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ローレン・イロアス
叶
葛葉 ※ ご本人様には関係ありません。
『 ローレンさん、ご飯食べてください 』
そう耳打ちをしてきたのは、俺のマネージャーである。30代で和やかな雰囲気で、少し丸い体型の女性。
最近は仕事で忙しいく、食事や睡眠を怠りそれが相まってかよく体調を崩してしまうようになった。1日に口にするのは水分とゼリーのみ。
そんな俺をみかねたのか、彼女の良心で先程買ってきたのだろう。コンビニ袋に今後みることはないだろうというほどの健康食品が目の前に並んでいる。こんなに目の前にするのは初めてだから少し感動が込み上げてくる。そんな感動も一瞬で過ぎ去り、俺は気の抜けた『はぁ』と、いう返事を返した。
ローレンさん、最近調子いいですね~と、やっと仕事にも慣れ始め、スタッフや世間からも褒めら、認めれるようになった頃だった。
この頃、色んな人に誘われるようになり以前よりコラボも増えたし、優しい先輩や面白い後輩にも恵まれたと、身に染みて感じるようになった。
だから今まで精神面では困った事はなかったし、自分では正直者だと思っているから特に何も問題はなかった。
俺はゲームで誘われる事が多いし、まぁ実際自分でもゲームは上手い方だと思う、しかもにじさんじに所属する前から色んなゲームに触れてきたのもあり経験は豊富だった。なので人気者じゃん俺!と、楽観視してる部分があるのは否めない。
そんな無駄話で頭を一杯にして口が寂しくなり、面倒そうに煙草へ手を伸ばす。煙草を咥え火をカチッとつけた。そのライターの鉄を擦った鈍い音が、ひとりの部屋に広がり少し複雑に感じた。
俺が、にじさんじに所属したいと心から願ったのは、確か5年前だっただろうか。
エデンという、秩序もなっていない犯罪だらけの町にある警備部隊に入隊した俺はただ小さい箱に閉じ込められているかのように、息をするかのように、精神が壊れそうなほど毎日、毎日同じことを繰り返す。いや、今思うと既に可笑しくなっていたと思う。
任務に出ると大量の市民、隊員の遺体。泣きじゃくる小さな子供。血だらけのボロボロの瓦礫だった。
そんな俺は自分が壊れないよう、自分でも計れないほどの厚い壁を人と作った。
誰にも心を開かず、開かせず、まるで相手は殺人鬼を目の前にしているかの様な冷酷な表情だったという、だから俺はメンタルに誰よりも自信があったし、何があっても揺らがないという心を育て上げたつもりだった。
だが、俺は壊れた。
本当は自分じゃ気づかず間に、心のそこから信頼していた相棒が殺人犯によって命を落とした。だが、殺された悲しみよりも俺は、まだ人の心があったんだ、と自分で驚いた。俺は隊員1人の死から警備部隊を引退した。
引退してからはエデンから引っ越し安全な町へ移り変わった。仕事をやめたら俺からは何もなくなり警備部隊となんも変わらないような部屋という箱の中で退屈な日々を何日も過ごした。
『 暇だなぁ… 』
ぽつん、と溢れた言葉は誰返してくれる訳がなく寂しさのみが返ってきた。そうだ、彼女を作ろうかな~、いやペットを買おう。今の俺なら何でも出来る気がした。まだ時間はたくさんあるわけだし焦らなくてもいつかやりたい事は見つかると思っていた。
でも1週間考えても何も見つからなかった。彼女を作ろうも人との関わりを遮断していたせいか、距離の取り方さえ分からなくなってしまっていたし、ペットを飼っても散歩など俺がするわけないどれも向いたいなかった。
あまりネットを利用することはないが折角の機会だしスマホで調べる事にした。今の技術はすごいすぐに物事が調べられてしまう。感動もつかの間…その画面の先に彼らがいた
『 くろのわーる… 』
画面越しでも分かる、唯一無二の圧倒的なオーラ。俺が知らない、誰かを包み込むような暖かい、優しい声色。恐怖すら感じられるくらい画面に引き込まれる。
― 今の俺には何も残っていない。 ―
だからこそ得られるものが誰よりも大きい、どこからか沸いてくるのかわからない不思議な気持ちに後押しされた。
そして、ローレン・イロアスが世界に誕生した。
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