テラーノベル
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「寧々ー葵ーおはよー!」
「煌神!おはよう!…今日ちょっと遅いわね…?」
「確かに、煌神ちゃんにしては珍しいかも?」
朝。ホームルームまでにまだまだ時間は余っているがそれでもちょっと遅れてしまった。当然、寧々や葵にも心配されるわけで…
「あはっ、大したことじゃないよ?今日、運が悪くて全ての信号に引っかかったのよ…」
とほほ。と微笑する。
(今日は…嫌な事が起こりそうね……)
そう、自分の直感が告げていた。“何”とは言えないがとても、嫌な。
──────────
その、嫌なことはすぐに起きた。数日前に起きたミライ脱走事件。時計守の一人が騒動を起こしたあの事件だ。今回もそれが起きた。前回までの規模とはいかなかったが、高等部一年A組のみがそれに侵された。当然、寧々をそのミライに触れさせることは厳禁であり、警戒していたが、あと少しのところでミライを抑えることが出来ず寧々に触れさせてしまった。その後すぐ捕まえ茜に渡したのが…。飛んだ失態である。
立花で、祓い屋で……八尋寧々という人物がもう寿命が少ないということを、知っていたはずなのに。以前も同じことがあったと教えて貰ってたはずなのに。自分って……
しかし、もう過ぎてしまったことである。取り敢えずカコに会い一年A組を朝の状態に戻してもらわねば。とは言っても茜がいるわけなので簡単だが。
***
はーっ……と大きな、長い溜息をつく。さっきの出来事がかなりショッキングだったのだろうか。
自分の中で一つ覚えていることがある。姉達の死に際だ。最も幼かった煌神にとってかなりなトラウマだ。今更こんなことを思い出すだなんて。やはり今日は運が悪いようだ。
「大丈夫?さっきから顔色悪いけど…体調悪いなら、無理にトイレ掃除に付き合わなくてもいいのよ?」
「っ……!あはっ、だ、大丈夫よ〜これくらい!ほら朝にも言ったじゃない?今日運悪すぎて、ショック受けてるだけだからー……」
まあまあ、得意であろうポーカーフェイスを披露する。……でもやっぱり白々しかっただろうか。だが、言ったことは嘘では無い。
(……やっぱ、私って、弱いな)
その場では感情的になり過ぎていたがこう時間を置いて考えるとそう思わせる。明日からまたハードな修行かなあ…と考えていた煌神だったが、どうやら女子トイレについたようだ。
「はーなっこくん!」
「お、来たね。今日は少女も一緒…っと」
「どーも。今日は暇だからね」
そんなことを言いながら掃除用具を取り出す。初めてながらにしては結構手際よくやっていた。寧々と二人で掃除を進めていくうちにこんなことを尋ねられた。
「そういえば…煌神って、光くんと同じで由緒正しき祓い屋の一つなのよね?」
「んー…ま、そうね。全部同じってことはないけど、内容としてはあまり変わらないわね。例を挙げるとすれば、立花は主に水を扱うの。“お祓い用の特別な水”とでも思ってくれればいいわ。源家は雷だったわよね…あとは、一応年季入ってて日本なのは確かだけど結構洋風ところもあるのよね。違いと言えばそのあたりかしら」
「意外と違うところも多いのね?」
目を輝かせながら聞いている。もちろん、花子も聞いていて。
「ま、そうかもね」
これ以上、立花の過去に触れられる訳にはいかない。適当に受け流し掃除を終わらせた。
***
掃除が終わった後、花子は特にやることも無く暇つぶしにでもと、土籠のいる場所─理科準備室に向かっていた。しかし、どうやら取り込み中なようだ。話し声が聞こえる。
「────で、何故アンタらが教師に化けてる?それも、姉妹同時に」
耳を疑った。土籠は一体何を言っているのか?彼がおかしくなったのかはたまた自分が。
「どうも何も無いわよ。暇つぶし兼見回りよ。午前中のね」
「なんでったって教師なんか…」
「これでも一応教員免許はもってるのよ?姉は地学、私は化学を主にね」
ほら。と教員免許を見せる。零の教員免許には化学の他に国語と書かれていた。確かに、大分昔のではあるが嘘ではないらしい。しかし、大人になる前に七不思議になったのでどう免許を取ったのだろうか。疑問しか浮かばないが。
「ねーねーねー二人ともなんの話ししてるノー?」
相変わらずわざとらしく言ってみる。まるで今ここに来たかのように。
「おお、七番サマ。ちょうどいい所に。こいつに一発言ってやってください」
「何をさ?」
「立花姉妹が教論に化けて学園内をうろちょろしてるんですよ」
んー…と、悩む素振りしてから、こんな結論に至った。
「いーんじゃない?別に」
「はあ?!ちょ、アンタ正気か?」
「もー土籠ったらー結構長い付き合いなんだからさーこれくらい解んなくちゃ。…そ・れ・に。午前中に見回りしてくれるのはありがたいからネ」
「はぁ……もう、好きにしてください。俺ァもう何も言いませんから」
諦めがついたのか、溜息を付いて理科室に入っていった。その一方でやったーと喜んでいる人が二人、理科準備室に響くのだった。
***
時は夜。立花煌神は今日の反省。それも、任務に滞りがあったというおまけ付きの反省を活かし前回よりもかなりハードな訓練をしていた。不規則に動く敵役ロボットとの対戦だ。ちなみに、耐久性はとても高い。
──戦闘開始。煌神はロボットに接近し回し蹴りを入れる。が、それは遮られた。その反動を利用し防がれている腕の上にたち距離を置く。そこで、翠神札を浮かばせ印を組み出した。
もし、本当の怪異と対することになった時、時間との勝負となる。あまり長居は良くない。それが、力が高い怪異なら、尚更。
「水鞠」
翠神札からの聖水を複数に分けロボットに付着させるそして氷へ状態変化させる。
身動きが取れなくなったロボットに再度接近しコアを貫く。
(……即時対応がまだ出来てない。か…)
そんなことを考えているうちに次々と敵役ロボットが湧いて出た。
(一……)
右手を横に、水糸を引く。
(二……)
そこから中心左上に持っていく。
「三……!」
下げ、中心に持ってきた後、結晶化させた。すると、結晶から五つの聖水がロボット達を取り込み、聖氷化とする。聖氷化した聖水にコアが貫かれ意思を失う。
「っ……はあ、はっ……」
ふと時計を見る。気が付けば夜零時を回っていた。今日はここまで。と、ロボットを片付け、屋敷へ戻って行った。
───立花の屋敷にだけ咲く、特別な五つが花弁を散らしていた───……
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