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翔太 side
夢の中でも亮平はいつも泣いている。守ってあげたいのに涙を拭いてあげたいのに、手を伸ばしても届かないところにいて、追いかけても縮まらないその距離は今の俺たちを現しているようだった。目を覚ますと一番最初に飛び込んできた人は亮平じゃなかった。
心配そうに覗き込んだ男は、俺の頭を優しく撫でるとキスしようと顔を近づけてきて、思わず顔を背けた。
蓮 🖤『翔太…具合はどう大丈夫?』
そんな俺に動じず体調を気に掛ける蓮の感情は、笑顔に隠れて読み解くことができない。
〝ここ何処だっけ?亮平は?お風呂?〟 蓮はバツの悪そうな顔をすると〝お腹空かない?ご飯食べよう〟そう言って俺の手を引いてリビングに向かった。
〝ねぇ亮平は?〟手首に痛みが走るほどに硬く握られると蓮は怖い顔していて〝何でそんなこと聞くの?今日からココだから俺の家ね分かった?〟有無を言わせぬその表情は少し恐怖を感じた。
テーブルに置かれたのは出前のハンバーグ弁当だった。
翔太💙『一緒に作らなかった?』
蓮 🖤『覚えてるの?』
翔太💙『覚えてちゃ悪い?…忘れたままの方が都合が良いみたいだね』
ご飯を口に運ぶ俺に〝どう言う意味?〟と聞く蓮の問いに答えるつもりはない。ここに居る理由も、亮平が居ない理由も、忘れて欲しい理由も俺には何も答えないんだから・・・
亮平side
大介🩷『なんか思い出の場所とかさぁないわけ?連れてったら記憶戻る的な』
〝ない〟素っ気なく佐久間に答える。
翔太と付き合ってから2人きりで出かけた場所なんてせいぜい買い物くらいで甘々なデートなんてする時間なんて無かった。2人で食卓を囲んだ事だって数えるほどしかまだ無い。
大介🩷『お前ら本当に付き合ってたのかよ』
ご尤もだ。2人が一緒に暮らしていた事実がなければ今、何も証明する事が出来ない程、2人の思い出は無かった。言葉でたくさんの愛を語り、身体を重ね合わせても2人で過ごした時間は短かく翔太の心は満たされていただろうかと寂しい思いをさせていなかっただろうかと今更ながら後悔した。
大介🩷『泣くなよ?ウザいぞ今にも泣き出しそうな顔をしてる』
いちいちムカつく奴だ。何でこんな奴好きになったんだろう。〝あんたモテないでしょ〟佐久間は腹を抱えて笑うと〝亮平くんにもわからない事あるんだね?意外とモテるのよ?〟なんて佐久間にしては面白い冗談。
亮平💚『思うのは自由だものね』
大介🩷『ふん嫌な奴…まぁ翔太程ではないけどそこそこモテますよ』
〝あっそ俺達両想いみたい〟また腹を抱えて笑ってる。コイツと居ると深刻な事もそうは思えなくなるから不思議だ。
翔太との思い出の品とか?料理もしないから思い出の味もないし・・・
亮平💚『あっTシャツは?沖縄行く時に寂しいからって俺のTシャツ置いて行ったんだよ?どう?』
大介🩷『弱いわぁ〜エピソード弱っ!まぁ試してみる価値はあるかもね』
ほんとムカつく・・・
亮平💚『あっ!そうだ待ってて』
自分の寝室の机の引き出しから大事なノートを取り出す。翔太への想いが詰まったノート。翔太の想いもちょっとだけど…あれ?
引き出しの奥に追いやられて窮屈そうにしている真新しいノートが一冊出てきて、つけられたタイトルに首を傾げる。
亮平💚『佐久間、ちょっとこれ見てくれない?この言葉に何か見覚えあったりする?』
リビングに戻り佐久間に、新しいノートを見せた。
大介🩷『何?翔太の字だね。俺には分かんねぇな』
亮平💚『役立たず!』
〝お前いい加減にしろよ〟とか言ってるけど全然怖くない。
大介🩷『なにエモいことやってんの亮平く〜ん』
佐久間は俺が書いたもう一冊のノートを勝手に読んでニヤニヤしている〝何これソロ曲の元になってんの?〟いくら翔太の記憶を戻す為と言っても、自分の目の前で、翔太への想いを佐久間に読まれるなんて恥ずかしくて顔が熱くなる。しかも朗読劇のように抑揚を付けて読み上げ出した。
亮平💚『調子に乗るのもいい加減にしろよ』
〝怖っ〟とか言ってるけど辞める気はないようなのでとりあえず鳩尾に一発入れる〝ウッ〟とか言ってるけど、こんな状況でなければ、こんなもんじゃ済まないんだから!
大介🩷『ソロ曲聴かせてみるって言うのは?』
亮平💚『佐久間にしてはいい案だ!試す価値はある。他には?』
〝少しはお前も考えろよ〟そりゃそうだ….
手元にあるノートの 1ページ目を開けてみた。
🗒️新しくノートを買いました。2人の記録はこっちに書いていこう?このタイトルどうかな?まだ答えが見つかってないけど、俺が大事にしている言葉なんだ。
きっとこの答えが分かったら、俺は胸を張って亮平に〝愛してる〟が言えると思うんだ。亮平、僕と一緒にホンモノの愛を探してくれませんか?
書かれていた本のタイトルは
🗒️(仮)好きの向こう側
薄く鉛筆で書かれたそのタイトルはお世辞にも綺麗な字とは言えない。愛着のある丸っこい可愛らしい字は翔太が書いた文字で間違いなかった。
翔太は〝大好き〟はたくさん伝えても一度だって〝愛してる〟は言ってくれなかった。
一度の裏切りのせいで俺の最愛の人は苦しい記憶の中にひとりぼっちだ。
涼太の話では、蓮への想いがあまりにも重く束縛をした結果別れたと聞かされていた。翔太は五年前愛してる人から愛を否定されたままの苦しい記憶の中に留まったままなんだろうか・・・
ノートが涙で霞み愛する人の字が見えないほど泣いても、もう俺の涙を拭ってくれる人は居ない。
自分で涙を拭いノートを閉じると頰をパチンと叩いた。
大介🩷『おっ腹括った見てえだな?』
亮平💚『うん…ありがとう。もう少しだけ俺に力貸してよ?元カレさん』
大介🩷『焼肉奢れよ…翔太との約束もまだだけどな…2人分まとめてやるからしっかりしろ亮平!』
佐久間と2人夜半過ぎまで作戦会議は続いた。今は忙しく前向きなことを語り合いながら、齷齪してる方が気が紛れた。翔太が今頃…なんて余計な事考えずに済んだ。
佐久間が帰った後は嫌でも翔太の事が気掛かりだった。〝後もう少しで思い出せそうなんだ〟あの時翔太が放った言葉が心をキュッと締め付けた。
〝亮平に会いたいんだ〟そう言った翔太の言葉が今の俺の原動力になっている。
翔太のシャツを抱きしめて眠る夜。俺が居ないあの5日間どんな気持ちで過ごしていたんだろう。短いあのノートだけでは計り知れない寂しさを抱えていただろうか?
〝自分のエゴで翔太を傷付けているんだよ〟言い放たれた蓮の言葉を俺は否定できない。今もこうして翔太の気持ちを勝手に慮っているのだから。
蓮 side
蓮 🖤『おはよう翔太』
昨夜の翔太は、俺が説明しない事にご立腹で夕食を食べると部屋に閉じこもって出てくることはなかった。朝起きるとすでに支度を済ませた翔太が、こっそりと家を出るところだった。
蓮 🖤『何してるの?どこ行くの?』
翔太💙『仕事だよ?今日から少しずつ…』
蓮 🖤『まだ休みなさい。事務所もからもまだ休むように昨日お達しがあった』
亮平の家に携帯を置いてきた翔太は、事情がわからずまた不愉快になった。今は治療に専念して万全の状態で復帰してからがいいと説得すると幾分落ち着き、ソファーに座った。
隣に腰掛け手を繋ごうと左手を伸ばすと一瞬逃げるように動かした右手を掴んで恋人繋ぎした。
〝 ねぇここに来るの亮平は何も言わなかった?〟やたら昨晩から阿部ちゃんのことを気にする翔太に胸がザワザワと音を立てる。
〝 うん特には…どうしてそんなに気になるの?〟一度嘘をつけば、心は麻痺する。
翔太の為と言いつつ嘘を重ねる俺は阿部ちゃんを責める資格なんて無いのに、愛は時に凶器になる。
5年分の愛を正当化するように今ならどんな嘘でもついてしまいそうだ。
翔太💙『だって今亮平が彼氏さんでしょ?普通嫌でしょ蓮と一緒なんて』
蓮 🖤『阿部ちゃんは今の翔太の気持ちを大事にしたいんじゃないかな?俺の事を好きな翔太の気持ちを汲み取ってくれてるんじゃない?優しいもんね阿部ちゃん』
翔太は綺麗な青黒い瞳を左右に震わせ動揺すると、胸を抑えて苦しそうにした〝大丈夫?こうすると落ち着くよ〟そう言って抱きしめるとゆっくりとソファーに押し倒した。
蓮 🖤『目を瞑って….大丈夫だから俺がついてる。俺を感じてて』
従順に従う翔太は可愛かった。頼る者が居なくなった翔太は震える手で俺の背中に腕を回すとしがみ付くように包容した。
〝キスするともっと落ち着くよ?してもいい?〟コクリと頷くのを確認すると優しく唇に触れた。
蓮 🖤『もっと続けてもいい?』
翔太💙『亮平悲しまない?また泣くかもしれない』
蓮 🖤『亮平じゃない、阿部ちゃんね。大丈夫だよ…阿部ちゃんには佐久間がいるから。2人そう言う関係なんだって…ごめんね黙っていて』
卑怯なのは分かっていても止めようもないところまで来ている。2人がキスしたのは事実で翔太の目の前で傷つけたんだ。これくらいのペナルティがあったって問題ないだろう。
嘘を積み重ねて大胆になる俺は、目の前の翔太を手に入れることしか考えていない。
悲しそうな顔をして俺にしがみ付いていた腕が下げられその手を取って恋人繋ぎすると顔の横で縛り付け唇を貪る。
息をつく間も与えぬ程翔太を味わった。
身体を重ねても心が自分のものになるわけではない事を俺が一番分かっているはずなのに、5年前に求められて嫌だった事を今は俺が翔太にしている。
シャツを剥ぐと高揚した翔太の肌は赤く色づき〝やめて〟と言う翔太の声はドキドキと高鳴る俺の胸の音にかき消され、愛を求めて翔太を抱く。
主張しだした翔太の花茎を下着越しに擦ればしっかりと形を露わにしたそこはビクビクと脈打ち愛液で湿り気を帯びている。
蓮 🖤『気持ちイイの?濡れてるよ….どうして欲しいか言ってご覧』
翔太は首を左右に振って快感に耐える。その姿さえも可愛く余計に虐めたくなる。
下着の上から花茎を舐めれば届かない快感に、自然と腰が浮き物欲しそうに突き出すとドクドクと一層硬くなり窮屈に下着に収まっている。
蓮 🖤『苦しそうだから脱ごうか』
俺の腕を掴んで抵抗しても、潤んだ瞳は誘ってるようにしか見えない。勢いよく飛び出した屹立を口に含むとすぐにダラダラと愛液が漏れた。
翔太💙『ンンンンッ蓮…』
蓮 🖤『我慢しないでいいよ。感じてそれだけでいい…それ以外何も考えないで俺を感じて。気持ちイイね翔太可愛いよ』
放った翔太の白濁を隘路に塗り込んで、後孔に指を挿れると肩を窄めて気持ちよさそうだ。
〝自分で膝を抱えて…そう上手だよ。もっと足を広げて〟俺の言う事を聞く翔太は世界一可愛い。
頰を撫でると艶やかに色づいた唇を親指でなぞった。〝舐めて〟と言うと必死で舌を伸ばして俺の指を舐めている。
翔太💙『リョウヘイ…』
時折思い出したように阿部ちゃんの名前を呼び涙を流した。その度に唇を奪い、激しく指を出し入れした。自身の熱塊を翔太の隘路に侵入させると〝ヤダ亮平!リョウ….〟嫉妬で気が狂いそうになる。
忘れているはずなのに心で繋がっている。
それも俺だけが知ってる。
消し去るように腰を打ち付けた。
速まる律動に、余裕なく開けられた翔太の口には俺の指が挿れられ涎を流してイヤらしく悶え鳴いた。
翔太💙『ンンっアッはぁっはぁっもうやめて…ムリ苦しぃよ蓮….助けて…』
蓮 🖤『気持ちイイって言えよ…俺を愛してるってお願い翔太俺を愛して』
翔太💙『蓮…俺はお前を愛せないんだ…お前が言ったんだよ?俺の愛はホンモノじゃないって』
見え隠れする過去と現在が、今の翔太の病状を物語っている。思い出す日は近いのだろう。
そして俺から離れていく日も・・・
不安を掻き消すように、腰を打ち付けると翔太の中に白濁を放った。
付き合っている時には一度だって翔太の中に出すことはなかった。
強欲な男は翔太を手に入れる為に必死で跡を残す。ぐったりとする翔太にたくさんのキスマークをつけると、抱き抱えてベットに横にすると、身体を綺麗に拭き着替えさせた。
蓮 🖤『大丈夫、翔太?俺仕事行ってくるから。少し遅くなるけど待てる?』
翔太はぼーっと俺を見つめ数回瞬きをすると〝うん行ってらっしゃい〟と言って左手を振ると無理やり笑顔を作って静かに目を閉じた。
コメント
7件
三杯目。 泣いちゃうなぁ、この話…。
二人がどんな付き合いをしていたのか気になりますねぇ🤔ユートピアでは、蓮と言いながら阿部ちゃんに抱かれていたのでなんだかスッとします笑いやあ!面白い!!どうなるんだろ…。更新ありがとうございます😭