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🫧想美🎐🍏
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#だけなんだ
だけなんだ
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だけなんだ
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深夜一時。
雨は止んでいた。
助手席で、鈴木は黙って外を見ていた。
運搬車の窓から見える街は、濡れたネオンで滲んでいる。
後部座席には、
拳銃。
薬。
偽造パスポート。
雑に積まれた犯罪。
霧矢は片手でハンドルを握りながら、鼻歌を歌っていた。
「……お前」
「んー?」
「なんで平気なんだ」
霧矢が瞬きをする。
「何が?」
「死体とか」
赤信号になり 車が止まる。
霧矢は少し考えるみたいに首を傾げた。
「別に怖くないから?」
「……」
「アンタって、結構そういうの気にするタイプなんだね」
鈴木は眉を寄せる。
「普通だろ」
「そう?」
霧矢は笑う。
「オレ、よくわかんないんだよね」
ネオンが、金髪を赤く染める。
「痛いとか苦しいとかも、あんまり」
その声は軽い。
冗談みたいだった。
でも。
鈴木は何故か笑えなかった。
「……意味わかんない」
「よく言われる」
青信号になって 車が動き出す。
霧矢は前を向いたまま続けた。
「だから昔、気味悪がられてた」
「昔?」
「親とか、周りとか」
まるで他人事みたいな口調だった。
「泣いてる人見ても何も思わないし、怪我しても平気だし」
「……」
「そのせいで施設入れられて」
霧矢は小さく笑う。
「あそこでも嫌われた」
鈴木は横顔を見る。
霧矢は本当に平然としていた。
傷ついた顔ひとつしない。
まるで。
“感情として処理されていない”みたいだった。
「そんで追い出されて、フラフラしてたとこ拾ってくれたのが合六サン」
「……」
「初めてだったなぁ」
霧矢は笑う。
「気味悪がられなかったの」
車内が静かになる。
エンジン音だけが響いていた。
鈴木はぼそりと聞く。
「合六って何者なんだ」
「組織のトップ」
「前に一回見たでしょ?」
「あれだけじゃわかんねぇよ」
「あは」
霧矢は楽しそうに笑った。
「でも、まぁ」
ハンドルを切る。
車が地下駐車場へ入っていく。
「この街で一番怖い人」
ーーーーーーーー
高級そうなレストランに着いた。
賑やかに会話している人達を横目に霧矢は、奥まで歩いていく。
ふわふわした足取りで。
鈴木は霧矢の後ろを歩いていた。
途中ですれ違う男たちは、皆霧矢を見ると黙って道を空ける。
それを見て、鈴木は違和感を覚えた。
霧矢は軽薄だ。
ヘラヘラ笑っている。
なのに。
誰も逆らわない。
まるで、“何をするかわからないもの”を恐れているみたいだった。
「霧矢さん、こっちですよね?」
奥のスーツを着た男が重い扉を開けながら言った。
「そそ、ありがとね」
霧矢にそう言われた男は少し嬉しそうにした。
まぁ確かにアイツ顔だけは良いし、
至近距離でふわっとした笑顔で褒められたらそうなるのもおかしくないだろう。
霧矢と鈴木は扉に入っていった。
扉の中は廊下が少し続いており、奥にはまた扉があった。
「直斗」
低い声。
扉の奥から、男が現れる。
合六だった。
その人が現れた瞬間、空気そのものが重くなる。
霧矢がすぐに頭を下げた。
「合六サン」
鈴木はそれを見て少し驚く。
霧矢が、こんな風に従順になる相手は初めてだった。
合六は霧矢を見る。
「仕事は」
「問題ないッス」
「監察は」
「処理済みッス」
淡々とした会話。
だが、“処理”という言葉に鈴木の眉が動く。
合六は小さく頷いた。
「ご苦労」
その瞬間。
霧矢が少しだけ嬉しそうに笑った。
鈴木は息を呑む。
嬉しそうに笑う霧矢の姿はまるで。
褒められた子供だった。
合六の視線が鈴木へ向く。
「慣れたか?」
「……慣れてないです」
「そうか」
合六はゆっくり近づいてくる。
足音は静かなのに、妙な圧があった。
「復讐は楽しいか?」
鈴木の表情が止まる。
合六は笑った。
「そう睨むな」
「……」
「人間、何か理由がなければ壊れたまま生きていけない」
静かな声。
優しいわけでもない。
だが不思議と耳に残る。
「お前にとって、それが復讐なんだろう?」
鈴木は答えない。
合六は続ける。
「なら最後までやれ」
その言葉に。
鈴木の奥が微かに揺れた。
背中越しに、霧矢が合六を見ている。
その目は、信仰に近かった。
「直斗」
「はい」
「しばらく鈴木を使え」
「了解ッス」
「冬橋にも伝えておけ」
「はーい」
合六は踵を返す。
そのまま扉の奥へ消えていった。
鈴木はようやく息を吐く。
「……なんなんだよ、あいつ」
霧矢は少しだけ笑った。
「神様みたいな人」
冗談みたいな口調だった。
でも。
その目だけは、一切笑っていなかった。
ーーーーーーーー
帰り道。
霧矢は自販機で缶コーヒーを二本買った。
一本を鈴木へ投げる。
鈴木は無言で受け取った。
「ねぇ鈴木クン」
「……何」
「合六サン、アンタのこと気に入ったっぽい」
「嬉しくねぇよ」
「あは」
霧矢はプルタブを開ける。
「でもさ」
夜風が金髪を揺らした。
「合六サンに拾われると、人生変わるよ」
鈴木は缶を握る。
冷たい。
「お前みたいになるってことか」
霧矢は少しだけ黙った。
それから。
「どうだろ」
小さく笑う。
「でも、少なくとも死ぬよりはマシだった」
ほんの少しだけ。
その声は静かだった。
コメント
1件
第4話、読み終わったよ〜!!😭💕 霧矢くんの“怖くない”“よくわかんない”って軽く言っちゃう感じ、逆に胸にきた…。あの薄ら寒い平然さ、実は子供の頃に感情ごと切り離されてしまったのかなって思うと切なすぎる。でも合六さんの前でだけ見せる“褒められた顔”に、彼の“たったひとつの居場所”が透けて見えた気がした。鈴木くんも無意識に霧矢のこと気にし始めてて、このふたりの距離、すごく気になるよ〜!!次の話も絶対読むね🌸