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「……どうしよう」
朝から、私はずっと落ち着かなかった。
昨日、湊から届いたメッセージ。
『明日ちょっと話せる?』
『大事な話がある』
一体、何を話すんだろう。
まさか、私の好きな人について……?
「……はぁ」
考えても、答えは出ない。
*****
放課後。
私は湊に指定された場所へ向かった。
そこは、校舎裏にある小さな庭だった。
「……美希」
「……お兄ちゃん」
湊は少し緊張した様子で、私を見つめていた。
「……来てくれてありがとな」
「う、うん……」
沈黙が流れる。
いつもなら、何でも話せるはずなのに。
今日は、どうしても緊張してしまう。
「……昨日の話なんだけど」
湊が口を開いた。
「……美希、好きなやつがいるって言ってたよな」
「……うん」
「……そいつって、俺じゃないよな?」
「…………っ!」
心臓が止まりそうになった。
どうして?
どうして、そんなことを聞くの?
「……答えて」
湊の声は、いつになく真剣だった。
私は俯いた。
もう、隠せない。
ずっと、ずっと好きだった。
だから――。
「……お兄ちゃんだよ」
声が震えた。
「……私の好きな人は、湊なの」
言ってしまった。
ずっと隠してきた気持ち。
もう、元には戻れない。
「……ごめんなさい」
私は慌てて続けた。
「こんなの、おかしいってわかってる。でも、どうしても好きなの……。だから、忘れて。今のこと、全部忘れて……!」
涙が溢れそうになった。
すると――。
「……忘れられるわけないだろ」
湊の声が聞こえた。
「…………え?」
顔を上げると、湊は真っ直ぐ私を見つめていた。
「……俺も、好きだから」
「…………え?」
今、何て……?
「……美希のことが好きなんだ」
湊は少し困ったように笑った。
「ずっと前から。妹だからって、自分に言い聞かせてきた。でも、お前がほかの男子と楽しそうにしてると、嫌だった」
「……湊」
「……昨日、お前が好きなやつがいるって聞いて、そいつが羨ましくて仕方なかった」
湊はゆっくりと息を吐いた。
「……俺じゃなかったらどうしようって、ずっと考えてた」
涙が頬を伝った。
嬉しかった。
ずっと、ずっと聞きたかった言葉。
でも……。
「……でも、私たち、兄妹だよ?」
私は震える声で言った。
「血は繋がってなくても、家族だもん……」
湊は静かに頷いた。
「……わかってる」
そして、優しく微笑んだ。
「だから、すぐに答えを出さなくてもいい。家族として過ごしてきた時間も、大切だから」
「…………」
「俺は、お前のことが好きだ。でも、無理に答えを出してほしいわけじゃない」
湊は私の頭をそっと撫でた。
「……ゆっくり考えよう」
私は涙を拭い、小さく頷いた。
「……うん」
まだ、何も決まっていない。
でも、もう一人でこの気持ちを抱えなくていい。
それだけで、胸がいっぱいだった。
*****
その夜。
私は母に、湊と話したことを伝えた。
母は驚いたあと、少し困ったように笑った。
「……そう。2人とも、そんな気持ちだったのね」
「……お母さん、私たちって……」
「美希。湊はあなたのお兄ちゃんとして育ってきた子よ。だからこそ、2人でよく考えてほしいの」
母は私の手を握った。
「家族としての気持ちも、恋愛としての気持ちも、大切にしてね」
「……うん」
私は頷いた。
すぐに答えが出るわけじゃない。
でも、これからは逃げずに考えていこう。
湊の気持ちも、自分の気持ちも。
大切にしながら。