テラーノベル
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3 ◇ほとほと疲れた
それからも延々と相手を変え言葉を変え、卑猥な話を楽しんでいた夫。
保存したり何度も読み返したりしたので、納得して夫の携帯を閉じた頃には
もう夕方になっていた。
疲れた……ほとほと疲れ果てた。
私は夕食も作らず入浴だけして寝た。
夫へは体調不良とメモに記して。
とても夫の食事を作ることも同じテーブルで食事を摂ることもできそうになかった。
布団に入る頃になると怒りよりも悲しみのほうが大きくなっていて、途方
に暮れた私は、小さな女の子のように背を丸めて泣きながら眠った。
夫が不倫をしているのか、それとも気晴らしにただのLINE交換やら
デートくらいのことで終わらせているのか、私には判断がつきかねた。
翌朝起きると早出の夫はパンを焼きハムエッグにサラダを付けた皿にラップをし、
プラス私への気遣いのメモまで付けて出社していた。
今は彼の受け止めきれないやさしさが胸に染みる。
私は翌日職場で、今回のことを知り合いの旦那さんの話として、昼食の時間に
親しくしている男女にそれとなく話を振ってみた。
夫のやっていることはとても許せるようなことではない。
──が、あまりに自分の許容範囲を越えているがために、自分の足元の危うさや脆さに、
呑まれてしまいそうで怖かった。
何をどうすれば、今の惨めでズタボロな自分の気持ちを救えるのだろう。
私はどこかに救いはないのかと、そんな何かを探したかったのかもしれない。
自分がほぼほぼ自分と比べて同列の常識人と認定している人たちの意見が
知りたくなったのだ。
たまたまその日居合わせた男性4人と女性2人が口を揃えて言った。
40才で高収入、子供のいない既婚男性でたくさんの女性とすでにデートにも
何度も2人きりで行ってるなら、何もないなんて200%ないないという話だった。
ただ楽しんでいるだけかもと言ったのは1人だけで、それも条件が付いていた。
よほど奥さんLOVEなら奇跡はあるかもね──とのことだった。
でも裸に近い画像の遣り取りをして、やらしい会話も楽しんでるとかって
もうヤッてるって言ってるようなものじゃない? とも。
こうして私は、自分が何て世間知らずなのかを思い知ることになった。
4 ◇浮気それとも不倫?
結局、全員の意見は、夫が不倫なり浮気はしているという結果になった。
本気度のあるのが不倫なのか?
じゃぁこれまで私に別れてくれとは言ってきてないのだから、
もしあるとするならば浮気なのか。
今の私からするとどっちでもいい、大した差は感じない。
奥さんの前では真面目でも男って外じゃ何してるか分かんないわよぉ~って
至極真っ当な意見もあり……って、私は聞くまで信じられない派だったんだけど、
結局6人の意見はSEXなんてとうの昔にバンバンやってるでしょう、という結論
だった。
私ってほんとに世間からズレてるんだって、ものすごく落ち込んだ。
だけど、しようがないじゃない。
夫と私はこの10年間レスで、ただの一度もSEXしてないのよ。
だから夫は女性の体にはもう興味がないって思ってたんだもの。
性交には淡白な人なんだと思ってた。
『俺は性欲にまみれた下品でやらしい大人のビデオなど興味もないし、見たいとも思わない』
といつだったか話していたのを聞いたことがあって、だから──そんな夫に私からSEXを誘う
なんてことは、とんでもなく垣根の高い行為だった。
高い垣根どころか私には倉敷某所のまるで刑務所のような蔦が絡まる
石造りの高い塀のようなものだったのだ。
だけどそういうことじゃなくて、単に私には興味を失くしてただけのことで
若い女性には、じゃんじゃん興味有りだったんだ。
辛すぎる。
それにしても、職場の人たちにこれが自分の夫のことだなんて知られたら怖過ぎる。
もう二度とこの話題は出さずにおこう。
危険過ぎて、 おそろしい。
5 ◇気の毒な人の仲間入り
ここのところ、夫のことを極力避けてるし食が進んでないのを感じてる夫は、
すごく私のことを心配している。
今夜は夫の方が先に帰っていたこともあり、ご馳走を作って待っていてくれた。
そして……『たくさん食べろよ』ってやさしい言葉をかけられた。
今までだったらうれしく思う気持ちで、その言葉が胸に届いたのに、今はもう駄目だった。
白けてしまって──どっちらけもいいとこ。
急に悲しみに襲われて、涙が出そうになるのを止めるのが精一杯。
読んで目に入ってきた彼らの交わした言葉の羅列が、頭からこびり付いて
離れてくれない。
全てにおいて連絡を積極的に取っていたのは夫なのが、もう痛いのなんのって!
女性側から誘われて誘惑に負けたっていうのではないから、よけい腹立たしくて情けない。
自分の存在意義って何なのだろうって悲しく惨めになる。
スマホを見て、夫の本当の姿を知った日から私は毎日が苦しくて苦しくてたまらない。
今以て、夫は出張先でも親しくしている女性を呼んでデートしているみたいなのだ。
女性から『また会いたいなぁ~すっごく楽しかった』って、ハートマーク付きの
LINEが入ってたっけ。
あーっ、思い出してイライラするぅ~。
私は寝ても覚めてもこれからの方針を決められず悶々とするばかり。
自分がこんなに優柔不断でヘタレだったとは、情けな過ぎる。
もちろん夫に問い詰めたりもしていない。
そのあとも夫は相変わらずいろいろと場面場面で私をやさしく気遣って
くれ、私の実家の両親にもやさしく接してくれている。
ホント辛い……。
こんな暮らしの中で私は学生時代の友人の話を思い出していた。
大学の同級生の話を聞いていると信じられないくらい悲惨だった。
小さな子が2人もいて、同級生が風邪で寝込んでいても旦那さんは
前からの約束だからと、とっとと彼女と小さな子をふたり家に残して
スキーに行ったらしい。
彼女は泣くほど悔しかったと言ってたっけ。
そして、その上彼女の夫は職場で、隣の席の女性と浮気までしていたのだとか。
私の夫は私が風邪や体調不良で寝込んだりすると食事のことから何から何まで、
洗濯だって掃除だってしてくれる。
実は氷や薬とお水の用意までしてくれて、いつも心配そうに声かけをしてくれる。
だから彼女の話を聞いた時、私は恵まれているのだと実感したものだ。
……だけど、今となってはどうなんだろう。
恵まれているというのはすごく微妙だな。
あの時はなんて彼女は不運で気の毒な人なんだろうって思いながら話を聞いてたけど、
私も気の毒な人の仲間入りしちゃったんだよね。
あはは……。
そんな風なことを考えていたら、ポロリと私の目から涙が零れ落ちた。
コメント
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うわぁ〜〜〜😭💔 第2話、胸がぎゅーってなったよ…! 夫のやさしさが逆に辛すぎるし、「気の毒な人の仲間入りしちゃった」って台詞がズシンと来た… 「自分がこんなに優柔不断でヘタレだったとは」ってとこ、めっちゃ共感しちゃったよ…誰だってそうなるよね💦 続きが気になる〜!理沙さん、このお話すごく丁寧に心情描けてると思う🌸 応援してるよ!