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ほしのはな
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#ご本人様とは一切関係ありません
noa.

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#さのじん
さき
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「勇斗」
人前に映るときとは違う、耳を撫でるような柔らかい声がした。その声を聞くだけで、ああ敵わないと思う。
「思ったより準備に時間がかかるみたいだって。1時間は空きそう」
リーダーらしい業務連絡。ただそれだけ。声のする方に振り返ろうとすると、すぐそばまで彼の気配がした。
座っていたソファから見上げる。普段はあまり見ない下から見る彼は、同じ男かと疑うほどどこもかしこも線が柔らかくて、目が眩むほど白くて、どこかあどけない。
「仁人」
「ん?」
脊髄反射のように手を伸ばす。その手をじっと見つめた仁人は一瞬だけ何かを考えたような顔をして、それからゆっくりと俺の手を取った。俺より熱くて柔らかい手を引けば何の抵抗もなくソファが沈んだ。
「わっ」
小さく声を上げて俺の隣に沈んだ仁人の両脇の下に腕を差し入れて、掬い上げるよう抱き締める。簡単に腕が回ってしまう細い体。布越しにじんわり伝わる高い体温。この頼りなさそうな俺よりも一回り以上華奢な存在が、どんな場所より安心できて深く呼吸ができる場所だ。
「…てっきり枕にされるのかと」
行き場に困っていた仁人の手が躊躇いがちに俺の背中に下りる。
「お前あったか」
「はいはい、どうせ子供体温ですよ」
人に甘えることも、甘えられることにも慣れていない仁人。そんな仁人が、きっと見よう見まねで微かに俺の背中をポンポンと優しく叩く。そのぎこちない動きにどうしても口角が上がりそうになる。白くて滑らかな首元に顔をうずめてその感触を頬で愉しむ。
「ひっ、ちょ、くすぐったい」
「言いたかないけどこの前抱っこした子役の赤ちゃんと同じ感触なんだけど」
「きしょ、ちょ、すりすりすんな!」
「はあ〜、認めたくね〜」
優しく背中を叩いていた手の力が強くなりバシバシと音がする。直に触れている分仁人の体温が上がったのがわかって、何とも言えない気持ちになる。仁人のことは好きだ、いや、大好きだ。仕事でもなきゃ口に出しては絶対言えないけど、人生において、こんなにも信頼できて、安心できて、惹き寄せられてしまう人間はいない。悔しいけど、仁人だけだ。ひねくれていて、怖がりで、頑固で、口が悪くて、俺たちといても一人の世界に没頭するようなマイペースさがあって。でも、そのどれもが、優しすぎる柔い心を守るため彼が身につけた彼の武器だということを理解している。彼の優しさは驚くほど繊細で、それ故に気づけない人も多くて。でも、それでも何も言わない仁人を見るたび、優しさを感じるたびに、俺は泣きたくなるような感覚に襲われる。守りたいし、ずっと一緒にいたいし、抱き締められることに慣れていない彼を思い切り抱き締めてずっと大事にしまっておきたい気持ちになる。こんなの、メンバーや友達に向けるものではないということはもう随分前からわかってた。認めたら枷が外れてしまいそうでずっと見ないようにしていたのに。俺が弱ると決まって現れるこの男の前では、どうやったって取り繕えない。
「…勇斗がずっとアクセル踏んで頑張ってるの、俺は邪魔したくない。でも」
大人しくなった手を再び俺の背中において言う。
「俺は、お前が大事だから。俺のエゴで、お前のブレーキ踏んじゃうよ。どうしても」
人に嫌われることが何よりも怖い彼が、自分のエゴだと行って止まれなくなった俺を後ろからいつも止めてくれる。頼りなく震える指先で、それでも絶対に離さないというように。そこでようやく俺は忘れていた呼吸を再開できる。俺がお前を嫌いになれるわけがないのにいつまでたっても臆病で、でもそんな臆病よりも俺を大事だと言ってくれる。
「それが正解なんだよ。お前のわがままは、俺しか聞けないでしょ」
照れ隠しで可愛くないことを言う俺に、仁人は「んー、なんかムカつく」と零す。それすら優しさだって、俺は知ってる。
「俺は前しか見れないから、それしかできないから。グループのためだとか言っといて、突っ走りすぎて振り返ることを忘れる。俺ばかり気持ちが急いて、お前らがどんな顔してるかなんて、見る余裕もなくなる時がある」
「うん」
「…でも、お前がいる」
寸分の狂いもなく伝わるように強く抱き締める。
「お前がいないと、俺は安心して走れない。」
弱った心が解けていく。彼の優しさが沁み渡って、このどうしようもない気持ちを知って欲しくて。
「何があっても、俺のそばにいるって言って」
「……重いよ」
「そうだよ。こんくらい重い重石乗せとかないとお前逃げそうだし」
「例え逃げられたとして、お前追いかけてくるんでしょ?」
「当たり前じゃん」
俺のその言葉に、仁人は「こわ」と言って笑った。たぶん、嬉しそうに。
お前も大概重いと思うけど、って心の中で思っておく。
「何があっても、勇斗と一緒にいる」
数年に一度の仁人のデレの応酬。そのトドメの威力に、一瞬息が止まった。
思わず体を離して、彼の顔を確認する。
「見んなよばか」
気まずそうに逸らされる視線を掬う。
「やば、キスしちゃいそう」
「絶対ヤメロ」
「じゃあもっかい目見て言って」
「じゃあってなに?接続詞合ってないよ」
両肩を掴んで体勢を固定したまま、無言の圧で綺麗な顔を見つめる。
いつも以上に垂れた目尻と、観念したような情けない眉毛が見える。
吸い込まれそうな大きな瞳がようやく俺の視線と合わさった。
「何があっても勇斗と一緒にいるってば」
そう言ってすぐに逸らされた視線。真っ赤になった耳の縁。
弱ったところを溶かされて、その空いたスペースに今度は溢れるくらいの愛しさが流し込まれる。
俺は、この人が、どうしようもなく好きだ。
「うん。やっぱチューする」
「なっ、なんでだよ!」
ギギギ、と音が鳴りそうなほど俺の体を離そうとする仁人を、逃さないようにソファと俺の間に閉じ込める。俺を見上げる大きな瞳が零れそうなほど見開く。
「ちょちょちょ!もう元気じゃん!じゃあもういいよ!」
「いやいや、最後まで責任とってよ」
「もう治ってます!大丈夫ですよ!」
「治療の副作用で胸が苦しいです。どうにかしてください」
「〜勇斗!」
「俺のそばにいる限り、お前はこれを避けて通れないけど?」
そういうとぴっ、と変な声を出して止まる仁人。みるみる顔まで赤くなって、可哀想なくらい困った顔になる。
「…そこは俺の範囲じゃないでしょ…」
「お前だよ、ずっと前から」
じわりと大きな瞳に膜が張って静かに揺れる。
「ありえない。あっちゃいけない」
「なんで?ありえちゃってるんだけど」
「お前はいつか結婚して絶対いい旦那になっていい父親になるでしょ」
「いい旦那にはなるよ、将来は国民の父親目指してる」
「馬鹿じゃないの」
「馬鹿だよ。お前が好きでどうしようもない馬鹿」
明確な言葉を前に仁人の顔が歪んだ。滅多に見られない、泣きそうな顔。
「観念して、仁人」
そういって動けなくなった仁人にゆっくり口付ける。抵抗はない。ただ熱くて柔らかい唇の感触と、仁人が静かに目を閉じる気配だけを感じた。
仁人の気持ちも確かめていないのに、それでも、彼が俺を突き放すことができないほど俺のどんなことも受け入れている確信だけはあった。
ゆっくりと唇を離して至近距離で見つめる、ゆっくり開いた瞳。
「言ったじゃん。逃げられないって」
「こう言う意味とは聞いてない」
「全部だよ。何があってもって言っただろ」
「詐欺だ」
「そうやって戸惑っている気持ちごと、お前の全部俺が貰うから」
「俺もずっと、仁人と一緒にいる」
仁人の言おうとしていることすら全部奪って、もう一度顔を近づける。観念したように、今度はゆっくりと閉じられる大きな瞳。柔らかい唇を指先で撫でてから、口付けた。感じたことのない感情で埋め尽くされる感覚がした。
コメント
2件
突然すみません あの、すごい好きなお二人がいたのでコメント失礼します 2人の関係の描写がすごく好みで…刺さりました 拝読後の、この高揚感をお伝えしたくて…素敵な🩷💛ありがとうございます
読み終わりました…いや、もう、冒頭から引き込まれましたね。勇斗が仁人を「抱き締められることに慣れていない」と理解しながらも、どうしても触れたくて仕方ない心情の描き方が繊細で。特に「治療の副作用で胸が苦しいです。どうにかしてください」なんて言い訳、ずるいけど愛おしすぎる(笑)。仁人の「何があっても一緒にいる」という数年に一度のデレが、勇斗の重くて真っ直ぐな愛情に少しずつほぐされていく過程に胸が締め付けられました。お互いを守り合う関係性が尊い…続き、すごく気になります!