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1 ◇妻ご乱心? 知らなかった夫の顔
私は今の会社に新卒で入社してからン十年勤めている独身で、所謂お局的存在なんだけど、
煙たがられないように周りの若い女子社員には気配りを忘れないし、口は堅いほう。
だけど先だっての、3年に一度既婚者は配偶者や子供と参加してもよいと
言われている会社の慰安旅行での樋口瑛士の妻の言動は、明らかに常軌を逸していたと思われ、
それで口の堅い私だけど、つい樋口くんに尋ねてしまった。
「ね、あなた奥さんに何かした? それとも女性に盗られることを
脅えるくらいあなたのことが好きなのかしら? あなたの奥さん。どっちかよね?」
私は奥さんが彼を激しく憎んでるように思えた。
──と言って、まさか本人にそんなことを面と向かって訊けるはずもなく
意味不明でそれでいてちょっぴり過激ともとれる発言で彼を挑発してみたのだ。
「藪から棒に何を言うかと思えば。どうしてそんなことを俺に聞くんだよ」
「あなたの奥さん旅先で若い女子社員に向かってすごいことを言ってた
からさぁ。気になっちゃって、私」
「そういうのいつもの関根らしくないな」
「でしょ?
私もそう思うけど、いつもの冷静な私を突き動かすほどの発言だったのよ」
「な、それでどうなんだよ、そのすごい俺の妻の発言を俺に聞かせたいの?」
とても奥さんがすごい発言をしたなんて信じられないとでも
言いたげで、樋口瑛士は私にそんなふうなセリフを放った。
「あなたに心当たりがあってもなくても、是非とも聞かせたいわよ。
たぶん、あなたショック受けると思うけど、何人もの人が聞いてたことを
当の本人である樋口くんが知らないっていうのもねぇ~、実は私何かぁ
この辺がモヤモヤしてて嫌なのよ」
そう言って関根は自分の胸の辺りを苦し気に押さえて見せた。
俺に従順でどちらかというと大人しく控えめでLOVE.LOVEな妻が、一体全体
どんな言葉を吐いたというのだ。
まるで物議を醸すような言動だったと言わんばかりだ。
くだらないジョークを本気にしているとか?
とにかく関根は『妻の語った話を聞かせてほしい』という言葉を
俺に言わせたくてたまらないようだ。
大して聞きたいとも思わないが、この流れでは『それで?』と聞いてやるしかあるまい。
2
「はいはい、分かったよ。それで? 妻は女子社員たちに何て言った?」
俺の質問を待ちかねたように関根の目がメラキラッと光った。
「ほらっ、今年入社したばかりの田中さん、彼女ったら奥さんが目の前に
いるっていうのに、あなたが自分の憧れでどれほど素敵かっていうことを
熱弁して奥さんに向かって羨ましいって言ったのよ」
◇ ◇ ◇ ◇
「あんな素敵な男性を旦那さんに持てた奥さんが私すっごい
羨ましいですぅ。いいなぁ、羨ましい……」
「あげるわよ。
夫を堕とせたら夫をあなたにあげる。
私がいいと言ってる今なら不倫しても慰謝料も取らずにほいほいっ
あげてしまうわよ?
我こそはと思ってる人は、さぁ──どうぞ~」
樋口眞奈の申し出に、その場で話を聞いていた若い女子社員たちは
色目気だった。
そんな中、ただひとりお局の関根槇子だけが眉を顰めていたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
俺は当時の女子社員と妻の会話を聞かされ、愕然とした。
当然のように俺を捨てようとするかのようなその妻の言動に。
あれから妻との生活の中では、そんなことがあったなんて感じさせる
ような素振りが微塵もないから、よけいに狐につままれたような気持ちになる。
俺はいくら考えても心あたりがなく、きっと妻は妬ましく取れるような新人女子社員の言葉が
疎ましくなって、挑発したのだろうという結論に達した。
そして、日々の暮らしの中で関根から聞いたこの時の話も、俺は徐々に忘れ去ろうとしていた。
◇ ◇ ◇ ◇
私たちは互いに年収の高い夫婦でおしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきた。
妻の家族にも気配りしてくれるやさしい夫、尊敬していた夫、
ストイックでアダルトビデオなんて見たことがないという夫。
そんな彼のことを信じもし、とても愛していたのに……。
今まで夫のスマホなど見たことがなかった。
◇ ◇ ◇ ◇
たまたま夫が家にスマホを忘れて行った日、私は自身遅出だったことから
好奇心で彼のスマホの中を見てしまい、自分の知らない夫の外向けの姿を
知ることになってしまう。
LINEなどで夫が言葉遊びしている相手は2~3人いるようだった。
下品な話題でモリモリ盛り上がっていて、すごく楽し気な様子が
窺い知れた。
私は軽くめまいを覚えた。
もう読むのを──
自分の知らなかった夫の姿を知るのを──
やめなきゃって思うのに、私はやめることができなかった。
その日、職場に病欠の届けを出し、私はLINEの続きを遮二無二 読み耽った。
夫は全く削除というものをしてなくて、面白いほど外面の彼の姿を
その小さな機器スマートホンから伺い知ることができた。
実際にデートなどしている女性もいるようだ。
年齢は皆私たち夫婦よりかなり若かった。
世間では、男性というものは女は若ければ若いほどいいと聞いてはいたが、
我が夫だけは違うと私は思い続けていたのだ。
笑えるぅ~何の、どんな根拠があって私はそんな世迷いごとを信じて
これたのか、本当におめでた過ぎる。なんなの、まったく。
頭はかなり混乱していて、とても動揺失くして続きは読めなかった。
めまいのあと、動機までしてきて手の震えが半端なかった。
どういうわけか、読めばよむほど途中で忘れたスマホを夫が取りに
帰ってきそうな気がして、私は焦りながら各々とのやり取りを読み進めた。
あぁ~とうとう、こんなものまで。OH MY GOD!
神様嘘だと言って──ウソだと。
女から下半身の裸体画像が送られてきていて、その返しだろうか──。
夫は自分のナニがもっこりと分かるボクサーパンツ姿のはっきりと映った画像を、
相手の女に送信していたのだ。
私の怒りはMAXを迎えた。
もしも目の前に夫本人がいたなら、私は泣き叫び、どういうことだと──
私を騙してこんなことしてと──問い詰め暴れていたかもしれない。
それほど目の前の現実は、私を発狂させるのに充分だった。
コメント
1件
うわっ、これは…衝撃的な第1話!!😳💦 冒頭の奥さんの「あげるわよ」発言から既にヤバい空気漂ってたけど、まさか夫のスマホにそんな裏の顔があったなんて…!12年もおしどり夫婦をやってきただけに、妻の怒りと絶望が痛いほど伝わってくるよ…。めまいとか動悸の描写がリアルすぎて読んでて胸がギュってなった😭 続きが気になりすぎる〜!!💕