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#世界観
QuartoMew
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モノクロナツキ
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#衝撃のラスト
ゆいな
103
こはる
364
「セト!」
港から少し離れた森に、ルルの声が響く。
「どこだ、セト!」
返事はない。
海風が木々を揺らす音だけが耳に届く。
ルルは胸騒ぎを抑えきれず、森の奥へ足を進めた。
その頃――。
セトは岩陰に身を潜めていた。
息を殺し、狼耳を伏せる。
(まだ……いる。)
鼻先に届く薬品の匂い。
忘れるはずのない匂いだった。
「実験体No.0124。」
「出てこい。」
低い男の声。
「博士がお待ちだ。」
セトの肩が震える。
(嫌だ……。)
(もう戻りたくない。)
身体が勝手に狼へ変わろうとする。
爪が少し伸び、耳がぴくりと震えた。
「いたぞ!」
ガサッ!
研究員が二人、木々の間から姿を現した。
白衣。
黒いケース。
そして、麻酔銃。
「捕獲しろ!」
パンッ!
麻酔弾が放たれる。
セトは反射的に横へ跳んだ。
弾は木に突き刺さる。
(速い……。)
逃げなきゃ。
海へ。
海へ行けば泳いで逃げられる。
そう思った、その時。
「セト!」
ルルだった。
息を切らしながら森へ飛び込んできた。
「ルル……!」
「いた! 無事か!」
「来ちゃ……だめ!」
セトが叫ぶ。
「その人たちは……!」
「捕まえに来たのか?」
ルルは二人を睨んだ。
研究員の一人が冷たく笑う。
「君には関係ない。」
「それは当研究所の所有物だ。」
その一言で、ルルの表情が変わる。
「……所有物?」
「実験体No.0124は我々の財産だ。」
「返してもらう。」
ルルは静かに一歩前へ出た。
「違う。」
「え?」
「セトは物じゃない。」
研究員は鼻で笑う。
「何も知らない一般人が。」
「知ってる。」
ルルはセトの方を振り返る。
「毎朝ちゃんと『いただきます』を言う。」
「皿を割ったら泣きそうになる。」
「魚が好きで。」
「人の名前を呼ぶと少し照れる。」
「そんな奴が物なわけない。」
セトは目を見開いた。
誰かが、自分をそんなふうに見てくれていた。
番号ではなく。
実験体でもなく。
“セト”として。
胸の奥が熱くなる。
研究員は麻酔銃を構えた。
「邪魔なら君も眠ってもらう。」
パンッ!
放たれた弾。
その瞬間。
「っ!」
セトは迷わずルルを突き飛ばした。
「セト!」
麻酔弾がセトの肩に刺さる。
じわりと薬が広がる。
視界が揺れた。
「しまっ……。」
膝が崩れる。
「セト!」
ルルが抱き留める。
「逃げ……て。」
「嫌だ!」
「お願い……。」
「絶対嫌だ!」
ルルはセトを強く抱きしめた。
「俺はもう、お前を一人にしない。」
その言葉を聞いた瞬間。
セトの中で、何かが弾けた。
「……ァッ!」
身体が青い光に包まれる。
狼耳が大きくなり、爪が鋭く伸びる。
ふわりとした尻尾が大きく膨らみ、髪が風に舞う。
金色と青色の瞳が鋭く光る。
「グルルル……!」
獣のような低いうなり声。
研究員たちは思わず後ずさる。
「暴走だ!」
「撃て!」
だが、その時。
セトは研究員たちへ飛びかかるのではなく、ルルを抱きかかえた。
「えっ!?」
「……逃げる。」
次の瞬間、驚異的な脚力で森を駆け抜ける。
木々の間を縫うように走り、一直線に海岸へ。
「待て!」
研究員たちの声は、次第に遠ざかっていった。
やがて海辺へたどり着くと、セトは膝をつく。
薬が効き始め、意識が薄れていく。
「セト!」
ルルが肩を支える。
「ごめん……。」
「謝るな。」
「でも……。」
「俺はお前を守る。」
ルルはセトの異なる色の瞳をまっすぐ見つめる。
「今度は俺の番だ。」
セトはゆっくりと目を閉じた。
ルルの腕の中は、不思議なくらい温かかった。
そしてその頃――。
研究所の地下。
白衣をまとった博士は、監視映像を静かに見つめていた。
画面には、ルルに抱きかかえられるセトの姿が映っている。
博士は口元をわずかに歪めた。
「面白い。」
「……愛情という感情が、実験体No.0124にどのような変化をもたらすのか。」
薄暗い研究室に、その笑い声だけが静かに響いた。
コメント
1件
「ルルちゃさん、第三章お疲れ様でした!」 「セトは物じゃない」ってルルが言ったところ、胸が熱くなりました。番号じゃなくて“セト”として見てくれてる日常の積み重ねが、あの一言で全部伝わってくるのが本当に素敵でした。 守るために巻き込まれても絶対に離さないルルの強さと、最後までルルを傷つけずに逃げたセトの優しさ……。 博士の不気味な笑い声が余韻を残して、次が気になりすぎます。続きを楽しみにしています🌷