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朝、教室に入った瞬間だった。
和香那が駆け寄ってきて、私の顔を覗き込んだ。
「翔音!どうしたの!?目の下のクマすごいよ?」
和香那はメイクポーチからコンシーラーを出した。
「ちょっと、じっとしていて」
そう言って、薬指で私の目の下に薄く伸ばしてくれた。
「ありがとう……もぉ、最悪なの。家が殺伐としちゃっててさー」
「えー!?翔音の家って、みんな仲良しだったじゃん」
「お母さんがヒステリー起こしてて……」
父の不倫なんてみっともなくて、親友にも話したくなかった。
「翔音ママ、いつもニコニコしてたのにね……あ、あれか!お兄さんの受験でピリピリしてるのね!」
「……あ、まぁ。そんなとこ。本当最近落ち着かなくて、夜も寝れないの」
この頃私は三時間程度しか睡眠がとれなかった。
大好きだった父が、母じゃない女に男の顔を向けている。
そんな想像ばかりしてしまう。
それは時々、夢にまで出てきた。
とても気持ち悪くて、自分が父の血を分けた娘でいることすら、嫌悪感でいっぱいだった。
「寝れないなんて、大変だね……今度泊まりにいこうか?」
「ダメダメ。お母さんのピリピリヤバイから、和香那にも八つ当たりなんてしたら堪らないもの」
「そっか……翔音、話なら聞くからね。大丈夫だよ受験なんてすぐ終わるから!」
――親友っていいな。
この時、私は心から和香那に感謝していた。