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「それじゃ、まずは私から言った方がいいかにゃ?」
「そうですね。
では、レヴィアタンお願いします」
「了解にゃ」
チラッとマモンとサタンを見たアスモデウスにマモンが舌打ちをし、その態度にサタンが苦笑いする。
レヴィアタンはその様子を特に気にした様子はない。
何時もの事なので一々気にしていたらいつまで経っても始まらないのだ。
「私はハーデス様の命を受けた後、森を抜けて暫く探索していたにゃ。
そこに丁度いいタイミングで商人らしき人間が通ったから拷問して、情報を聞き出す事にしたんだにゃ」
タイミングよく現れた商人の彼らにレヴィアタンは思わず笑ってしまったという。
その所為で護衛をしていた人間に気付かれてしまったが大した強さを持っていないのは遠目でも分かったのでさほど気にしなかった。
見た目通りの俊敏さを見せ護衛をしている人間を瞬殺し、馬車の中で震え縮まっている人間を見つけ、拷問を開始した。
その時の事を楽しそうに語るレヴィアタンの顔には隠しきれない嗜虐性が浮かんでいた。
彼女は過去に奴隷として捕まり人間によって辱めを受けさせられ、時に見世物として拷問に近い虐待をその身に受けた。
ハーデスによって救われるまでそれは続き彼女の中にドス黒い闇を生み出した。
拷問好きで相手を痛めつけるのを好む性癖を生み出したのは人間であり、彼女の最初の犠牲者は彼女を奴隷として買い取った小太りの男であった。
豚のように鳴く姿に、彼女は笑いながら拷問したという。
「ただ拷問に没頭し過ぎて3人いた人間の内2人は死んじゃたし最後の1人も殆ど喋れない状態になってたんだにゃ」
にゃはは、失敗したにゃとその言葉の割に楽しそうに笑うレヴィアタン。
拷問された側は一切笑えない。
反応も悪くなり、情報が期待出来ないと判断したレヴィアタンは最後の一人を殺そうとしたが、不意にハーデスの魔力の高まりを感じ何かあった事を瞬時に悟った彼女は城に帰還する事を選んだ。
その際、拷問の影響でボロボロの人間を殺さなかったのは彼女のただの気まぐれである。
そこまでの流れと拷問で聞き出した情報を耳にした彼らの反応は様々である。
「僕の知っている情報ばかりだね。
まぁ短い時間でよく集めた方だよ」
「んー、あたしは幾つか知らない情報があったから助かったッス。
レヴィみたいに人間に聞いた訳じゃないッスからどうしてもそういう情報は集まらないんスよね」
「私は1度レヴィアタンに聞いているので特に言う事はありませんね。
それと、まだ言い忘れている事がありませんか?」
「にゃ?」
首を傾げる彼女にアスモデウスが小さく耳打ちをした。
その言葉に漸く思い出したように笑うレヴィアタンにアスモデウスは心中で舌打ちする。
ハーデス様の命を忘れるとは何事か⋯⋯。
僅かながら怒りを覚えるもそれ表に出す事は事はない。
事、感情の制御においてアスモデウスの右に出る者はいない。
誰より相手の感情に機敏に反応し、それを利用し自分が優位に立つ事を好むアスモデウスが自分の感情の制御が出来ない訳がない。
常に相手より優位に立つには決して自分の感情に呑まれたらいけないからだ。
怒りの感情を呑み込んだアスモデウスはレヴィアタンに話すよう促す。
「実はもう一つあるのにゃ。」
「何だい、言ってご覧よ」
「私の報告が丁度終わった頃にベヒーモスが戻って来て、ハーデス様に報告を行いにきたにゃ」
「へぇ、あの脳筋が⋯⋯。
以外だね」
「ふふ、ベヒーモスはハーデス様が直々に神の魂を使って生み出した魔獣ですよ。
その身がミノタウロスの為、少しばかり知恵が足りませんが優秀な僕であるのには変わりませんよ」
「⋯⋯チッ」
「そこ、舌打ちしないにゃ。
で、話を戻すけどベヒーモスの報告は私と全く一緒だったにゃ。
そこまでは大したことじゃないんだけどベヒーモスは人間を担いで帰って来たんだにゃ」
「人間を持って帰ってきたんスか」
「うん、それも城に落ちてたから拾ってきたらしいにゃ。
ベヒーモスはその異常性に気付いてなかったみたいだけどにゃ」
「なっ⋯⋯」
「やっぱり脳筋だね、あいつは」
「無限城に人間が落ちている。
それだけで異常な事ですからね、本来なら気付いてもいい筈ですが」
「ま、ベヒーモスだからにゃ⋯⋯。
それで、ハーデス様もその人間の異常性に気付いて、始末するのではく生かしてその秘密を知る事を選んだのにゃ。
私はハーデス様にその人間の世話と監視を任された訳にゃ」
「ハーデス様に人間の監視を任されたなら、どうしてここにいるんだい?」
「人間の意識は暫く戻る様子はないし、念の為従属獣の猫を監視に置いているから何かあったら直ぐに分かるから問題ないにゃ。
あ、後。ハーデス様は暫く外に出るらしく多分中々帰ってこないと思うにゃ」
しれっと大丈夫な事を言うレヴィアタンに他の2人は驚愕を浮かべ、マモンに関しては明らかに苛立っている。
その様子にレヴィアタンは耳を倒し涙の浮かんだつぶらな瞳で3人を見るが、この場にそのような事が通じる優しさを持った者はいない。
直ぐにその事に気付いたレヴィアタンは素の表情に戻り小さく舌打ちした。
女は女優である。
「今明らかに舌打ちしたっス!
レヴィが悪いのに反省の色が全く見えないッス」
「私もその事は知らなかったので、その態度は流石にくるモノがありますね。
人間が落ちていてその監視役を任されたという事しか聞いていませんよ。
大事な事をまた忘れてたとでも言うのですか?」
「どうなんだい、レヴィ」
悲しい事に周りには敵しかいないようである。
その事を悟ったレヴィアタンは諦観したように笑った。
「ド忘れしたにゃ」
───マモンとサタンに殴られた。
「それで、もう忘れている事はないかい?
何ならまた叩いてでも思い出させてあげるよ」
「ハーデス様が私達に引き続き情報を集めるよう命じただけにゃ。
いつ帰るとかも聞いてないにゃ⋯⋯」
頭を抑え涙を浮かべるレヴィアタンを睨むように見るマモンにレヴィアタンはフルフルと震えながら口にする。
しれっと、また大事な事を言った事にどうやらこのバカ猫は気付いていないようだ。
今の発言で再び、マモン達が冷たい視線を向けているというのにレヴィアタンは拗ねたようにブツブツと文句を呟くだけでその事に気付いていない。
はぁ、と3人がほぼ同時にため息をついた。
「まぉ、いいでしょう。
ハーデス様が我々にそう命じたなら我々はその命を遂行するだけの事。
引き続き情報を集めればいいだけの話ですからね」
「悪いけど、僕はそんな事を言ってられないんだ。
ハーデス様がいつ帰って来るか分からないのは正直不味い」
「どういう事っスか?」
「簡単な話だよ、僕の話がこの中にいる誰より有用って事さ。
それこそ今すぐにでもハーデス様に伝えないといけないぐらいにね」
マモンのその発言に拗ねていたレヴィアタンすらムッとする。
アスモデウスですら僅かに機嫌が悪そうにしているのだからその発言に余程頭に来たのだろう。
だが、流石はアスモデウス。
直ぐにその怒りを呑み込みその顔にニヤニヤと笑みを浮かべながらマモンを見た。
その様子にマモンは舌打ちし、同時にアスモデウスが何を言いたいか言う前から察していた。
「おや、そこまで自信があるなら私達にも是非教えて欲しいものですね。
貴女の言うこの場の誰よりも有用な情報とやらを」
「別に構わないけど、君に謂われると何だか釈然としないね。
言う気が失せるよ」
「いいから言うにゃ」
「そうッス!」
どうやら先ほどのマモンの発言は完全に3人を敵に回してしまったようだ。
明らかに言い方がキツくなっている。
その様子にマモンはため息を吐くと、仕方ないかと小さく呟き話始めた。
「勇者がいたんだよ」
「それはさっき私が言ったにゃ!」
「レヴィは実際に見てないッスけど、勇者の名を冠する冒険者がいる事はレヴィの話で分かってるッス」
「やれやれ、どんな情報かと思えばそんな事ですか。
それの何処が私の情報より有用だと思ったのやら」
「あたし達ッスよ。
何、自分の情報だけが有用みたいな事言ってんスか!」
「そうにゃ! そうにゃ!
何、しれっと言ってるにゃ、私の1番に決まってるにゃ」
「あたしッスよ!」
「それこそ有り得ませんね」」
騒ぐ3人をマモンは冷めた目で見ていた。
この中で唯一、状況を理解しているからこそ目の前で騒ぐ3人が酷く滑稽に思えた。
何も分かっていない⋯⋯。
心中で呟きながら、この目で確かめたものを思い出して忌々しそうにその手を強く握った。
僅かに漏れたマモンの怒気に騒ぐのを止めた3人が視線を向ける。
「何も分かってないね、君たちは」
「何が言いたいのです」
「僕が言った勇者はレヴィの情報にあったやつじゃないと僕は言ってるのさ」
「どういう事ッスか?」
「いたんだよ、僕達の世界の勇者が」
「ッ―――!」
その言葉にマモンを除く3人が息を呑む。
「『黄昏の勇者』アルフォート・エルシフルがね」
「それは真なのですか?」
「遠目だけどハッキリと確認したよ。
君は僕が間違えると思うかい?」
「っ。失言でしたね。」
マモンのその鋭い瞳は万物の魂を見る事が出来るとされる。
容姿が似る事があっても魂までも同じである事はない。
魂を見る事が出来るマモンが最も忌々しい敵の魂を忘れる事も無ければ見間違う事など有り得ない。
そこで漸く、今の状況の不味さを理解した。
───黄昏の勇者、アルフォート・エルシフル。
人類最後の希望にして、異種族にとっての不倶戴天の敵。
ハーデスによって神が殺され、加護の減少によりその力が弱まりながらもその才と並外れた技量によって最後まで抗ってきた忌々しい敵。
『煉獄七魔将』は何度も剣を交えているにも関わらず最後まで勇者を討ち取る事は出来なかった。
結局、ハーデス自らが勇者を殺しその光景を彼らは確かに見ていたのだ。
「まさか、生き返ったというのですか。
しかも異なる世界に」
「それも私達がいる世界って、流石に笑えないにゃ」
「最悪ッスね」
ハーデス自らが殺した忌々しい敵が生き返りこの世界にいる。
それだけで腸が煮えくり返るほどの怒りを覚えるというもの。
それほどまでに勇者という存在は異種族(あくま)にとって忌々しく、そして脅威であった。
騒ぐ彼らに対し酷く冷静なマモンは更に爆弾を投じた。
「それだけじゃないよ。
どうも全盛期の力で生き返ったみたいだ」
「ふふ、笑えない冗談ですね」
「冗談だと思うかい?」
「⋯⋯⋯⋯」
「分かっただろう、どれだけ不味い状況か。
僕が何故今すぐにでもこの情報をハーデス様に報告したいか、馬鹿じゃないなら理解出来る筈だよ」
彼らが勇者と闘う事が出来たのは神の死により力の大半を勇者が失っていたからだ。
そうでなければこの世で唯一、魔王と闘う事が出来る勇者と闘える訳がない。
否が応にもその状況の不味さを理解する。
「だからこれから僕はハーデス様を追いかける。
何処にいるかはまだ分かってないけど、必ず見つけて報告するつもりさ」
「そうですね、それがいいでしょう。
それと、勇者が何処にいるか一応、聞いておいていいでしょうか?」
「そうだね、伝えておいた方がいいかな」
そしてマモンは口にする。
敬愛するハーデスを唯一傷つける事が出来る忌々しい敵の居場所を。
「カルラ村、そう呼ばれる小さな村に勇者はいる」
✱
マモンが居場所を伝え、急いで勇者の事をハーデスに伝える為に城を飛び出た頃、それが完全に無駄であると告げるように───。
「魔王ハーデス」
「黄昏の勇者、アルフォートか」
───2人は会遇した。