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紫 苑 。( 元 あ や 。)
29
#文ストBEAST
#文豪ストレイドッグス
#文スト腐
BEAST軸の首領×最高幹部の短編。カニバっぽい描写あり。解釈違い、地雷でしたら回れ右。
1章、愛は食卓にある
愛は食卓にある。
「…何だそれ」
鼻で嗤った記憶がある。
向かいに座っていた彼奴は、何時もの調子で肩を竦めて、
「さあね。そういうことにしておいた方が、少しは生きやすいだろう?」
なんて、どうでもよさそうに云った。
信じてる風でも、否定している風でもなく、ただ置かれた言葉。
「….巫山戯ンな」
小さく吐き捨てる。
そんなモンで縛れるのなら、最初から逃げる必要なんざねェだろうが。
「そう怒らないでよ、中也」
気の抜けた声が神経を逆撫でし、苛々しながら睨みつける。意図的にやっているのだから余計にたちが悪い。
「君がそこに何を置くかなんて、私には全く関係ないんだからさ」
グラスを2つ、並べる。
同じ量だけ酒を満たした。
減ることのないそれを見て、舌打ちを1つ。
「…手前は絶対ェ、俺が殺すったろ」
視線は向かいの席に落ちたまま。
「….逃げンなよ」
最初から、返事なんて無かった。
2章、2人分
部屋には常に2人分が用意されていた。
椅子も、酒も、書類も。
机の端には確認待ちの書類が積まれていく。
誰も触れることはない。
一度だけ、勝手に書類に触れた部下が居た。
翌日から、机が1つ空いた。
「おい。そこ、違ェだろ」
短く、苛立った声。
部屋に間が落ちる。
「……聞いてんのか、手前」
低く、押し潰すような声。
グラスの触れ合う音がする。
2つ分。
どちらも同じだけ減っている。
触れていない方の縁だけが、やけに濡れていた。
3章、遺体
「それで、首領の件ですが」
報告に来た部下は、僅かに言葉を選んだ。
「遺体の保管について、再確認を――」
そこで声が止まった。
中也の顔が上がり、部下の肩が強張った。
「….なンだって?」
腹の底に響くような、低い声が落とされる。
部下は小さく震えながら懸命に言葉を紡いでいく。
「太宰首領の遺体の――」
空気が止まる。部下は完全に青ざめ、書類を机に置いて逃げるように部屋を出ていく。
遺体。
やけに口の中に張り付く音だった。
飲み込めない。
「… は」
息が漏れる。
「何、云ってやがる」
視線が机に落ちる。
グラスが2つ。
どちらも同じだけ減っている。
「….巫山戯ンな」
喉の奥で、何かが引き攣る。
「俺と、約束しただろ」
言葉が、噛み砕くみたいに零れていく。
「….勝手に、終わらせてンじゃねェよ….」
最後の一言だけが、やけに静かだった。
4章、記録
それから暫くして、遺体の管理が見直された。
記録は正確だった。
手続きも問題はない。唯、1つを除いて。
「….ない?」
ある筈のものが、無かった。
最初は手違いだと考えられた。
次に、移動された可能性が疑われたが、記録は残っていない。
誰も触れていないというのに。
ただ、消えていた。最初から無かったみたいに。
報告書を手にした人間が、ほんの一瞬だけ顔を歪めた。
すぐに元に戻る。
その報告は上に上げられていない。
必要がないと判断されたのか、
あるいは――
「….あれに関わるな」
誰かが、そう呟いたのかもしれない。
それ以上、調べる者は居なかった。
5章、いただきます、ごちそうさま。
夜は静かだった。
灯りの落ちた部屋の奥で、小さな音だけが続いている。
湿った音。
噛む度に、僅かに何かが潰れる。
歯に残る感触。
重たいそれを飲み込む度に、喉が僅かに上下する。
口の端から、何かが落ちた。べちゃ、という湿った音が静かな部屋に響く。
「…..不味」
小さく呟いて、笑った。
少しだけ、間が空く。
それから、また同じ音が続く。
今度は、さっきよりも静かに。
何かを噛む湿った音だけが、やけに鮮明だった。
やがて、全てが止まる。
完全な静寂。
椅子が僅かに軋む。
それっきり、何も聞こえなくなった。
――翌朝。
「….聞いたか」
「太宰首領の、遺体が」
言葉が詰まる。
「…..無くなったらしい」
誰も、何も云わなかった。
部屋が静まる。沈黙だけが、落ちていく。
薄暗い部屋の中。
テーブルの上にはグラスが2つ。
どちらも、空。
「….ごちそうさま。」
喉の奥で、僅かに息が鳴る。
歪んだ笑みを浮かべ、自身の腹を愛おしげに撫でた。
「….逃がすかよ」
グラスを指で弾く。
乾いた音が1つ、部屋に落ちて、やがて消えていった。
コメント
1件
わあっ…紫苑さん新作読んだよ〜!!😭💕💕 BEAST軸の首領×最高幹部、もうタイトルから滾るんだけど…!!中也の「逃がすかよ」って最後の台詞、めっちゃ胸に来た…。グラスが2つ並んでる日常の描写が、逆に喪失感を際立たせてて切なすぎる😢💔 カニバっぽい描写も、この2人の歪な愛の形を描くのにピッタリで…「ごちそうさま。」のシーン、鳥肌立ったよ…。逃げないで、ずっと一緒にいるって約束の裏返しなんだね…尊いし苦しい…!! 続き絶対読むからね!!待ってる!!✨💕