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【ユース合宿・合宿所トイレ】
(翔陽は体育館から必死に走り去り、合宿所のトイレに飛び込んだ。個室のドアを閉め、背中を壁に預けて崩れ落ちるように座り込む)
🏐日向(心の声)
「……俺、なんで……こんなに弱いんだろ……。もう逃げたはずなのに……佐久早の言葉がまだ心に残ってて……」
(頬を伝う涙を止められず、手で覆い隠す。声を殺して泣くのは、昔からの癖だった。誰にも弱いところを見せたくなくて、いつもこうやってトイレに隠れた)
(しばらくして、廊下から足音が近づいてくる。二人分の、聞き覚えのあるリズム。心臓が跳ね上がる)
佐久早(トイレの外で、低い声)
「……お前は泣く時、毎回トイレだよな」
(翔陽の肩がびくりと震える。昔、何度も見抜かれた弱さを、今も見透かされているようで苦しくなる)
古森(柔らかい声で、けれど必死に)
「お願い、翔陽……もう俺たちから逃げないで。俺……翔陽がいないと生きていけないんだよ」
(翔陽の胸の奥で、何かが軋む。彼らの声は、重すぎるほどの執着で満ちているのに、同時に愛おしさと切実さを感じさせる。涙がまた一粒こぼれる)
🏐日向(心の声)
「……なんで……。俺がいないと生きていけないなんて……そんなこと言われたら……捨てられないじゃん……」
(ドアの向こうで、佐久早が続ける。低く熱を帯びた声で)
佐久早
「翔陽……お前が俺たちを捨てたって思っても、俺は諦めねぇ。逃げても逃げても、必ず捕まえる。……お前が笑うのも、泣くのも、全部俺たちの前でじゃなきゃ許さねぇ」
(その言葉に、翔陽の喉がぎゅっと締めつけられる。怖いはずなのに、心が強く揺れてしまう)
🏐日向(心の声)
「俺……あの時も、ずっと二人に必要とされて……それが嬉しくて……でも怖くて……」
古森(声を震わせて)
「俺たち、本気で翔陽を失いたくないんだ。お願いだから、帰ってきてよ……翔陽」
(翔陽の目からまた涙が溢れる。ドアを開けたらまた縛られる。自由なんてなくなる。でも――ドアの向こうで必死に呼ぶ声を無視するのも、胸が裂けそうに苦しい)
🏐日向(心の声)
「……やっぱり俺……まだ、この二人から完全に離れられてないんだ……」
(トイレの中で、翔陽は膝を抱えながら嗚咽を漏らす。外からは佐久早と古森の呼ぶ声が止まらず、心はぐちゃぐちゃに揺れていく――)
(個室の中で嗚咽を漏らす翔陽。外からは途切れず二人の声が響き続けていた)
佐久早(低い声で、扉に額を押しつけるように)
「翔陽……開けろ。俺らを拒んでも、何も変わらねぇぞ。俺は何度だって追う。何度だって捕まえる。……だから逃げんな」
古森(声を震わせて必死に)
「お願い……俺たちから離れないで。俺、本当に翔陽がいないと駄目なんだ。朝起きても、練習してても、夜眠る時も……翔陽のことしか考えられないんだよ」
(翔陽は両手で耳を塞ごうとするが、声は心に直接入り込んでくるように離れない。涙は止まらず、呼吸も苦しい)
🏐日向(心の声)
「……怖い……でも……この二人の言葉、嘘じゃないって知ってる……。俺を本気で必要としてくれるのは……この二人だけなんじゃないかって……」
(揺れる心を抱えながら、翔陽はゆっくり立ち上がり、震える手で個室の鍵に触れる。カチリ――と音が響き、静かにドアが開いた)
(外には、必死な目で翔陽を待つ佐久早と古森の姿があった。二人の瞳に宿る執着と安堵が、翔陽の胸を強く締めつける)
佐久早(即座に翔陽を抱き寄せ、低い声で)
「……やっぱり、ここにいたな。逃げても無駄なんだよ、翔陽」
(その腕は強すぎるほど力強く、抵抗できない。けれど、翔陽の体は震えながらも拒めなかった)
古森(反対側から回り込み、翔陽の腰に腕を回して)
「翔陽……もう離れないで。俺たちと一緒にいてよ……お願いだよ」
(翔陽は両側から抱きしめられ、逃げ場を完全に塞がれる。胸が詰まりそうなのに、どこか懐かしくて安心する自分がいる)
🏐日向(心の声)
「……あぁ……やっぱり……俺、弱いな……。こんなふうに抱きしめられたら……離れられない……」
(佐久早の手は腰に、古森の手は背中に。それぞれ違う強さで、自分を繋ぎ止めてくる。苦しいのに、涙がまた零れてしまう)
🏐日向(小さな声で)
「……俺……どうしたらいいんだ……」
佐久早(耳元で囁くように)
「お前はただ、俺たちの傍にいればいいんだ」
古森(震えながらも必死に)
「翔陽……大好きだよ……お願い、俺らを見捨てないで」
(両側からの抱擁に、翔陽の心は完全に揺さぶられていく。自由になりたいと願う自分と、必要とされることに縋ってしまう自分。その矛盾に気づきながらも、体は二人の腕を振りほどけない)
🏐日向(心の声)
「……俺、本当は……この二人をまだ、切り離せてないんだ……」
(トイレの薄暗い空間で、三人の影がひとつに重なる。翔陽の涙は止まらないまま、二人の執着に再び絡め取られていった――)
佐久早(腕に力を込め、低くも優しい声で)
「翔陽……お前は俺たちと一緒にいれば、それでいいんだ。辛い時は泣け。逃げたくなったら逃げろ。でも、最後は絶対に俺らの所に戻ってこい」
(その言葉は強引でありながら、甘く優しい響きを持っていて、翔陽の心を深く揺らす。強さで縛るのではなく、愛情で絡め取られる感覚)
古森(翔陽の頬に手を添えて、涙をぬぐうように)
「翔陽……俺はずっとお前を見てきた。笑う時も、必死に頑張る時も、泣く時も……全部が大切なんだ。俺の生きる理由は、翔陽がそこにいること。それだけでいい」
(古森の声は震えていて、必死さが伝わる。翔陽の胸の奥に突き刺さり、心が苦しくなる)
🏐日向(心の声)
「……俺なんかのために……ここまで言ってくれるの……。自由になりたいって思ってたはずなのに……こんなの、ズルいよ……」
佐久早(顔を近づけて囁くように)
「翔陽……俺らと一緒にいろ。お前は一人で泣く必要なんてねぇ。俺が全部受け止める。……だから、もう逃げるな」
古森(柔らかく微笑みながら、涙混じりの声で)
「翔陽……お願い。一緒に居て。俺はお前がいないと、本当に壊れるんだ」
(両側から、甘く優しい声が重なって翔陽を包み込む。その声は甘い毒のようで、逃げたいはずなのに体の力が抜けてしまう。心が少しずつ、彼らの温もりに溶かされていく)
🏐日向(心の声)
「……侑の隣にいると安心できる。でも……佐久早と古森の腕の中は……こんなにも温かくて、俺を必要としてくれる……。俺、どうしてこんなに弱いんだ……」
(翔陽はまた一粒、涙をこぼした。だがその涙は拒絶ではなく、どこか安堵に近いものだった。二人の言葉に揺さぶられ、心は再び彼らのもとへ引き寄せられていく――)
(翔陽は二人の腕の中で、涙を流しながら小さく震えていた。佐久早の低い声、古森の優しい声――両方が耳から心の奥まで響いてきて、逃げ道なんてもうどこにもなかった)
🏐日向(震える声で)
「……俺……っ……もう……一人で泣くの、やだ……。俺……二人と……一緒に居る……」
(その言葉を口にした瞬間、佐久早の腕がさらに強く翔陽を抱き締めた。まるで長い間待ち続けた答えをようやく手に入れたかのように、全身から熱が伝わってくる)
佐久早(低い声で囁きながら、翔陽を見下ろして)
「……ようやく言ったな。俺から逃げるなんて、無理なんだよ……翔陽」
(そのまま顔を近づけ、ためらいもなく翔陽の唇を奪った。強く、深く、息を奪うようなキス。佐久早の唇は熱く、支配するように重なり、翔陽の体は抵抗できずに小さく震え続けた)
🏐日向(心の声)
「……苦しい……でも……懐かしい……。あの頃と同じ……いや、もっと強く……俺を離さないって、伝わってくる……」
(キスの合間に佐久早が囁く)
佐久早
「逃げても……必ず捕まえる。だから……もう二度と離れるな」
(キスが終わると同時に、古森がすぐに翔陽の頬を両手で包み込み、涙で潤んだ瞳で見つめた。その目は必死で、切なくて、翔陽の心をえぐるほどの真っ直ぐさだった)
古森(声を震わせて)
「翔陽……俺も…愛してるよ….もう、逃がさない」
(そう言って、古森も翔陽の唇にそっと触れる。佐久早の熱いキスとは違い、古森のキスは柔らかくて優しい。まるで壊れ物を扱うように慎重で、温かさが胸に沁みてくる)
🏐日向(心の声)
「……あぁ……やっぱり俺……弱い……。二人がこんなふうに俺を必要としてくれて……俺は……幸せだって思っちゃう……」
(古森は涙を拭いながら、唇を離して微笑む)
古森
「翔陽……俺、もう離さないよ。絶対に……絶対にずっと傍にいる」
(佐久早と古森、二人の異なるキスに心を揺さぶられ、翔陽は胸の奥が熱くて苦しいのに、同時に甘い安心感に包まれていく。涙は止まらないけど、もう一人じゃない――そんな錯覚さえ抱かされるほどに)
🏐日向(心の声)
「……俺はもう……この二人から逃げられない……」
(トイレという閉ざされた空間で、三人の心と体が絡み合い、翔陽は再び二人の愛に絡め取られていった――)
🏐日向(朝の合宿所の窓辺で、静かに目を覚ます)
「……昨日は……やっぱり、夢じゃなかったんだな……」
(横にはまだ二人の寝息が重なっている。佐久早は腕を伸ばして自分を抱え込み、古森は背中にそっと寄り添っている。翔陽の胸は、温かさと安心感でいっぱいだった)
🏐日向(心の声)
「……俺、本当に……二人に……必要とされてる……。逃げない……もう、どこにも行かない……」
(昨日のトイレの一件、涙、葛藤、そして二人のキス。すべてが胸に深く刻まれている。もう逃げたいとは思わない。翔陽は両手で顔を覆い、涙をそっとぬぐった)
佐久早(低い声で、まだ眠そうなまま)
「……おはよう、翔陽。よく眠れたか?」
古森(微笑みながら、柔らかく)
「翔陽……今日も一緒に練習しようね。俺たち、ずっと一緒だから」
🏐日向(心の声)
「……ずっと一緒………」
(翔陽はゆっくりと起き上がり、二人の手を握る。指先から伝わる熱さと安心感が、心に直接響いてくる)
佐久早(力強く握り返して)
「翔陽……俺はもうお前を絶対に離さない。自由とか逃げ道とか、そんなの必要ない。俺たちが一緒にいるだけで十分だ」
古森(そっと頭を翔陽の肩に寄せて)
「俺も……翔陽がいるだけで、幸せだよ。何があっても、守るから……」
🏐日向(心の声)
「……二人に必要とされる幸せ……俺、今までこんなに素直に感じたことなかった……」
(そして、翔陽は二人を見上げ、ゆっくりと笑う。緊張も、恐怖も、もうない。全てを受け入れる決意が、胸の奥から湧き上がってくる)
🏐日向
「……俺も……二人と一緒にいる。絶対、もう逃げないよ……」
(その言葉に、佐久早と古森は互いに目を見合わせて微笑む。そして、二人は同時に翔陽を抱きしめた。力強く、優しく、でも決して逃がさない。三人の心はひとつに重なり、互いの存在を確かめ合うように温かく震えた)
🏐日向(心の声)
「……もう、逃げなくていい。自由って、もしかしたら……こういうことなのかもしれない……。二人に抱かれながら、自分を丸ごと預けられること……」
(窓の外には朝日が差し込み、三人の影が合宿所の床に長く伸びる。重なり合う温もりと愛情は、どんな嵐よりも強く、翔陽を包み込んだ)
佐久早(耳元で囁く)
「翔陽……これからもずっと、俺らのそばにいてくれ」
古森(柔らかく微笑んで)
「翔陽……」
🏐日向(心の声)
「……あぁ……本当に、幸せだ……。この二人と一緒なら、どんな未来でも怖くない……」
(翔陽は深呼吸をして、二人の腕の中で穏やかに目を閉じる。過去の傷や弱さも、全て包み込まれて、消えていくようだった。三人の心は完全に繋がり、ユース合宿の朝は、静かで幸福に満ちていた――)
【数日後、稲荷崎高校・放課後 教室】
🏐日向(深呼吸して、机に肘をつきながら)
「……みんな、ちょっと話がある」
治(目を輝かせて)
「翔陽?どうしたん?ユース合宿、どうやったん?」
🏐日向(少し笑みを浮かべながらも、真剣な表情)
「合宿は……すごく刺激的だった。だけど……その前に、俺が東京で会った二人のこと、話さなきゃいけない」
角名(眉をひそめて)
「二人……って、もしかして」
🏐日向(静かに言葉を選びながら)
「佐久早と古森……元カレの二人」
治(驚きの声で)
「えっ……翔陽、お前……あの二人と……」
🏐日向(頷きながら、目を伏せる)
「……そう。東京で再会して、最初は逃げたくてたまらなかった。でも、佐久早と古森は俺を束縛しながらも、ずっと俺を必要としてくれた。それで、俺……受け入れてしまった」
侑(少し複雑な表情で)
「……そっか……翔陽が幸せなら……でも、ちょっと嫉妬するな、俺」
🏐日向(小さく笑って)
「侑……俺はお前たちと一緒にいる時間も大事だ。だから、二人とのことは理解してほしい。でも……俺はもう、逃げない。二人とちゃんと向き合う」
角名(腕組みしながら、少し戸惑い気味に)
「……そっか……翔陽がそう決めたなら、俺は文句言わん。ただ……侑や治みたいに、心配はするけどな」
治(少し笑顔で)
「まぁ、翔陽が幸せなら俺らも嬉しいよ。けど……俺らの前では、あんまり甘やかされすぎんなよ?」
🏐日向(にっこり微笑んで)
「わかった。俺、ちゃんとバランス考える」
(教室の空気は少し和やかになり、三人も翔陽の決意を受け入れる。翔陽は深く息をつき、心の中で東京での出来事を整理しながら、これからの生活を前向きに考え始める)
🏐日向(心の声)
「……佐久早と古森のこと、逃げずに向き合う。侑や角名、治のことも大事にする。俺、もう誰からも逃げない……」
コメント
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うわぁ…めっちゃ感動的です! もう…涙出てきそう😭 佐久早はすんごい束縛だけど古森はちょっと優しかった?犬系彼氏みたいな感じですね(?) それはそれでめちゃくちゃいいです✨️アツムルートも楽しみにしてます!