その後組長は自室に戻り、折西に
床に布団を敷くように頼んだ。
そこに俊を寝かせ、組長は話をした。
「…俊がよそ者を嫌いな事は知っているか?」
「はい…この前アモ族の長老さんに
会った時にお聞きしました。」
「そうか、話が早いな。
俊がよそ者を嫌う理由はわかるか?」
「恐らく迫害されていたことだと。」
「…そうだな、大体合っている。
一つ付け加えるなら自分が原因で
大切な人が迫害されたことだろうか?」
「それって、俊さんが直接迫害を受けた訳
じゃなくて別の誰かを介して迫害を受けた
ってことですか…?」
「ああ、俊が昔そう言っててな。
詳しいことまでは話さなかったが…
先程の取り立てを見て大切な人が迫害された
記憶がフラッシュバックしたのだろう。」
「…そうだったんですね。けれどどうして
職員にはフレンドリーなんでしょうか?」
「フレンドリーに見せかけているだけだ。
俊は上辺だけの付き合いだと思ってる。」
「…鍵開け、出来るでしょうか…」
「折西は他の従業員より心を開いている方だ。
大丈夫だと思う。」
「えっ…?」
「他の従業員にはROINしか教えない。
だが折西には他のツールのアカウントを
教えている。特にその影った…
みたいなやつは鍵垢と言って、他人に
見られなくするらしい。」
「…本当だ!」
影ったーの俊のアカウントを見ると鍵が
ついており、フォローしているのは
折西と組長だけだった。
「俊が言っていた。若いのにSNS
してないの可哀想だし教えてあげた!
…とな。心から楽しそうに話していたよ。」
「けどなんで僕が…」
「紅釈と昴は警戒心が高くて関わりづらい。
東尾は代償が故に表情が読めなくて怖い。
…とは言っていたな。」
「つまり僕はある程度心を開きやすい
性格だと…」
「だろうな、人を惹きつけるんだろう。」
組長は布団の中にいる俊の頭を
優しく撫でながらそう言った。
俊の冷たい汗が枕をじんわりと濡らし、
どこかうなされているような表情をしていた。
「すまんな長々と、もう寝なさい。
明日、折西を休ませるように
昴に伝えておくから…俊を頼む。」
組長は俊の部屋の合鍵を渡す。
ずっと握りしめていたからなのか
鍵からほのかに温もりを感じた。
折西は静かに頷くと踵を返し、
自室へと帰って行ったのだった…
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!