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大学の裏門を抜けた坂道。静かに並んで歩くふたりの間には、ちょっとだけ甘くて、ちょっとだけくすぐったい空気が流れていた。
「……今日も一緒に帰ってくれてありがとね、すっちー。」
「ううん、俺が勝手についてきてるだけだよ。」
「ふふ、でもうれしいよ。すっちーと一緒だと、落ち着く。」
その言葉に、すちは小さく息を吸った。
ポケットの中で握っていた手が、少し汗ばんでいる。
(……今言わなきゃ、きっとこのままずっと曖昧なままになる)
「ねぇ、みこちゃん。」
「ん?」
みことが振り返る。相変わらずぽやっとした顔で、でもちゃんとすちの声を聞いていた。
「……俺、みこちゃんが他の人と喋ってるだけで、なんか嫌…。」
「え?」
「隣にいるだけでもっとこっち見てって思うし、ふとしたときにその手とか、俺だけのものだったらいいのに、って思う。」
みことの目が少し丸くなる。
すちは一瞬目を伏せ、けれどすぐにまっすぐ見つめた。
「だから……好き。俺と、ちゃんと付き合って。」
みことはしばらく黙っていた。
夜風がふたりの間をすり抜ける。
「……なんか、すっちーらしい告白やね。」
「そうかな?」
「うん。でも、うれしい。……俺もね、すっちーといると、心があったかくなる。」
「……それって」
「うん。……すちくんの隣、ちゃんと“俺の特等席”にしてくれる?」
すちは息を飲んで、すぐに苦笑いのように微笑んだ。
「もうとっくに、みこちゃんの席だったけどね。」