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#恋愛
ばたっちゅ
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竜馬は、一郎に日中の二人の様子を細かく報告した、そしてジェニが騒いで学校に竜馬が呼び出しを食らったこと、豊が牛乳アレルギーで倒れて竜馬が病院におんぶして連れて行ったことを話した
あまりにも沢山の細かな事が思い出されて、つい話が長くなってしまった、今や唯一竜馬が話しをする大人は、一郎だけになっていた
一郎は、豊を助けた竜馬に感激して丁寧に礼を言ってくれ、感謝してもしきれないとまで言ってくれた、竜馬は一郎の役に立てたことが嬉しくて、二人の事をそれは細かく話した
一郎は目尻にしわを寄せて、じっと耳を傾けており、ジェニが豊のゲーム機を蹴飛ばして、豊の友達や周りを壮絶とさせたくだりでは、大きな声で笑い出した
「一郎さんはわかってないんです!もし、これがあの子の将来を予感させる兆候だとしたら、彼女が思春期を迎えた頃には彼女の強情さはどうなることやら・・・」
クスクス笑いながら一郎が言う
「妻は子供達に向き合うには、二つのルールがあると考えていたな、一つ目はコントロールしようとすればするほど、子供達は反抗する、二つ目はあの子達が何か買ってもらいたいと思っているうちは、なんとか僕達の言う事を聞くって」
竜馬も笑いながら言った
「そのルールをよく覚えておきますね、奥さんは良いお母さんだったんでしょうね」
「あらゆる点でね」
一郎はハッキリ言った
「不当な扱いを受けても、文句ひとつ言わなかった・・・たいていの人間は不満ばかりを述べ立てるが、妻は幸せになる方法を知っていた」
でもこんな大邸宅と、十分なお金があれば、ほとんどの人が幸せになれるのでは?と竜馬は言いそうになったが、咄嗟に口を閉じた、竜馬が言わなくても一郎は竜馬の心を読み取ったようだ、大きくため息をつく
「妻はもうダメだよ・・・あと持って一か月だろう・・・こればっかりは金ではどうしようも出来ないよ・・・」
竜馬はハッとして何も言えなかった・・・以前に豊だけが一郎に連れられて病院に見舞いに行って帰って来た時、豊は一日中部屋から出てこなかった・・・それでなんとなく竜馬も察しがついていた
しかし・・・竜馬の両親みたいに突然いなくなったわけではなかったので、豊にはキチンと母親とお別れを言える気持ちの整理がつく時間が与えられ、そして少しずつだが彼は立ち直っている・・・
しかし・・・ジェニは真実を知った時はどうなるんだろう?そして竜馬自身も、今だに父のような存在を必要としていた
「もうすぐ我が家は悲しみに覆われることになる・・・特に子供達にはね、私はもう覚悟が出来た、そんな所を君には見せたくない、君は十分なほどの試練に会って来た、もう来週アメリカに行く準備はできているかい?」
「ハイ・・・」
準備と言っても、少しの着替えがあるだけで、あとは本当に竜馬には何も残っていなかった、竜馬はここに留まりたいとは言いだせかった、出来るならこの家にとどまって、同じ悲しみに暮れるあの二人の支えになりたかった
しかし・・・そう言った所で、自分にはここに居場所がないのだ
「寂しくなるね、君もいなくなると」
「ハイ・・・」
父と母がいた頃はアメリカ留学はとても魅力的に見えた、帰ってこれるところがあったからだ、しかし今では行きたくなかった、でもそんなこと言えなかった、一郎が竜馬に微笑んで言った
「アメリカで学び、良い大人として成功することを願っているよ、むしろ成功するまで帰ってこない気概で行っておいで」
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夏休みもあと数日で終わろうかという時・・・
ジェニが質の悪いインフルエンザウイルスにかかった、ジェニは高熱と空咳が続いて、体にこたえているらしく、病院の薬はあまり効果はないようだった
ある朝、ジェニの部屋から犬の遠吠えのような声がして、竜馬は目を覚ました、ジェニはインフルエンザウィルスが喉に浸透して腫れあがり、ぜいぜい苦しそうに喘いでいた、すぐさま一郎が救急車を呼び、竜馬はこれまで経験したことがないほどの恐怖を味わった
彼女にもしものことがあったらどうしよう・・・それだけが気がかりだった、やがて病院で点滴と適切な処置を受けて、タクシーで一郎と帰って来たジェニは、容体が落ち着いていたので、竜馬はひと安心した
ジェニは疲れ切って、ぐっすり眠っていたので、お別れの挨拶どころではなかった、お手伝いさんがジェニの世話をしだすと、一郎が竜馬にむかって言った
「さぁ、遅くなってしまった、竜馬君、空港に送って行こう、飛行機の時間に間に合わなくなる」
「ハイ・・・」
まさかこんな形で彼女とお別れするなんて思ってもみなかった、しかし時刻は刻一刻と流れている・・・竜馬は17時発のアメリカは「イリノイ大学」がある「ウィラード空港」までの、長いフライトに向かわなければいけなかった
何度か乗り継ぎもあるので、関空発が遅れるとすべての時刻が合わなくなる、荷造りは簡単だった、この家にやって来た時と同じ、小さなボストンバッグを持って、玄関で靴を履いていたら、いつの間にか豊が隣にいた
「行くなよ・・・」
豊の目には涙が浮かんでいた
「おいで、豊」
竜馬は豊の腕を持って自分に引き寄せた、物凄い力で豊は竜馬の首に抱き着いた、そしてぽっちゃりした体を震わせて泣いた、竜馬はその熱い身体をしっかり抱きしめた
「君は・・・神崎家の長男だ、しっかり一郎さんを支えて、この家を守っていけ、妹に優しくしてやるんだよ・・・」
「絶対戻って来いよ・・・」
その約束には何とも言えなかった、この子に何も約束してやれない自分が悔しかった
「ああっ!くそっ、くそっ、どいつもこいつも何でいなくなるんだよっ」
豊が吐き捨てるように竜馬の胸を叩いて言った、まったく同感だったが、やはり何も言えなかった・・・お別れも言えない・・・何もしてやれない、逃げるようにアメリカに発つ自分が嫌だった
しかし、引き裂かれる無力な少年達は、自分の力で何とかなるものは・・・今は何も持っていなかった
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【関西空港】
「乗り継ぎ便の予約表とシートマップは持ったかい?」
出国検査が終わった竜馬に一郎が言った
「ハイ・・・色々ありがとうございました」
「ウィラード空港に着いたら、カルロスという人が君を待っているよ、アメリカ人でこのホームスティを受け入れる時期じゃない時に、気持ちよく対応してくれた、君のホストファミリーだ、彼は独身だが、異国の優秀な若者を何人も、今まで面倒を見て来た人だよ、良くしてもらいなさい」
「ハイ」
「それから、毎月の生活費は、カルロスの口座に振り込むから、彼からもらうといいよ、足りなかったら私に電話しておいで」
「そんなっ・・・充分良くしてもらっています・・・これ以上なんて」
竜馬の胸に、罪悪感と切なさが代わる代わる波のように押し寄せて来た
「君は何も考えずに、勉強を頑張って、良い青春を送りなさい」
「ハイ」
涙がこぼれないように宙を見上げた、それで別れの挨拶は、なんとか泣かずに済んだ
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飛行機の機内は、賑わい、外は夕焼けが綺麗だった、竜馬の周りの搭乗客は、ほとんどがラスヴェガス行きの便に乗り継ぐ客らしく、華やかな街へ向かう期待に満ちた、観光客の団体様だらけだった
竜馬の前には見るからに女同士の旅を楽しもうと、OL風の女性三人が早くも缶ビールを空けて、内輪しか分からない冗談を言い合って盛り上がっている
通路を挟んで、左のシートには星型のサングラスをかけた小さな男の子を挟んで、両親が半袖のポロシャツに、半パンで座っている、いかにも観光で出向くらしく、その子のお父さんが手にしている雑誌には「ルーレットギャンブルの基本」と書かれていた
誰もが旅の計画をちゃんと持っていて、誰もがキチンと戻ってくる予定で、この旅が良いものになると期待するものがあるようだ
竜馬はそんな観光客を、なるべく見ないようにして、胸に居座った寂しさに負けまいとした
飛行機が離陸すると、これで自分の隣に誰も乗ってこないと思うとホッとして、左シートに荷物を置いた、窓の日除けを全開に上げて、額を冷たいガラスにくっつけた
ブル・・・「寒っ・・・」
冷房の吹き出し口が、竜馬の体を直撃する、ボストンバッグから黒のパーカーを一枚取り出して羽織る、これと竜馬の衣装は残り白のTシャツ2枚と1本のジーンズだけだった
―やっぱりジェニちゃんにあの赤と黒のチェックのシャツを返してもらっておけばよかった・・・―
。 .:・.。.
しかし、彼女があの竜馬のシャツをとても気に入っていたので、ついつい返して欲しいと言えなくなっていた
飛行機は揺れながら、太平洋の空へとぐんぐん高度を上げていく・・・
もう辺りは薄暗くなっていて、太平洋も暗くて・・・そんなに見えなかった、もうよほどのことが無い限り、日本へは帰って来れないような気がしていた
これから一人で見知らぬ地で生きていくのだ・・・想像をはるかに超える辛さがあった、このままどこか暗い片隅に座り込み、誰とも話をせず何も考えたくなかった・・・
機内の光が反射して窓には竜馬の顔がハッキリ映った・・・窓を見ているフリをしていたら泣いているのが誰にもわからない、竜馬はひたすら暗い窓を見つめた、いくら我慢しても目に熱いモノがこみ上げ、何度も瞼をパチパチさせた
―さよならプリンセス・・・―
。 .:・.。. .。.:・
竜馬は心の中で何度もそう言った
。 .:・.。. .
【アメリカウィラード空港】
磨き上げられた空港のタイルに、ウエスタンブーツの踵が擦れる音が辺りに響いた・・・
その男はガッシリとした体格だが、身長はさほど高くはなく、ぶよぶよの体が長いこと自堕落な生活を送って来たのを想像させる
大きな牛のバックルのベルトに突き出たお腹が乗っている、肌は滑らかで、顔立ちは整っているけど、いかにも酒ヤケで赤らんだ顔と皮膚が垂れていて、若い頃は男前だっただろうにと、いささか残念な気持ちにさせる顔だった
その男は深くかぶっていたカウボーイハットの鍔をクイッと上げて、搭乗電光掲示板を見上げた
ハッハッハッ「さぁ~て!次の便に乗っているのかい?そのクソ「Japanese Boy」は?」
その男が持っているボードには
『Welcome to Ryoma 』
と書かれていた
コメント
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うわあ…もう、胸がぎゅっとなる回でした。幼い豊が「行くなよ」って泣きながら抱きつくところ、めちゃくちゃ堪えた…竜馬が何も約束してやれない悔しさも、痛いほど伝わってきた。ジェニにシャツを返してもらえなかったエピソードも、小さな後悔がじわじわ効く。最後の「さよならプリンセス」で完全にやられた。新天地での出会いがどうなるのか、続きが気になって仕方ないです!