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#世界観
QuartoMew
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モノクロナツキ
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#衝撃のラスト
ゆいな
103
こはる
364
「おはよう、セト!」港へ着くと、食堂の前から元気な声が飛んできた。
「……おはよう、ルル。」
まだ少したどたどしい口調だったが、昨日より自然に名前を呼べるようになっていた。
その一言だけで、ルルは嬉しそうに笑う。
「今日は早いじゃん!」
「……眠れなくて。」
「もしかして腹減った?」
セトは小さく頷く。
「正直だなぁ。」
ルルは店の暖簾をくぐり、厨房へ向かう。
「座って待ってろ!」
しばらくすると、湯気の立つ味噌汁、焼き鮭、白いご飯、卵焼きが並んだ。
「ほら、今日の朝飯!」
セトは目を輝かせる。
「……いただきます。」
両手を合わせる姿は、まだ少しぎこちない。
しかし昨日よりもずっと自然だった。
「どう?」
「……おいしい。」
「へへっ。」
ルルは自分のことのように嬉しそうに笑う 。
その笑顔を見るたび、セトの胸の奥が少しだけ温かくなる。
朝食が終わると、ルルは店の掃除を始めた。「セト、暇?」
「……うん。」
「じゃあ手伝って!」
「……え?」
「皿運ぶだけ!」
セトは戸惑う。
「ぼ、僕……。」
「失敗してもいいから。」
その言葉が、不思議と心に響いた。
研究所では失敗は許されなかった。
失敗すれば薬。
失敗すれば拘束。
失敗すれば食事は抜き。
だから何もかも怖かった。
「……やってみる。」
「よし!」
ルルは満面の笑みを浮かべた。
数時間後。
「ごめんなさい……。」
皿を一枚割ってしまった。
セトは顔を真っ青にして震える。
(怒られる。)
(閉じ込められる。)
身体が勝手に縮こまる。
だが。
「ありゃー、割れちゃったか。」
ルルは箒を持って近づき、笑った。
「怪我してない?」
「 ……え?」
「皿なんかまた買えばいい。」
「でも……。」
「セトが怪我した方が困る。」
その一言に、セトは言葉を失う。
怒られない。
責められない。
そんなことがあるのだろうか。
「ほら。」
ルルは優しく頭を撫でた。
「 初日はこんなもん。」
その手は温かかった。
博士が頭を撫でる時は、決まって実験前だった。
けれどルルの手は違う。
何も求めてこない。
ただ優しかった。
「 ……ありがとう。」
その声は、とても小さかった。
その日の夕方。
セトは海へ戻っていた。
夕焼けが海を赤く染める。
波に足を浸しながら、小さく呟く。
「ルル……。」
名前を呼ぶだけで、胸が少し温かくなる。
その時だった。
ガサッ。
背後の森で物音がした。
セトは反射的に狼耳を立てる。
鼻をひくつかせる。
( 人間……二人。)
知らない匂い。
研究所の白衣に染みついていた、薬品のような臭いが微かに混じっている。
「……っ!」
心臓が跳ねた。
(まさか……。)
木陰から聞こえてきた声。
「いたか?」
「いや、ここにもいない。」
「博士の命令だ。逃がすな。」
セトの瞳から血の気が引いた。
研究所の人間たちが、自分を探し始めていたのだ。
その頃、港ではルルが店じまいをしながら空を見上げていた。
「……遅いな、セト。」
いつもなら夕方には「また明日」と笑って別れるはずだった。
しかし、その日は待っても待っても、セトの姿は現れなかった。
ルルは胸騒ぎを覚え、港を飛び出す。
「セト……どこだ?」
穏やかな日常に、過去の影が静かに忍び寄っていた。
コメント
1件
**第3話、読んだよ!** ルルさんの「失敗してもいいから」って言葉、めっちゃ刺さったわ……。研究所で失敗=罰だったセトにとって、それがどれだけ救いになったか。皿割った後の「怪我してない?」の優しさ、泣ける。ルルさんの手、何も求めてこないただの温もりって表現が、もうね……。最後の追手の気配で一気に緊張感増したし、続きが気になりすぎる!次話も絶対読む🔥