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僕の物心がつくとき、お父様は僕にこう言った。
「妾でもお前は大切な跡継ぎだ」
その言葉の意味が最初は分からなかった。ただ、自分はお父様に愛してもらえている。そう、思っていた。
ずっと、勘違いをしていた。
お母様は僕と話したことはなかった。それをお父様に言ったら「お前の母親はこの世にはいない。今の私の妻はお前の母親ではない。だからお前のことを嫌っているんだ」。
そう、言われた。
妾の子。それは特別な子供ってことじゃなく、恥ずかしい子供だということに気づいたのは僕が12歳になる頃だった。昨日まで僕に笑いかけてくれた使用人たちが余所余所しい態度を取り、僕のことを見て蔑み笑うようになった。だから…何故、僕を見て笑うのか、そう聞いた。
「旦那さまのご子息が愛人の子供だなんて、如月家はなんて汚れた家なんだ。」
それが答えだった。妾というのは特別でもなんでもなくて、お父様が愛人に産ませた望まれない命、恥ずべき命。
僕がお父様に愛されていると思っていたのは全部嘘で、お母様が僕を嫌うのは僕のことを必要としないからで……僕はなんでこの世に生まれてきてしまったんだ。そう嘆いた。
「これをお前に渡しておく。」
15歳の誕生日にお父様から渡されたもの。それは通帳だった。お父様曰くこれは僕を作ってしまった責任で貯めた慰謝料だった。これを受け取ったとき、お父様はこう言った。
「これでもうお前への柵も未練も罪悪感もない。この屋敷を渡すから、もう私たちとは必要以上に関わらないでくれ。お前が庇う卯月の家のものたちなど私たちは要らない。お前の好きにしろ。お前の役目は如月家の跡継ぎの肩書だけでいい。私が正当な後継者を作れるまでの代わりでいい。」
この時、僕はやっと悟った。お父様が僕に向けていたものは愛情ではなく、便利な捨て駒という只の道具の認識でしかなかったこと。咲月の家を助けたいと言った時何もしてくれなかった理由。もう、この屋敷に両親が帰ってくることがない。僕は屋敷と金と共に棄てられた。
だからもうすべてがどうでもよくなっていた。作り物の立場、偽物の跡継ぎ。僕自身には価値が無く、作り上げられた嘘を信じる使用人たち、孤独な僕の人生。どうせ無いものなら、最後くらい如月家の立場を利用してやろうと思った。それで人間オークションにも参加した。
オークションにいる奴らも皆親に金にされた奴らばかりで、なんて憐れで可哀そうな生き物だろう。そう思った。
でもそんな僕の認識を変えたのが命だった。たとえ笑われても、何て言われようとも決して泣き言を言わず、勇ましく生きる姿に僕は高揚した。この少女を手に入れれば僕は幸せになれるんじゃないか。僕の人生は意味のあるものになるんじゃないかと。如月家のブランドと財力を使って100億なんて値段をつけたのも他の誰にも渡したくない。そんな僕の独占欲だったのかもしれない。