『ふふっ。これからよろしくね目黒』
「うん。よろしくね。阿部ちゃん。」
⚠︎病気ネタ×死ネタ注意
BLです。
暑い、夏の日。
8月が始まった今日。
俺は一人の人間と喋っていた。
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『へぇ〜なるほどね。君は死神なんだ!すごい!初めて見た!』
「うん?ちょっと待って、驚かないんですか?」
『え?』
「え?って…俺死神ですよ?」
『うん。わかってるよ。死神ね』
『えぇ….』
反応が想像以上すぎてびっくりした。
今までだったら俺が現れるとうわぁ!?とか言ってびっくりしたり、怖がったりする人とか居るのに。
全くこの人は怖がらない。むしろ会えて嬉しそうだし…
「あの…俺貴方を、殺しに来たんですよ?」
「いや、正確にはもうすぐ死ぬことを伝えに来たんで違うんですけど…」
『うん。殺しに来たんだね。へぇ。ほう。』
なんなんだこの人。
調子狂う。まじで。
「もう少しで死ぬんですよ。…怖くないんですか。」
『うーん…別に死ぬのは怖くないかも…』
「えっ」
『ん?』
「あ、いや、怖くない…んですか?」
『んー正確にはちょっと怖いけど別にそこまでかな。』
『自分の体のことは自分がよく分かってるし、病気の進行早くなってきてたの知ってるしね。そろそろだろうな〜って思ってたから。』
「…怖がらせなきゃなんだけどな…一応 」
『え、嘘、マジで?ごめんごめん
うわぁ〜怖いよ〜助けて〜』
「反応絶対嘘じゃんか…」
『あはは』
こんな事今まであったっけ?
まっじで調子狂うんだけど。
死神は魂を奪うだけじゃなく相手の負の感情を奪う事も仕事のひとつだ。
へぇーたとえばどんな?って聞いてきたから憎悪とか恨み、妬みとかあとは未練とか?って言ったらへぇーと興味あるように頷いてるからびっくりする。負の感情取らないで死んじゃったらどうなっちゃうのっていうのも聞いてきたから悪霊とか地縛霊とかになっちゃう。って言ったらおーこわぁと全く怖がってなさそうに言うからここでも調子狂う。
他にも諸々目の前にいる彼に伝えると『死神って案外いいやつなんだね。もっと怖くて仮面ライダーとかでいう悪者?悪役?的なもんだと思ってた。』って笑いながらいうからなんかもうどういう反応すればいいか全く分からない。
「悪者って…そういうことするのは悪魔とか悪霊だけ。」
『へぇーそうなんだ。以外。名前的に絶対悪いやつだと思ってた。ごめん。』
「いや、別に…」
突然謝られたから反応に困った。
ごめんなんて今まで言われたことないぞ…
そう思うのも無理ないしって言ったら優しく微笑んで優しいねって言ってきた彼の姿が異様に美しく、そして儚くて感じるのは何故だろう 。
いや、そんなことより!
「えーっと…人間さ…」
『亮平』
「え」
『亮平っていうの。阿部亮平。』
自己紹介忘れてたね。って笑いながら俺の名前を聞いてきて目黒蓮です。って言ったら名前かっこよ!目黒だって!蓮だって!ってすげぇはしゃいでて可愛らしいなって思った。
…って俺なに考えてんだ?
「あ、いや!この話じゃなくて!」
「にんげ…阿部さんが死ぬまでに貴方の心残りとかを、回収しなきゃいけなくて。」
『なるほどね〜あ、あと阿部でいいよ。さん付けだと型苦しいじゃん?』
「え?あっ、じゃあ阿部ちゃん…で。」
『うん!で心残り?』
「あっ、そう!阿部ちゃんのやりたいこととか教えて欲しい。」
『うーん…ないかも』
「え 」
『強いていうなら…世界遺産みたい!あとは気象予報士の試験の合否発表もみたいし、うなぎとか食べたい!』
「めっちゃあるじゃん笑」
『あはは、でも一番はね
青春したい…かな』
「え? 」
『こんな状態だからまともな恋愛したことなくて。誰かに恋してみたい…かな』
「…..。」
『あっ!ごめん!困らせて!この願いは別にいいから!ね!』
「あっ、うん…」
もう何言ってんの〜みたいな顔しながら下を向くから思わず笑ってしまった。笑うなーって髪をくしゃくしゃ触りながら言うからごめんごめんって言うことしかできなかった。
この人の願い全部叶えたい。
そう思った。
そのあとは阿部ちゃんについていろいろ教えてもらった。まぁ、事前に彼の事は調べていたのでほとんど知っていたけど。
・阿部亮平
・成績優秀
・家族や友人に恵まれている。
・常に笑顔。
・大学一年の時に病気が発覚。
・療養中…。
で
もうすぐ死ぬ。
「….」
なんか実感全然湧かない。
この期間。8月中には亡くなる…はずなのに、まったく亡くなる気がしない。それはやけに阿部ちゃんの受け入れが早すぎるからなのかな?
そんなことを考えているうちに気づいたら夕方になっていた。
『はぁ〜今日は楽しかった!ありがとね!目黒!』
「うん…こちらこそ。楽しかった。」
『いやー久々にこんな人と喋ったよ。笑』
「そうなの?」
『うん。基本的に見舞いくるの土日とかしかないから。平日喋るの久しぶり。基本的に先生としか話さないしね〜。』
「じゃあ、俺が話すよ。」
『え?』
「これからは俺が話し相手になるよ。阿部ちゃんの。」
「え、ほんと?」
『うん。いっぱい阿部ちゃんの話聞かせてよ。阿部ちゃんの事教えてよ。』
『…うん。ありがと…』
そう言ってすーっと涙を流すから。
『嬉しくて…ごめん。グスッ』
『ありがとう…』
「ううん。」
俺が阿部ちゃんの頬に触れて涙を拭ったらえへへって笑うから。
もう全部どうでもよかった。
ただ。阿部ちゃんの隣がただただ心地よくて離れがたかった。
『明日もきてね。』
「うん。」
『絶対だよ。』
「うん。絶対。」
『約束ね。』
「うん。」
『ふふっ。これからよろしくね。目黒。』
「うん。よろしくね。阿部ちゃん。」
夏が始まる初日。
蝉の声がやけに聴き取りやすくて。
病室に鳴り響く風鈴の音が心地よい。
窓から射す日差しの心地よい暖かさを。
噛み締め合うように笑い合った今日。
今年の夏休みの宿題は提出日ギリギリになりそうだ。
コメント
3件
うわっ!!最高じゃないですか!! あべちゃんこんな時でもにこにこできるのすごい…笑 これからめめあべはどんなことするのか、めっちゃ気になります! 続き楽しみにしてます😌
長くなってしまいました。すみません!多分明日2話投稿です。