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二次創作です。誤字脱字、妄想が含まれる可能性があります。何でも許せる方向けです。

白麒麟とモルフォ蝶

誰もが口を揃えて「女神のように美しく、可憐な青い蝶々だ」というほどの美貌を持った少女がいた。その少女は、およそ人間とは思えない程の軽い身のこなしと、少女の周りには常にモルフォ蝶が舞っている様子から、いつしか夢見薔薇のモルフォ蝶と呼ばれていた。

夢見薔薇は、その少女の美貌と青い薔薇を持っていることから。モルフォ蝶は、彼女の蝶のような軽い身のこなしと青い衣装を身に纏っていることから来たようだ。



そして、今日もこの噂を聞きつけた者がいた。


周りは静寂に包まれ、街はすっかり眠っていた。しかし、月に照らされ青が引き立った衣装を身に纏った少女が一人。

その少女は噂通り…もしくは噂以上の美貌を持っていた。その様子はまるで、夢を見ているかのようだった。

噂の少女は月明かりを浴び、なにやら満足そうに一人、ワルツを踊っていた。

その様子を、とある者が見ていた。

ただ、見惚れるかのように、少女をじっと見つめていた。


「これが夢見薔薇のモルフォ蝶……」

そう言った男―澁澤龍彦は、少女を見て、何か考えているようだった。

すると少女が

「やぁやぁ、こんな時にお客人かい?全く、君もどうせ異能か美貌、いや、この体質かな?とにかく、利用しようっていう魂胆でしょう?」

とワルツを踊りながら澁澤に問いかける。その少女の姿は夜の月明かりに照らされた一匹のモルフォ蝶を彷彿とさせた。


―噂の続きはこうだった。

『その少女の傷口からは、美しく輝くモルフォ蝶と金貨や宝石…とにかく価値の有るものがでてくるんだ。』


夢のような話と思って半信半疑で来た澁澤も、納得せざるを得なかった。それは、噂通りの少女が居ることと、その少女の白い真珠のような柔肌の手首には無数の切り傷があったからだ。その為、疑いはすぐに晴れ、夢のような話が夢ではなく真実だということが目の前で証明され、何か考えながら少女を見つめていた。


「ねぇ、君は僕を知っているでしょう?噂通り、いや、それ以上とでも思っているのかな……まぁいいけど、何か答えておくれよ。僕が一人でしゃべってるみたいじゃないか」

少女は、呆れ気味に、見た目にそぐわない流暢な言葉を並べてみせた。


その言葉に澁澤が

「君は、一体何のためにいるのかね。呪縛から解き放たれた以上、君は自由な筈だが」

と言うと、少女は寂しそうに笑顔を見せた。


そして

「僕がここにいるのは、単純に面白いからさ!!だって、僕の噂を聞きつける輩が沢山いるんだ。半信半疑で来てるやつとか、命乞いをする奴だっていたよ。僕、でもまだ心の底から面白いと思えなくてね。そしたら、今日のお客人は面白そうだったから、留まっているんだよ。」

そう言いながら。


少女がふわりふわりと軽い身のこなしで家の屋根から降りてくる。


近くで見る少女は、身に付けていたモルフォ蝶の面をずらし、深海のような恐ろしくも美しい青い瞳をのぞかせる。だが左目は前髪で隠していた。そして長い後ろ髪を紺のリボンで結び、風になびいた後ろ髪がキラキラと月明かりに照らされその灰色の上質な髪が輝いていた。その様子に、澁澤はとても興味を惹かれた。もっと言うと、彼女は既に人間を超越していた。


人間と同じ姿をしていても、人間では無かった。


「まだ名乗っていなかったね。僕は、世代(セシロ)宜しくね、澁澤龍彦くん」

世代と名乗る少女は、教えてもいない澁澤龍彦という名前を言った。まるで、何もかもわかっているように。


「何故私の名前を…」

問おうとした時

「そんな事、君ならわかるんじゃない?龍彦くん。どうやら、僕の真実も分かっているようだし、君みたいに僕の目を見て話せる奴はそう居ない筈だよ。」

龍彦くんという呼び名と、少女の言葉に澁澤は「少女は考えていたよりも賢い」と思い、考えを改めた。


―こうして白麒麟とモルフォ蝶が美しくも儚い…世界で最も美しい二人だけのワルツを踊り始めた。


第一話 *白麒麟とモルフォ蝶* 完


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