、どうしようもなく好きだって実感させられてんだけど……」
私を抱きしめるヒロの腕に力が込められて、少し痛いぐらいで。
でもその痛みが私を余計にドキドキさせた。
「ヒ、ロ……」
彼の腕の中で身じろぐように少し体勢を変えてヒロの顔を振り仰いだら、熱に浮かされたみたいな彼の瞳と目が合って心臓がドクン!と跳ねた。
こんな〝男〟の顔をした彼の表情を、私、見たことがない気がして。
それを意識した途端、どうしうようもなくソワソワしてしまった。
ヒロが私にキスをしたがっているのは分かったけれど、思わず、「あ、あのっ」ってその動作を遮るみたいに声を出して、「お、おつまみ……冷めちゃうっ」とか水をさしてしまった。
ヒロは私の言葉にハッとしたように私を抱く腕を緩めると、「あ、あぁ、それもそうだよな」って言って。
私は壊れそうなぐらい踊り騒いでいる心臓を沈めたくて「ぐ、グラス取ってくるねっ」ってキッチンに引き返した。
そういえば焼酎、ヒロはどうやって飲むのが好きなんだろう。
食器棚の前に立ってはみたものの、そこを聞きそびれていたことを思い出して「ねぇ、ヒロは焼酎……」って声をかけたら「とりあえずはロックで」と、皆まで言う前に欲しい答えが返ってくる。
ヒロのこう言うところが、一緒にて居心地がいいと思う部分で。
「氷、冷蔵庫で出来た普通のしかないけどいい?」
コンビニで美味しい氷を買って帰ればよかったって思いながらソワソワしたら「問題ねぇよ。家じゃ基本それだし」って苦笑された。
多分、私も自分が飲むなら全然気にしないんだけど……何でだろう。
好きな人に飲ませるって思ったら、水道水を凍らせただけの氷では申し訳ないような気持ちになってしまって。
「あ。レモンあるけどスライスしようか?」
冷蔵庫に国産のレモンが買ってあったのを思い出してそう聞いたら「バーカ。そんなんいいから早くこっち来いよ」って笑われてしまった。
私、ヒロをどれだけ甘やかしたいんだろう。
大好きな人と付き合えるのって、物凄く気持ちが浮き足立ってしまうんだなって……。自分で自分が可笑しくなる。
レモンは後で……と自分に言い聞かせて、とりあえずグラスを2つ手に取ると、中に氷をたっぷり入れて、ドキドキする心臓に静まれ静まれって声をかけながらリビングに戻った。
テーブル前でどこに座るか一瞬だけ迷って、ヒロの対面に腰掛けようとグラスを配置したら、「遠くね?」って即座に彼のすぐ横へグラスを移動されてしまった。
ヒロ、コンビニでは自分も緊張してるって雰囲気だったのに、アパートに入った途端すごく攻めてくる気がするの……気のせい?
ドキドキしてどうしよう、どうしようってなってるの、私だけ?
「あ、あの……」
ソワソワしながらヒロを見つめたら「ほら……せ、せっかく2人きり、なん、だし……」って、ここでいきなり物凄く照れた顔をしてしどろもどろになるの、反則だよぉ。
ヒロがこれだけ頑張って歩み寄ってくれてるんだもん。私も背伸びしなきゃって思わされるじゃないっ。
「し、失礼します……」
緊張のあまりソワソワしながらそう言ってヒロの横へ座ったら、「いや、ここお前ん家」って笑われて。
「そっ、それもそうですねっ」
って言ったら、「なんで敬語」ってまたしても突っ込まれた。
――ヒロは覚えてないかもしれないけれど、私、ずっと片想いしていた人がいたって言ったよね? それが貴方なんだよ? 挙動不審にもなるわよっ。
なんて思いつつ。
「だ、だって……き、緊張するんだもんっ」
仕方なく素直に白状して、太ももの上に乗せた手をギュッと握り締めたら、「オ、レも……緊張してるから安心しろ」って。
「何それ、全然安心材料じゃないよっ!?」
思わず今度は私が笑いながら突っ込んで。
でも、何だかそのおかげで2人して笑い合うことが出来て、ちょっとだけ張り詰めていた糸が緩んだ気がした。
とりあえず乾杯しようかって、各々買ってきたお酒をグラスに注いで2人してグラスを掲げてみたものの、「何に?」って戸惑って。
もうこれしかない!と思った私が
「え、っと……お、お付き合い開始記念日に……乾杯?」
恐る恐るそう言ったら、ヒロが一瞬瞳を見開いてから、
「改めて言われると照れ臭いけど……末永くよろしくお願いします」
って続けてくれて、何だかプロポーズみたいだなってめちゃくちゃ照れてしまった。
「もぉ、それ反則っ!」
照れ隠しにそう言いながら、恥ずかしさを誤魔化すみたいにグラスを満たしたコークハイをグイッと一気に煽ったら、ヒロが「急にそんなに飲んで平気か?」ってオロオロするの。
――いやん、大好きな人に心配されるの、すっごく幸せっ。
大丈夫よってコクコクうなずきながら、
「ね、食べて食べて」
――せっかく作ったおつまみ、ヒロに堪能してもらいたいっ。
そう思って、焼酎に一番合いそうな〝大葉とラディッシュの焼きタラコのせ〟(今命名しました!)を取り皿に取ってヒロに手渡す。
そこで私、ハッとした。
「――あ、そういえばっ。大葉とか大根系とか……平気だった?」
作る前に聞かなきゃダメなやつじゃん!と頭の中で自分にダメ出ししつつ聞いたら、「俺、好き嫌いほとんどねぇから」って言ってくれてホッとする。
「ごめんね。私突っ走っちゃうタイプだから……。ホントは作る前に苦手なものないか聞かなきゃいけなかったのに。今度から気をつけるっ」
それでもやっぱりそこはちゃんと謝っておきたくて。
頭を下げながらそう言ったら「コトはホント真面目だな」って下げた頭をふわふわと優しく撫でてくれた。
頭頂に感じられるヒロの大きな手のひらの感触に、どうしようもなくキュンときちゃうのは仕方ないよね?
その手の温もりを感じながら、ヒロは優しいから……きっと苦手なものが出てきても、「せっかく作ってくれたんだし」って無理してでも食べてくれるタイプだろうなって思って。
――私、ヒロにそういう無理はさせたくないよ。
「本当に苦手なものがあったら遠慮なく言ってね?」
ソワソワしながらヒロを見つめたら、「俺がお前に遠慮したことあるか?」って逆に見つめ返されて。
そういえば私たち、ちゃんと言いたいこと言い合える〝良き友〟であり、最高の〝変形菌友〟だったよね、って思いながらふるふると首を横に振る。
「だったらそんなシケた面すんな」
言って、小声でぼそりと「可愛い顔が台無しだぞ?」って付け加えてくれるとか、ヒロってばどれだけ私を悶えさせるつもりなの!?
――そこ、もっと大きい声で!って調子に乗ってもいいですか?
コメント
2件
なにこの二人のぎこちない感じ! たまらない!(笑)
うわ、こういう距離感がぎこちなくて焦ってる感じ、めっちゃリアルで良いっすね!コトの「緊張するんだもんっ」にヒロも「オレも緊張してる」って返すとことか、お互い様すぎて笑ったし、そこで二人で笑い合えるのがもうカップル感あってにやける…。敬語で「失礼します」って座るとことか、細かい仕草の描写が刺さるわ。大葉ラディッシュのタラコのせも気になるし、次回も楽しみにしてます!