コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
なんか痛い。それが最初の記憶。
禪院家では暴力が日常だった。ヒゲの生えた爺はなんか知らんがワシをよく殴った。よくわからんが、言葉が聞き取れるようになる頃にはもう殴られていた。痛い、と思った時には次の拳。反射的に喉から出る音には三の拳、思わず腕でガードした時には四の拳。
視界に迫る拳と痛みと、それだけが与えられるものの殆どだったから、喋り始めるのが相当、遅かったとのちに聞いた。赤ん坊のころがどうやら自分にはなかったらしいのだ。生まれてすぐはまだ赤ん坊のサイズだったが、ひいふうと数える間もなく3、4歳の姿になったらしい。生まれて急に成長した、角の生えた子ども。そんなワシが人間じゃないと、すぐに分かったそうだ。ワシを産んですぐ亡くなった母親が、とある古い呪物を『飲んだ』と。子どもを作れと家に迫られて『飲んだ』か…はたまた母親が進んで『飲んだ』のか。今となってはよくわからない。どうあれろくなものではない。
禪院の宗家にはまだ、まともに呪力、術式を持つ子どもがいなかった。後継が育つまでの保険、しかもおそらくすぐに使用期限が来る保険だった。その時のワシが生きてる理由はそれだけ。なんじゃクソか。みんな殺そ。
しかし、うっすらとしか覚えていないが、ワシは大昔に自分を縛った。
「人を殺さない」
禪院家の連中を皆殺しにしてない理由はそれだけ。できないから殺さない。
その前に出血多量とか、臓器不全で死ぬだろって?ハッハッハ!幸運、あるいは不運なことに、ワシはちょー丈夫!パーフェクトに完璧な生得術式もあって、大きな怪我、一般的な子供は即死する打撃でも割とすぐに治せる!ワシはサイコーに完璧じゃ!こんな家じゃなきゃな!
死ね!クソ!ゴミ共!つぶれて死ね!犯されて死ね!捻じれて死ね!刺されて死ね!踏まれて死ね!溺れて死ね!腐って死ね!膿んで死ね!嬲られて死ね!縊られて死ね!死ね死ね死ね!みんなみんな死んでしまえ!目の前で、苦しんで、とびきり最高に良い悲鳴を上げて死ね!特に、ヒゲ!
さっさと死んでくれ。全部。ぜんぶ。
「…飯は食ったか?」
いや、まあ。…まだいいか。