目が覚めると先程まであった昼食は無くなっていた。
莉犬「んッ…」
莉犬「ぁ…あ…」
目覚めた時よりも少しだけ声が出るようになっていて、ほんのちょっぴりだけ嬉しかった。
机の上には看護師さんからであろう置き手紙が置いてあった。
「寝ていらしたので、また訪ねます」
いつ頃部屋を覗きに来るかは分からないが、
きっとすぐに来るのだろう。
厚焼き玉子しか食べなかったぶん、腕には
栄養剤の入った点滴が埋め込まれており、
少しの間は腕を動かせない。
まるで身動きのできない、魚のようだ。
看護師「起きられましたね」
看護師「おはようございます、笑 」
そう丁寧にお辞儀をして挨拶をしてくれた。
だから、なんとなく首を傾けて挨拶をした。
無視してるように見て欲しくなかったからだ。
看護師「ななもりさんから、」
看護師「要望を聞きましたよ」
きっとシェアハウスのことだろう。
看護師「やってみてもいいとの判断に」
看護師「なりました。」
看護師「今すぐではありませんが、」
看護師「近いうちに1度出れると思います!」
莉犬「ょかっ、た」
看護師「声少し出るようになりましたか?」
看護師「無理はしないでゆっくりですよ」
莉犬「はぃ、」
看護師「それじゃあ、点滴とりますね」
莉犬「ぉねがぃ、します、」
看護師さんは俺の腕をとって、
点滴を腕から外していく。
まるで手枷が無くなったかのように体が軽くなったやうな気がした。
看護師「あ、体調いかがですか?」
莉犬「へーきです、」
看護師「わかりました!」
看護師「お熱だけ測ってもいいですか?」
莉犬「は、ぃ、」
冷たい体温計を脇に挟む。
部屋の中は少しの間、静寂なムードになっていた。
看護師「少し下がってきましたね」
看護師「良かったです、笑」
看護師「何かあったらそこのナースコールで」
看護師「お願いします!」
看護師「それじゃ失礼します…」
残したご飯については何も追求しては来なかった。
こちらとしてはとても有難いものだけれども、
何も聞かれないとなんともむず痒いものである。
この部屋には特に自分の暇を持て余す道具はない。
強いていえば、最近許可が降りた紙とペンが置いてあるぐらいだ。
特に何も考えずに紙を机の上に置いて、ペンをしっかりと握った。
歩く体力はないが、まだ鉛筆を持つぐらいの
筋力は残っているようだった。
しばらく何をしようか考え込んでいると、
ふと頭の中で点と点が繋がったものがあった。
それは、これからしたいことを書き出すことだ。
俺は昔から遺書を書くことを定期的に行ってきてはいるが、
自分のやりたいことリストは今まででを通してもしたことがない。
だから、なんとなくこれからの自分を思い描いて書いてみることにした。
まずは、そうだな。
皆に会ってお話したいな。
皆でゲームしたり食べに行きたいな。
脱出ゲームしに行きたいな。
旅行に行きたいな。
歌を歌いたいな。
大好きなリスナーさんに会いたいな。
後輩たちの相談も沢山聞きたいな。
色んな楽しいイベントも考えたいな。
つぅちゃん達をドッグランに連れて
行ってあげたいな。
気がつくと何十個にも渡る自分のやりたいことリストを書いていた。
どれも見返せば、メンバーや後輩、そして大好きなリスナーさんが多く関わっているように見えた。
自分にとってそのくらいリスナーさんが大事なんだって、再確認したし、
メンバーのことも大好きなんだなって、
改めてよく思った。
頭を良く動かしたからだろうか、
なんだか疲れて頭がぼーっとしていた。
看護師「こんばんは、夕飯持ってきましたよ」
いつの間にかに目の前には看護師さんがいて、
自分が寝ていたのか。
それとも、ぼーっとしていただけなのか、
何も分からなかった。
看護師「やりたいことリストですか?」
看護師さんは、俺の机の上にある紙を指さしながら聞いてきた。
莉犬「なんと、なく、なんですけど、」
看護師「そうなんですね」
看護師「ご飯食べれそうですか?」
莉犬「はぃ、」
看護師「良かったです」
看護師「無理そうなら残して大丈夫ですよ」
看護師「それでは、また! 」
そう言って次の患者さんの方へ向かっていった。
お昼ご飯にはなかった食欲が、
少しずつ回復してきたのか、
いつの間にかにお腹が空っぽになっていた。
今日食べれなかったぶんなのか、
いつもは食べれないご飯を
今日は簡単にたいらげてしまった。
看護師「おぉ、全部食べられたんですね」
看護師「良かったです、笑」
看護師「あ、さっきのシェアハウスのこと」
看護師「なんですけど」
看護師「沢山話した上で、明日許可が」
看護師「おりました!」
看護師「莉犬さん、どうされますか?」
そんなの答えるのは一択だけ。
莉犬「外出します」
看護師「わかりました!」
看護師「明日楽しみですね!」
莉犬「はい!」
やって決まったシェアハウス。
なー君が言ってくれなかったら、
きっと明日も明後日もこの牢獄のような場所からは出られなかった。
明日は最高の一日になるだろう。
明日何しようかな。
何食べようかな。
何話そうかな。
そんなことを考えていると、いつの間にかに眠りについていた。
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