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咲月さんに如月さんのことを聞いたとき、最初は意味が分からなかった。それはもちろん『妾』という言葉の意味が分からないということでもあったけど、なんで咲月さんは私にそんなことを言ったんだろう。わざわざ如月さんの秘密を打ち明けたんだろうって思った。
如月さんの秘密を私が知ったところでなにかが起こるわけでもない。それに、咲月さんの立場が危なくなるんじゃないか。そうとしか思えなかった。
だけど咲月さんは私にこう言った。
「……且功は俺の命の恩人だから。だから乗り越えてほしい。自分が生まれたことが不幸だなんて思わないでほしい。人に優しさを与えられるような自分がいたことを思い出してほしい。だけど…俺の言葉じゃ且功には届かない。俺はあくまでも主従の関係だし、きれいごとを言える人間でもない。でも命の言葉なら……命の存在なら何か変わってくれる、そう思うんだ。シナリオは俺が全部作る。俺が命にやらせたと言ってくれても構わない。だから命は、命が思うことをそのまま且功に伝えてほしい。失礼な言葉でもいい、試すような言い方でもいい。ただ、命から伝えてほしい。命が且功を変えてほしい。」
私にはそんな大きいものを背負わされても何もできない。馬鹿だからってわけじゃない。何かをして怒られるのが怖いわけじゃない。ただ如月さんのことを私は知らなすぎるから。
だけど咲月さんに話を聞いたとき…如月さんの今までの口調が、態度が、行動が全部悲しく思えた。寂しく思えた。口調が悪いのは人になめられないため。態度が大きいのは本当の自分を気づかせないため。あの時蹲るように泣いていたのはずっと温もりを求めていたため。
これはきっと同情かもしれない。可哀そうなんて偉そうに思ってるだけかもしれない。だけど……たとえ、玩具として私を買ってくれただけだとしても…私も何かできることがしたい。私に不自由のない生活を与えてくれた如月さんにも、不自由のない人生をおくってほしい。笑ってほしい。
「如月さん、私、如月さんがこの部屋に入ってくれたら、もう何も生意気なこと言わない。もう出ていくなんて言わないから。だからお願い。如月さんの手で扉を開けてほしい。」
こんな私の言葉が如月さんのためになるなら何度でも言う。だからもう、生きるために怖がらないで。