hr「でも、泣けないって相当きついんじゃねぇの、?」
ym「ん?何が?」
hr「いや……泣けないってことはさ、
ってことじゃん?
だからつれ ~のかなぁって。
どんな感じ?」
ym「ん ~……山田はなんとも言えへんなぁ。
別に泣きたいって思うことなんてあらへんし、
いや泣かせたいって思うことならあるかも……、??」
hr「ぇ、やばお前……」
ガラララ
yu「すみません、!
そーちゃんのせいで遅れました!」
so「えッ、僕のせいっすか、!?」
ut「あ、ゆーまそーちゃん、
遅かったな…、?」
yu「ごめんなさい…」
今頃、そーちゃんとゆーまくんが来た。
いや、なんでほんと今頃なんだって感じなんだけど……。
息切れしているゆーまくんに、心外驚いているそーちゃん。
二人は今の状況を理解していないみたいだし、
けいとこむぎとたくぱんが居ないのも別に不審に思っているわけではなさそう。
けいが思っていることはわかる。
なんなら、別に気になるってわけでもないけれど、山田のことについても少し気になる。
…すっごい矛盾してんじゃん、俺。
ym「どしたんうた、?」
ut「え、いや、……別に、」
ym「ん ~、なんやねん新しいエロ本でも拾ったんかぁ ~??
見せろや ~!」
ut「ちげぇよ、!!」
ニヤニヤしながら近づいてくる山田。
まぁ、エロ本に期待してるみたいだけど、今はあいにく持ってない。
…………てか持ってない、持ってないからな、??
ut「………」
俺、ゆーまくんとかきゅーの時みたいにうっかり口を滑らせちゃう時があるから、
気をつけようって心の何処かで思ってた。
だから、今も十分気をつけようって思ってる。
山田にも傷ついてほしくない。
無理には問わない。
だけど、……なんか、隠してるよね。
過去が気になっちゃう。
自分で辞めようなんか思っていても、内心どっかで気になっちゃってるんだ。
ut「やっぱ……そう言うとこが駄目なんだろうなぁ…」
hr「ん、どした、?」
ut「……、」
みんなのこと理解できてないわけなんかじゃない。
でも、理解されたことがないから気持ちなんてわかるはずない…。
また、俺はみんなのことを愛せないの、?
ずっと、仲間だって離れていって…
みんなが辛い思いをしていることに気づかなくて、より傷つけて…、
そんなの、副部長として失格なんて…
当たり前じゃんか、
hr「……、!」
愛す、ってなんなんだろう。
恋愛、?友情、?絆、?
…わからない。
愛すってどうすれば出来るんだろう。
俺、別に愛す方法が無いわけなんかじゃないとはわかってる。
でも、俺にも過去はある…、
はるてぃーとか、きゅー達とかみたいに辛いわけなんかじゃない。
自分でも平気平気、ってずっと心に言い聞かせてるから。
別に自分は、みんなほど抱えているわけじゃ無いんだなって。
別に辛いことなんて、みんなほど重いわけじゃ無いんだなって。
でも、自分でも考えちゃう。
人を愛すことができなくて、どんどんみんなが離れていった。
そんなことは、言わないけどね。
○○
中学3年生、秋
ut「……ふぅ、」
少し息を吐きながら、冷たい手をポケットに突っ込む。
もうこんな季節なんだな…
そう思いながら、教科書を整理し、ふと窓の外を見た。
少しづつ色づいてきている木々。
綺麗な赤色とオレンジ色、ちょっと夏の雰囲気が残っている緑色。
そんな風景を見ることも面白かった。
俺がボーっと外を眺めていると、首にあったかいものが当たった感触がした。
ut「ッうわ、何ッ、!?」
hr「んひひッ、w、大成功 ~、!」
ut「!なんだ…はるてぃーかよ、w」
隣には片手に缶コーヒーを持ったはるてぃーが、
悪戯そうな笑みを浮かべて此方を見つめていた。
その缶コーヒーを俺に「へい、あげる」と渡してくる。
特に何もしていないのに、
こういうところだけ気遣ってくれるんだよな、こいつ……
ut「…なんで急に缶コーヒー、?」
hr「んー?、
なんか近くに自動販売機あったから、お前に買っといてやったw」
ut「なんだよそれ…、」
目の前でピースを作って笑うはるてぃー。
俺が「ま、ありがとな…」と小さくボソッと言うと、はるてぃーはそれに反応し微笑んだ。
はるてぃーが後ろの席な為、俺とはるてぃーは一緒に昼ご飯を食べる。
ま、幼馴染って事もあるんだけどね。
hr「いっただっきまーす!」
ut「はいはい、いただきます。」
hr「ん ~、うっめ ~、!!」
ut「…、」
はるてぃーはもう弁当を食べ始めている。
俺は、お弁当箱を開け、中身を見つめた.
自分で作ったお弁当。
いつか、奥さんとかに作ってもらうのかなぁ…、
そう思いながら少し微笑んでいると、
hr「おい、何ニヤニヤしてるんだよ」
そうはるてぃーから言われた。
いや別にニヤニヤしているわけじゃ無いんだけど、と反抗しようと思ったけれど
少し心配で自分の手で顔を摘んだ。
…うん、大丈夫そう。
俺がホッと一息をついたとき、
はるてぃーが目の前でおかしいとでも言いたいように吹き出した。
ut「は、?きったなッ、!」
hr「いやお前ッ、きったなって言うなッ、!w」
ut「だって…」
hr「あっはは、ははッッw、
面白すぎるわまじでww」
ut「う、うるっさいなぁ……」
はるてぃーの声が異様に大きいことから、クラス中の視線が俺らに向く。
「はるうたは今日も仲良しだなぁッw」
「おいおい春田ー、御崎といちゃいちゃすんなよ ~」
「さっすが、もうあいつら付き合えよ」
と、クラスメイトの声が聞こえる。
…まじで嫌なんだよな、この雰囲気というか…
ut「…なんなの、
お前がなんか変なことするからさぁ…」
hr「えー、?w
別にいいだろこんぐらい!」
ut「よくないから言ってんの!」
目の前でけらけらと笑うはるてぃー。
その様子が面白おかしくて、俺も少し吹き出してしまった。
…こんな、こんな感情を持てるほど俺は居ていいとは思っていない。
はるてぃーと肩を並べて歩けるほど、才能があるとは思っていない。
はるてぃーは中学2年生の頃、一時期ゲーム実況をしていた。
俺も遠くからずっと応援していて、はるてぃーの動画を見て笑っていた記憶がある。
面白くて、幼馴染が楽しそうにしているんだなって、
ずっと心で暖かさを感じていた。
はるてぃーの実況を聞くことが、俺の楽しみなことでもあった。
でも、突然プツンと動画が投稿されなくなってしまった。
どうしてだろ、なんでなんだろう。
そう思っていた。
はるてぃーは全然学校に来なくて、
一人で弁当を食べて、
幼馴染がいないっていつも一緒にいる仲間がいないってすごい辛いことなんだなって…
そう思いながら孤独な毎日を過ごしてきた。
もう耐えきれなくなって俺ははるてぃーの家に行って、
なんとか説得したけど本当にそれでよかったのかななんて、今では思っている。
…目の前のはるてぃーを見ると、まぁ平気なんだなって思ったりもする。
あんなに辛い過去があったはるてぃーなのに、
どうしてあんなにみんなに寄り添うことができるんだろう。
そりゃ、はるてぃーは性格が明るくて、リーダーシップがあって…
みんなのことをちゃんと見てる。
だから、みんなに頼られるのも間違いないんだなって
、寄り添うことができるのも彼にとっては当たり前のことなんじゃないかって。
はるてぃーの右腕として、ちゃんと保ってる?
俺には大した才能なんてない。
別に誇れることなんてない。
そこら辺にいる、普通の中学生だった。
ut「…ほら、早く食うぞ」
hr「はーい、うたせんせー!」
ut「お前……」
いつまでもふざけているはるてぃーを見ると、
俺は何を考えているんだって思っちゃっていつもそれきり考えるのをやめる。
弁当に入っている卵焼きを一口食べてから、
はるてぃーからもらった缶コーヒーをぐっと一口飲んだ。
すると、後ろから「あの ~…」と、少し高く可愛らしい声が聞こえてくる。
??「御崎、くん…、
今ちょっといい…、?」
ut「え、うん。別にいいけど…?」
??「よかったッ、!」
目の前にいるのは、髪がサラサラ、瞳は大きく、顔が綺麗…
噂でよく聞く、学校でもナンバー1を争うほどの美女、白石真由さんが立っていた。
そんな美女が俺に用なんて、一体何があるんだ…?
少し疑問に思いながらも、俺は彼女の次の言葉を待っていた。
sr「あのー…クラスは一緒だけど、
あんま話したことない…よね、?」
ut「あぁ…、まぁそうだけど…」
sr「実は御崎くんにお話があって…
放課後、空いてるかな?
屋上に来て欲しくて、」
ut「え、…」
「うーん…無理かな…、?」と彼女がじっとこっちを見つめてくる。
俺は少し戸惑ってしまって、隣のはるてぃーを見た。
はるてぃーも内心驚いているらしく、口をぽかんと開けていたけど
俺の視線に気づいたのかそれきり、口を開けることはなかった。
hr「…別にいーよ、俺下で待ってるし。
白石さん、何分ぐらいで話し終わりそう?」
sr「えーと…貴方は確か春田くん…?
話は5分ぐらいだから、すぐ終わるよッ」
hr「おっけー、!
5分ぐらいならお前のたまに待っといてやるよ、うたぁー!」
ut「ちょッ、お前ッ、wやめッw」
hr「必殺!こちょこちょ攻撃ー!!」
ut「おまッ、ww
ほんと、ちょ、w」
はるてぃーに脇下をこちょこちょされ、クラスメイトの笑い声が聞こえてくる。
mb「おいおいいちゃいちゃすんなってw羨ましいだろー、w」
mb「はいはい、リア充はどっか行ってくださーい」
ut「だ、だからッwいちゃいちゃしてない、ってwあっ、ははww」
hr「おらおらおらおらおら!!!」
ut「ちょ、お前っ、
本当にやめろッッ!!w」
hr「いって!!」
いつまで経ってもこちょこちょをやめないはるてぃーを1発ぶつ。
隣の白石さんも俺たちの様子を見て、笑っていた。
でも、どこか遠くを見ているようで地味にその笑顔に裏があるように見えた。
「あー…ごめん白石さん。こんな姿見せちゃって」
と、俺が言うと白石さんは
「全然大丈夫だよ、二人、すっごい仲良いんだね ~…w」
と優しく返してくれた。
学校の男子たちは、彼女のこう言うところに惚れるんだと思う。
sr「じゃあ、また後で!」
ut「うん、」
hr「あ、うたは白石さんとこ行くんだっけ?」
ut「うん、そうだけど」
hr「んじゃ俺下で待ってるわ ~、なるべく早く来ないと罰ゲームつけてやるからな!」
ut「はいはい、分かってます」
hr「…分かってねぇだろ ~」
「またこちょこちょするぞ ~?w」
と悪戯っぽい笑みを浮かべて言うはるてぃーに、俺は
「したらマジで殴るからな」
と釘を刺しておいた。
はるてぃーが「じゃあな ~」と言いながら階段を降りていく。
はるてぃーが見えなくなると、俺は手を振るのをやめた。
反対の方向に、俺は階段を登っていく。
ガチャ
屋上へ着いた時、彼女は既に居た。
フェンスに駆け寄って、目を閉じて風を感じているようだった。
ut「…白石さん、」
sr「あ、御崎くん、」
ut「…あの、話って?
俺はるてぃーに急かされてるからさ、早くしろって、w」
sr「…やっぱ御崎くんは、春田くんのことが大好きなんだね」
「えっ、?」と俺は白石さんに返す。
いや、大好き…と言うか、幼馴染として一緒にいるだけで…
まぁ、好きだけど…
自分で意味のわからない解釈をしながらも、俺は白石さんの言葉に戸惑っていた。
それ様子を見た白石さんは「ふふっ」とどこか不気味な笑いをし、俺に駆け寄った。
sr「…ねぇ、私ね。
ut「…ぇ、??」
sr「ずっと奪いたかった。
貴方とずっと居る春田くんから。」
ut「…え、マジで言ってんの、?」
sr「…本気じゃなかったら言わないよ、
御崎くん、貴方のことが好きです」
俺は、彼女の言葉に一瞬目を疑った。
別に白石さんと長い付き合いなわけでもないし、
今年初めて一緒のクラスになったばっかりだ。
強いて言うなら、委員会が同じことぐらい。
それ以外は白石さんとは別に話さないし、
話そうとしても他の男子から睨まれるから、そこまで話そうとも思ったことはなかった。
だから、白石さんも俺のことを好きになる理由なんて、無いはず…、
sr「一目惚れ、ってよく言うでしょ。
私、御崎くんに一目惚れした、」
ut「…あの、ごめん。
俺、そう言うの分かんないから…」
sr「……あぁ…、知ってる」
ut「…、え?」
過去に悲しい出来事があったもんね」
ut「ッッ……、!!」
目を細めて笑う白石さんに、俺は若干の恐怖を覚えた。
自分が締め付けられるような、そんな目をしていて、とても鋭くて…
どこか、痛かった。
自分は人をこんなにも愛せなくて、他人とは違うんだって…
過去が蘇ってくる、
utm「とおるくんは、はなちゃんをたくさん愛しました。
おしまい」
ut「あいしました…、?
あいしましたって何ッ?」
utm「ん ~…詩にはまだ早いかもねッ」
ut「えぇ ~…そっかぁ ~…」
4歳の頃。
お父さんがいつも出張で、家にはお母さんしか常にいなかった。
寂しくて泣きそうな俺を、いっつもお母さんは慰めてくれた。
絵本を読んでくれて、遊びに行かせてくれて…
今思うと、本当に優しかったんだなって思う。
…もう、遅いけど。
utm「…詩は大人になったら**『恋』**するかもね」
ut「こい、?
おさかなさんになるのッ、?」
utm「そっちじゃないわよ、w、
…恋っていうのはね、誰かが好きになる、とか。
そういうことを言うのよ」
ut「…、?
じゃ、ぼくおかあさんとかあきとに恋してるのッッ、??」
utm「…!
あら、詩はお母さんと明人くんのこと好き?」
ut「うんッ、!
おかあさんもおとうさんもあきともだ ~いすき!
おとうさんは…あえないけど、」
utm「…そうね…、
でも詩は優しいから、すぐ誰かが詩のことを好きになるわ。
お母さんも詩のこと、大好きよ」
ut「えへへッ、」
いつでも、ずっと一緒にいてくれて…
でも、そんな幸せな日々も長くは続かなかった。
…小学5年生の時、
ut「じゃね、明人、」
hr「おう、!課題忘れんなよ ~」
ut「こっちのセリフ、w」
いつも通り明人と別れた後に、家に入る。
明人とは家が隣だから、行く時も帰る時も常に一緒だ。
「ただいま ~」と、言いながら家に入る。
返事がない。
いつもならお母さんが「おかえり ~」と優しく返してくれるはず…
リビングについても、お母さんはいなかった。
胸が引き締まった。
「どうしていないんだろう」「何かあったのかな」
自分の頭は困惑が頭に詰まっていて、考えることなんてできなかった。
机に行ってみると、一つ上にボイスレコーダーが置いてあった。
恐る恐る、再生する。
『詩へ
急でごめんなさい、
ずっと隠してたことがあるの。
お母さんね、
本当に隠しててごめんね、
もう寿命が長くないんだって…、
お父さんもいなくて、お母さんもこんな人でごめんねッ…
ちゃんとお別れしたかったのに、こんな別れ方でごめんねッッ…、
銀行にお金はあるし、たくさんお金は残してあるわッ、
明人くんには事情を話してある、
だから、困った時は明人くんを頼るのよッ、
ごめんなさいッ…、じゃあね、
ずっとッッ…、!上から見守ってるからねッ…、!』
ut「…嘘………」
あまりの衝撃にボイスレコーダーを落とす。
頭が回らない。
何が起きた?
お母さんは死んだ、?
もう、この世にはいないの、?
ut「ぁ……あぁッッ……」
そう理解した時には、俺はもう叫び声を上げていた。
あんな優しかったお母さんが今この世にいないなんて。
俺は、ひとりぼっちになってしまっただなんて。
認めたくなかった。
ut「嫌だッ、お母さんッッ……
置いてかないでよッ、!!」
俺は、もう何も言えなくて。
何も、気づけなかった。
俺はお母さんを愛していた。
…俺が愛した人は、不幸に招かれるのッ、…??
hr「詩、!?
どうしたッッ……ぇ、」
ut「嫌だ、嫌だ嫌だッッ……、」
後ろから明人の声が聞こえてくる。
あぁ…ドアが開きっぱなしだったのか。
でも、今の俺はそんなことは考えられなくて。
hr「詩ッ、詩!!
しっかりしろ!!」
ut「ッ明人ッッ、お前ッ、
ずっと隠してたのかよッ…、」
hr「ッッ…ごめん、詩のお母さんが…
お前を心配させたくないからって…」
ut「ッッなんで言わなかったんだッッ、!!」
hr「ッごめ…」
ut「どうしてッ、どうしてよッ、!!
内緒事はしないって、そう約束したじゃんッ!!」
hr「詩を心配させたくなかったんだよッ、」
ut「ッ、何も知らないかよりは、
hr「ッ……」
hr「ッ知らないわけねえだろッッ、
…俺はお前の幼馴染で、」
ut「そういうのもういいッ、明人なんかもう知らないッ、!!!」
hr「ッまて詩ッ、!!」
自分で走り出す。
階段を登り、自分の部屋を開けてすぐさま鍵をしめた。
ut「………嘘つき、」
何十倍も小さい声でつぶやいた。
hr「……詩、」
『明人は俺のことなんかなんも知らない癖にッ、!
勝手に俺の家の事情を隠さないでよッッ!!』
……お前のためにしたことなんだ、詩。
お前を心配させたくなくて…
お母さんは気遣ってくれたんだぞ、
詩は、すごく悲しそうな、切なそうな顔をしていた。
心からお母さんを思っていて、これまでにないぐらいずっと辛そうな顔をしていた。
hr「…ごめんな、」
一人でぽつんと呟く。
其の儘、俺は階段を登っていき詩の部屋の前で止まった。
ut「ッ、ぅッ 、…」
中から小さく聞こえる啜り声と泣き声。
俺は小さく部屋をノックした。
hr「…詩、?」
ut「ッ、放っておいてよ…」
hr「…お願い、開けてくれ、」
ut「嫌だよッ、お前が俺にッ、」
hr「……ごめん、」
ut「…ぇ、?」
hr「お前はずっと昔から優しくて、他人のことを見ていて、働き者で……、
いつでもみんなに笑いかけて、おまけにモテて幸せすぎるだろ……、
…そう思ってたけど、本当はすごい辛かったんだな、
ごめんな、ごめんな…お前のことわかってやれなくて…」
ut「ッッ………、」
きぃ…っと、小さく音が鳴り、ドアが開く。
目の前には体育座りをしながら、メガネを外して涙が溢れている詩がいた。
俺は、勢いで詩に抱きついてしまい、バランスを崩す。
ut「は、はるてぃ……、」
hr「ごめん、ごめんなぁッ、……
俺のせいでお前にたっくさん迷惑かけて……」
ut「ッッ……、」
hr「今日は我慢なんかしなくていいッ、…」
ut「ッ、ぅあぁッッ……
ごめん明人ッ、ごめん、ごめんッ……
大好きなのにッ、大好きなのに知らないなんて言っちゃってッ、
ごめん、ごめんなさいッ……」
hr「ッ辛いよなぁ…
ずっと大好きなお母さんがいなくなって、それを幼馴染に内緒にされてッ…
今までよりずっと辛かったよなぁッ……」
ut「辛いッ、辛いよッ………」
hr「ッ……」
詩の声は、どこか寂しそうに、悲しそうに…
細くて弱い声だった。
俺はより強く抱きしめる。
いつも平気そうに笑って,
あんなに楽しそうにしていたのにこんなに辛いことが今現実にあると思ったら、
普通に過ごすことなんて辛いことになるのは当たり前だよなぁ…
『ごめんね、明人くん…詩を、よろしくね』
俺が聞いた中の詩のお母さんの最後の言葉は、これだった。
お母さんも辛そうに,でも、これでいいんだって顔をしていた。
俺自身、何処か間違っているんじゃないかとは思っている。
でも、俺は幼馴染で一緒にいるだけで、それ以外は何もない…
…本当に何もないのか,?
俺は詩な幼馴染なだけで…
その他のことは何も知らなくていいのか、?
…そんなわけねぇだろ。
俺は自分の突き通さなきゃいけない。
いつまで経っても怯えてる俺じゃ、なんも成長できない。
……それは,詩も同じだろ、
hr「……」
ut「………、自分を、信じなきゃ…」
○○
ut「ッは、ぁッッ………」
sr「…貴方は何にも知らない。
愛し方も、どうやって自分を成長出来るかも…
本当に何も知らないのね。
貴方は不憫で他人のことを気づくことのできない自分を愛せない。
愛したところで、その人が不幸に招かれると思っているから、人を愛せない……」
ut「ッ嫌だ、やめてッ…やめてッッ、!」
sr「…そんな人が、人を愛す価値はあるわけ?」
『自分が嫌い、かぁ…だっさ、』
『愛せないんじゃこいつ将来やってけんの、?』
『さぁ、無理なんじゃねぇの?』
嫌だ、お願い、やめてッ……
『…お母さんは死んだってのに、まだ人を愛すことができないの?』
お母さんッ、嫌だ……そんなこと言う筈ないのにッ…
『お前なんか、俺の幼馴染じゃねぇよ』
はるてぃーッ…ごめん、謝るからッ……
ut「お願いだからッ、離れていかないでッ……」
sr「…その為に、私が御崎くんを好きになったんでしょう?
ほら、私を愛してみて」
バンッッ!!
ut「ッはるてぃーッ…?」
sr「え、あ、は、春田くんッ、?どうしたの、?まだ話は終わってな…」
hr「遅えんだよ。もう十分経ってるわけ。」
ut「…ッ、はる…」
hr「…あぁ、その様子じゃ辛いこと言われたな。」
はるてぃーが駆け寄ってくる。
そして俺の前にたち、白石さんにこう言った。
hr「悪いけど、
お前みたいな適当なことを言って告白するようなやつとクラスメイトになった覚えはねぇ。
ごめんな。」
sr「ちょ、ッ、待って!」
はるてぃーは俺の手を引き、白石さんを通り過ぎて階段を降りていった。
俺が「ちょっと、待って!」と一旦止まると、
はるてぃーは「どうした?」とでも言うように首をかしげた。
どうしてわかったのだろう。
たしかに自分ですごく辛かった。
あんな残酷な過去を思い出して、
幼馴染と喧嘩した記憶まで思い出してしまって、
辛くて辛くて辛くて辛くて辛くて仕方がなかった。
あれ以上辛いことを思い出すのが嫌だから、?怖いから?
…違う。
そんな自信もなくて、自分を信じることさえできなくて…、
だから反抗できなくて、いつまでもはるてぃーに甘えてしまう。
そんな自分を治したい、直したいけど…
ut「やっぱ…無理だよ………」
hr「……!うた、?」
ut「ごめん、俺のせいではるてぃーにまで迷惑かけちゃって…
俺のただの話なのに」
hr「…いや、俺ら幼馴染だろ?」
ut「……でも、嫌でしょ。
俺のことでいっつも迷惑かけて…
憎くて嫌で仕方がないでしょ…?」
hr「そんなッ、俺は……
うたについて行きたいって、ずっと思ってるだけ。
ただの俺の趣味」
ut「…やっぱ、はるてぃーはみんなの憧れだね…、
辛い過去があるのにそんなに笑顔で、勇気を、元気を与えてくれるって…
ほんとに羨ましい。」
hr「…俺でも辛いって思わなかったわけじゃないぜ。
でも、うたの過去よりは数倍マシだろ?
…俺は愛されなかった時期はあった。
あったけど…
今、ちゃんとうたが楽しそうにしてるから俺も楽しく生きられるんだよ」
…なんでそんなに笑顔で笑うの?
俺に迷惑して…
ずっと弱くて自分を信じられない不憫な俺のことが、嫌いじゃないの?
喉がつっかかって声が出てこない。
どうしても伝えたいのに,自分のどっからから出てこない。
引っかかったまま、また引っ込んでる。
…伝えられないことだって,いくつもあった。
風邪でしんどかった時だって、ちゃんと物を運んだし、
徹夜でしんどい時だってちゃんとみんなの手伝いをした。
つらい、なんて一言も言えなかった。
でも、言ったところでなんのためになる?
「可哀想」「でも俺には関係ない」「自分でなんとかしようよ」
そう言われるはず。
今よりも数倍辛くなるだけ…
そんな俺だって、周りに相談できる人なんて居ないんだよ。
はるてぃーに迷惑なんかかけたくない。
友達に見捨てられて一人ぼっちになっていって…
孤独な毎日を過ごすことだっていやだ。
そんな我儘言ったってどうにもならないってことだけは分かってる。
でも黙ってたって意味ない。
自分でどっかで迷ってる。
だから、何もできずに時だけが過ぎていく。
hr「え、?」
ut「ッ俺、最低なこと言ってるかもしれない……、
でも、どうして?
どうしてはるてぃーは、そんなに笑っていられるの?
平気なの?
怖くないのッ、?」
ut「ッッ ~…!」
目の前でにっと笑うはるてぃー。
…そう言う笑顔が大好きなんだ。
俺から離れないで、ずっとそばにいてくれて励ましれてくれるような…
そんな笑顔が大好きだ。
…俺だって今の人生楽しいよ。
たくさんのクラスメイトに囲まれて、ずっと楽しく笑っている幼馴染が隣にいる。
楽しいに決まってるじゃんか。
…でも、俺は自分のことを愛すことができたら、
みんなを愛すことができて、
不幸がなくなれば…
コメント
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泣けた、、 これって、、続き、、あるのかな、、?あったらすごいみたい、、
えぇ泣きました めっちゃ好きです 尊敬します