テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
いね
1,871
生麦生米生卵
9
きなこもち
474
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「美希、今日一緒に帰らない?」
昼休み、クラスの男子である悠斗くんに声をかけられた。
「え? いいけど……どうしたの?」
「いや、ちょっと話したいことがあってさ」
「……?」
なんだろう。
不思議に思いながらも、私は頷いた。
*****
放課後。
「ごめん、待った?」
「ううん、大丈夫!」
悠斗くんと並んで歩き始める。
「そういえば、美希って彼氏いるの?」
「えっ!? い、いないけど……」
「そっか!」
悠斗くんは嬉しそうに笑った。
「じゃあさ、俺と――」
「美希!」
突然、後ろから声がした。
振り返ると、そこには湊が立っていた。
「……お兄ちゃん?」
「……何してんの?」
湊は悠斗くんを見た。
「えっと、先輩。美希さんと一緒に帰ろうと思って……」
「ふーん」
湊はいつもと違う、少し冷たい声で答えた。
「美希、帰るぞ」
「え? でも……」
「……帰るぞ」
いつも優しい湊が、こんな声を出すなんて。
私は戸惑いながらも、湊についていった。
*****
「……ねえ、お兄ちゃん」
「……何?」
「どうしたの? なんか怒ってる?」
「別に」
絶対に怒ってる。
だって、さっきから全然目を合わせてくれない。
「……悠斗くん、何かした?」
「……してない」
「じゃあ、どうして?」
湊は足を止めた。
そして、少し困ったような顔で私を見た。
「……あいつ、お前のこと好きなんじゃね?」
「……え?」
「……いや、何でもない」
湊は再び歩き始めた。
でも、その耳が少し赤くなっていることに、私は気づいてしまった。
……もしかして。
「……お兄ちゃん、嫉妬してるの?」
思わず口にしてしまった。
「……は?」
湊が立ち止まる。
「ち、違うよね! ごめん、変なこと言って!」
慌てて誤魔化そうとした、そのとき。
「……だったら、何?」
「…………え?」
「俺が嫉妬してたら、どうすんの?」
心臓が、大きく跳ねた。
湊は私を見つめていた。
いつものお兄ちゃんとは違う、真剣な目で。
「……美希」
「……な、何?」
「……お前、好きなやついるの?」
息が止まりそうになった。
好きな人。
そんなの、決まってる。
ずっと、ずっと前から。
「……いるよ」
私は小さく答えた。
「……そいつって、どんなやつ?」
湊の声が、少しだけ震えていた。
私はぎゅっと手を握りしめた。
「……優しくて、かっこよくて」
「……うん」
「……私のこと、いつも心配してくれて」
「…………」
「……私が一番、大好きな人」
涙が出そうになった。
本当は、名前を言いたい。
でも、言えない。
「……そっか」
湊は小さく笑った。
でも、その笑顔はどこか寂しそうだった。
「……そいつ、幸せ者だな」
そう言って、湊は再び歩き始めた。
私はその背中を見つめた。
……お兄ちゃん。
どうして、そんなに寂しそうな顔をするの?
*****
その夜。
私はベッドの中で、今日の出来事を思い返していた。
『俺が嫉妬してたら、どうすんの?』
あの言葉が、頭から離れない。
……もしかして。
いや、そんなわけない。
期待しちゃダメ。
そう思った、そのとき。
スマホが震えた。
画面には、湊からのメッセージ。
『美希、明日ちょっと話せる?』
「……え?」
続けて、もう一通。
『大事な話がある』
心臓が、うるさいくらいに鳴っていた。
……明日、何を話すの?
私はスマホを握りしめた。
明日、何かが変わる気がした。