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春の陽だまりのような午後。ゆったりとした音楽が流れるカフェの窓際で、みことはぼんやりと外を眺めていた。
「…ねえ、みこちゃん。俺の話、聞いてた?」
「えっ? あ、ごめん。お花見の話だっけ?」
すちは小さくため息をつくと、笑ってみことの頭をぽんと撫でた。
「天然はいつものことだけどさ。こうやって気ぃ抜いてると、誰かにさらわれちゃうよ?」
「えー、すっちーがいれば平気だもん。」
その言葉に、すちの表情が一瞬だけ変わった。
穏やかな微笑みの奥に、ほんのわずかな独占欲がにじんだのを、みことは気づいていない。
(ほんと、無防備すぎ。……誰にも渡したくないって、思ってるのに。)
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静かにページをめくる音と、微かに聞こえる時計の針の音。
すちとみことは並んで座っていて、教科書を開いてはいるものの、会話はほとんどない。
「……すっちー、わかんない……」
小さな声で呟いて、みことがすちの腕にくっつくようにして顔を覗き込む。
「どこが?」
「このへん……数字いっぱいで眠くなってきた……」
「じゃあ、俺の隣で寝ちゃう?」
「えっ、いいの?」
「みこちゃんだから許す。他の人は無理だけど。」
ぽけっとした顔のまま、みことは「へぇ~」と口を開けて笑う。
「……すっちー、意外と怒るとこあるんやね。」
「あるよ、俺にも。特に、みこちゃんが他の人にくっついてる時とかさ。」
「え? くっついてないよ?」
「昨日、頭ぽんぽんされてたでしょ。」
「あー……されたかも? でもすっちーの方が気持ちいいよ?」
すちの指が止まった。
すぐにみことは「あ」と自分で気づいて、照れたように目を逸らす。
「……そういうとこ、無自覚で煽ってるよね?わかってる?」
「…わかってない……ごめん……?」
すちは小さく笑い、隣の天然を抱きしめたい衝動をなんとか抑え込んだ。
「まぁ……俺の隣はみこちゃんで満席だからね。」
「うん……すちくんの隣、落ち着くもん。」
その言葉だけで、すちは少しだけほっとして、 教科書を閉じた。
「……今日は勉強、もういいや。みこちゃんと一緒に話す方が楽しい。」
「え、勉強しようよ……って、すっちーがそんな事言うの、珍しい……」
「気づいた? みこちゃんのせいだよ。」