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出久推し
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午後の授業。
出久は、ものすごく眠そうだった。
「……ねむい」
昼休み、勝己に言われた通りになった。
「だから言ったのに……」
机に突っ伏すわけにもいかず、出久は必死に目を開ける。
「寝ない……寝ないから……」
しかし五分後。
「緑谷さん?」
「…………」
「緑谷さん?」
「……ん?」
「寝てた?」
「寝てないよ」
「いや今、完全に寝てたよ」
「……ちょっとだけ目を閉じてただけ」
友達は笑った。
「爆豪くんに言われるよ?」
「言わないで!」
「ふふ」
――そして放課後。
出久が教室を出ると。
「遅ぇ」
校門の近くに、勝己がいた。
「かっちゃん!」
「帰るぞ」
「うん!」
出久が小走りで近寄る。
しかし勝己は、出久の顔を見るなり眉をひそめた。
「……お前」
「なに?」
「寝たな」
「えっ」
「顔見りゃ分かる」
「寝てないよ!」
「嘘つけ」
「ちょっとしか寝てない!」
「寝てんじゃねぇか」
「……」
「……授業中か?」
「……うん」
「何分」
「分かんない」
「はぁ……」
勝己は深いため息をついた。
「だから昼飯食えっつっただろ」
「食べたよ!」
「足りてねぇ」
「かっちゃんがパンくれたじゃん」
「それでも寝ただろ」
「それは……」
出久が言い返せなくなる。
勝己はそんな出久を見て、ふっと笑った。
「ほら」
勝己が手を差し出す。
「鞄」
「持ってくれるの?」
「眠いんだろ」
「もう大丈夫だよ?」
「いいから」
「……ありがとう」
出久は素直に鞄を渡した。
二人で帰り始める。
しばらく歩いていると、出久がふわっとあくびをした。
「……まだ眠いじゃねぇか」
「眠くないよ」
「今あくびしただろ」
「勝手に出ただけ」
「意味分かんねぇ」
「ふふ」
「……かっちゃん」
「……なんだ」
「僕、ちょっとだけ眠いかも」
「最初からそう言え」
「でも帰れるよ?」
「ああ」
勝己は少しだけ歩く速度を落とした。
「ゆっくり帰るぞ」
「……うん」
出久は嬉しそうに頷く。
そして、少ししてから。
勝己の腕に軽く寄りかかった。
「…………」
「かっちゃん?」
「何だ」
「ちょっとだけ」
「……おう」
「ありがと」
そのまま歩く出久。
勝己は何も言わない。
言わないけれど、耳が、ほんのり赤かった。
その様子を後ろから見ていた同じ学校の生徒が、友達に小声で聞く。
「……あれって」
「うん」
「あれで付き合ってないんだよね?」
「……そうみたいだね」
「……カレカノじゃねぇか!」
その言葉だけは。
残念ながら、二人には聞こえていなかった。
コメント
3件
最後の「カレカノじゃねぇか!」に全力で同意したわ(笑)。出久がちょっとだけ眠いって認めてから自然に寄りかかるところ、勝己が耳赤くして何も言わないとこ、全部尊い。付き合ってないって設定なのにこの距離感、反則だよ…!