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「あ、なんか近いな。」
第19話:『おらん日々、静かすぎて。』
気づいたら、樹と話さん日が続いてた。
廊下ですれ違っても、目を合わせへん。
昼休みの笑い声も、遠くに聞こえるだけ。
それでも、「これでええ。」って自分に言い聞かせてた。
離れたら、気持ちも落ち着くと思ってた。
……せやのに。
朝、教室に入っても、
樹の「おはよー。」が聞こえへんだけで、
教室がやけに静かに感じた。
隣の席、ぽっかり空いたみたいで、
ノートを開いても、心がざわつく。
(なんやろ……こんな静かやったっけ。)
昼休み、友達に話しかけられても、
なんか笑い方がぎこちない。
気ぃ抜いたら、すぐに樹のこと考えてまう。
廊下でふと、樹の背中を見つけたとき、
無意識に足が止まった。
誰かと話して笑ってる。
その笑顔を見た瞬間、胸がギュッと痛くなった。
(やっぱり、俺……)
気づいてまう。
どんなに距離を取っても、
心は勝手に、樹を探してる。
家に帰って、部屋にひとり。
机の上に、樹にもらったペンが転がってる。
指で転がしてるうちに、
気づいたら、ため息が漏れてた。
「……おらん日々、静かすぎるわ。」
静けさが、心の中に響く。
寂しさが、ゆっくり膨らんでいく。
「やっぱり、樹が……おらんと、あかんねや。」
呟いた言葉が、
部屋の中でやけに大きく響いた。
好きやって気づいて、
距離を取って、
それでも忘れられへん。
(……どうしたらええんやろな。)
窓の外、沈んでいく夕陽を見つめながら、
光輝は胸の中に広がる”静けさ”と向き合った。