オシャレでダンディな人が入ってきたと思ったら、少し白髪がまざった東堂社長だった。
この年齢にしたら、色気のある、かなりのイケメンだ。
「榊社長、雫ちゃん。みなさん、今日はようこそお越しくださいました。わざわざ私達のためにありがとうございます」
「お久しぶりです、東堂社長。この度は本当におめでとうございます」
祐誠さんが頭を下げた。
「榊社長には本当にお世話になりっぱなしで……明日の結婚式にまで参加していただけるなんて嬉しい限りです。皆さんもありがとうございます。どうぞゆっくりしていって下さいね」
それからしばらく、私達は『杏』で楽しいひとときを過ごし、夕方になってホテルに向かった。
ホテルの夕食には北海道の美味しい食材をふんだんに使った料理がたくさん出された。
そして、最上階にある大きな露天風呂から見えるロケーションに感激し……
みんなの顔にはずっと笑みがこぼれていた。
正孝は「おじいちゃんとおばあちゃんと一緒に寝る!」なんて言って、隣の部屋に行ってしまった。
当然、大喜びの両親。
私達は2人に正孝をお願いして、久しぶりの夫婦だけの時間を過ごした。
思わず私は、祐誠さんと恋人同士だった頃のことを思い出した。
プロポーズされたあの日――
私は、本当にこの人の奥さんとしてちゃんとやっていけるのかって不安もあった。
だけど今は、祐誠さんに守られて、何とか頑張れてる。
もちろん、正孝や両親、そして、あんこさんやみんなにもすごく助けられてるし。
だから、あの時の自分に言ってあげたいんだ。
「心配しなくていいよ。あなたは、みんなに支えられて必ず幸せになれるから。素直に祐誠さんの胸に飛び込んでも大丈夫だよ」って。
今は、あの時感じた不安はない。
そして、もちろん――後悔なんて一切なかった。
2人きりの部屋。
祐誠さんは、そっと私を抱きしめてキスをした。
「こうして毎年結婚記念日に、君と一緒にいられること……心から感謝するよ」
「それは私のセリフ」
「出会った頃から雫は素敵な女性だったけど、今も変わらず――いや、ますます綺麗になる君を、俺はずっと愛してる。1日早いけど、俺と人生を歩んでくれて本当にありがとう。これからもずっと一緒にいよう」
祐誠さんの深い愛に包まれ、幸せを感じながら、私達は体を密着させた。
何も考えず……
今夜はただ、欲望のおもむくままに。
どこまでもこの体は、祐誠さんを求め続けた。
「好きだ……」
耳元の甘い囁きだけで、こんなにもとろけてしまいそうになる感覚は久しぶりだったかも知れない。
恥ずかしさもあったけど、私は、祐誠さんの途切れることない愛ゆえの攻めに体を震わせ、快感という大きな波に何度も飲み込まれていった。
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