テラーノベル
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どんどん先に進んでいく黒猫を先程と同様に必死で追いかける僕。なんて足が速いんだ。もう少し慈悲が欲しい。そんな不満を抱きつつも僕は弱音も吐かずに走り続けた。そうして辿り着いたのは塀の陰。そこに到着するなり僕は座り込む。
「はぁっはぁっ……」
「キミって体力無いんだな」
君の走るスピードが速すぎるんだよ!なんて声に出して反論できるわけもなく……とにかく今は呼吸を整えることに専念しないと。
「そんなんだから持久走で最下位になったり」
「うっ」
「跳び箱に激突したり」
「うぐっ」
「友人達との競争で置いていかれるんだろう?」
「ぐああっ!」
正直気にしてない感じ出してたけど、他の人に言葉にされると刺さる!
「っていうかなんでそんなに詳し――ゴホッゴホッ」
かなり呼吸が不安定になってしまっているようで、途中で咳き込んでしまった。
「理由としては簡単な話さ。トオルから聞いた」
「ってことはやっぱり君はカラスなんだね。じゃあなんでさっきは逃げたのさ」
「逃げたんじゃない。嫌な気配がしたから確認しに行ったんだ」
「いやちょっと、それ結構危険過ぎない?」
「危険だね。でも逃げるだけじゃどうにもならないんだよ」
「なるほど……」
いまいちわからないことだらけだけど、少なくともカラスは僕より勇敢だってことはわかった。
「ところでさ、カラス」
「なんだ、サクヤ」
「トオルの家まで案内してくれない?スマホが使えないから道がわからなくて」
遠回りにはなるけどトオルの家まで行くことが出来ればそこから僕の家に帰ればいい。今度はちゃんと周りを見よう。それさえちゃんとしていれば迷子にはならないはずだ。
「それなんだけどね――ここはバッドエンダーの結界の中なんだ」
「バッドエンダー?」
さっきの人影のことだったりするのかな?
「バッドエンダーはこちらにとっての敵。先程の人影がそれだ」
合ってたらしい。カラスによる説明は続く。
「結界の外に出るにはアレを倒さなければならない。アレを倒せるのは魔法騎士だけだ」
「魔法騎士?」
聞き馴染みのない単語だ。「魔法少女」や「魔法戦士」なら知っている。魔法を使って変身し、人助けをしたり悪者をやっつけたりする女の子(ごくたまに男の子の場合もある)のことだ。童話とかに出てくるような魔女と違って衣装や魔法のエフェクトが派手で可愛らしい系のものが多い。でも「魔法騎士」はどういう存在なんだろう。
「魔法騎士は、その名の通り魔法で悪い奴を倒す騎士のこと。魔法少女と違って男でも女でもなれるよ」
魔法を行使する騎士か。なんかかっこいいかもしれない。
「それでその魔法騎士はどこにいるの?」
早く倒して貰わないと、僕達がいつまで経っても帰れない。
「いるよ。僕の目の前に」
カラスの目の前?カラスは今僕と向かい合っているから目の前にいるのは僕だよね。でも僕は魔法騎士じゃないから――僕の背後に誰かいるってことだろうか。慌てて振り向いたけれど、そこには誰もいなかった。
「愚かだね。今この空間にいるのは僕達一人と一匹。それからバッドエンダーだけだよ」
「それってつまり……」
「僕の言う魔法騎士はキミだよ、幸島サクヤ」
「いやいやいや、僕は魔法騎士じゃないよ」
僕はどこにでもいるような普通の少年だ。強いて言うなら他の人より小説を読むのがすっごく好きってだけの。
「だから、こういう意味だよ。サクヤ、キミには僕と契約して魔法騎士になって欲しい」
「なんかよくあるパターンのやつ!」
「アレを倒すにはサクヤが僕と契約して、魔法騎士になるしかないんだ」
「いやさ、もっと他にないの?他の魔法騎士が来るのを待つとか」
「無理だ。まだ戦闘向きの魔法騎士は存在していないからな」
「そんなことある!?」
なんか想像していた感じと違うんだけど!?
「とにかく!キミが魔法騎士になってくれないと困るんだ!ここから出れないし、バッドエンダーはたくさん出現してるし!」
「今までどうやって回避してたの!?」
「僕は空間移動が可能だからね!でもサクヤは出来ないじゃないか!」
新事実、カラスは喋れるだけでなくまさかの空間移動能力持ち。なんてカラスにとって都合のいい展開なんだろう。そんなことを言われちゃったら僕が契約する以外にこの状況を抜け出す方法がないじゃないか。
「わかった。契約するよ」
どうなるかは分からないけど、それしか方法がないのなら契約するしかない。全然納得いかないけど!
「じゃあ願い事を言って欲しい。それで契約成立だよ」
「願い事?」
僕が叶えたいと思っている願い事は一つしかない。
「『個性が欲しい』、これが僕の願いだよ」
「『人気が欲しい』じゃないんだね」
「ん?なんか言った?」
「いや、こちらの話だよ」
「それならいいけど」
「ひとまずこれで契約は成立だ。召喚、ハピネスマスターピース!」
カラスが叫んだ直後、上の方から何か光るものが僕に向かって落ちてきた。慌ててキャッチするとそれは宝石のような石だった。五百円玉と同じくらいの大きさで、空のような色をしている。
「コレは?」
「ハピネスマスターピース・アクアマリン。魔法騎士の変身アイテムだよ」
へぇ、ちゃんと変身アイテムもあるんだ。
「どうやって変身するの?」
「『チェンジ・ザ・マスターピース』と叫んでソレを宙に投げる。さぁやってみて」
結構説明が雑だなぁ。でもやらないことには進まないよね。
「チェンジ・ザ・マスターピース!」
僕はカラスに言われた通り、ハピネスマスターピースを宙に放り投げた。するとそれは眩しい光を放ち出す。
「眩しっ――くない!?」
そして驚くことがもう一つ。視線を身体の方に移すと、先程までとは全く違う服装になっていた。
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